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2009年4月

2009年4月30日 (木)

観察結果だけの研究成果には、物足りなさを感じてしまうのだが・・・

 ライフサイエンスのテクノロジーが進歩したことで、PCRやシーケンサーなど研究ツールもコストダウンできたこともあって、かつては比較的、予算が潤沢な医学部系の研究室にしか設置されていなかった装置が、理学系、農学系の研究室でも見かけられるようになった。

 そのため、動物学、植物学関連の学会大会を覗いても、遺伝子解析結果などの研究成果の発表を見かけることが多くなったのだが、逆に観察結果だけを成果として発表されても、いささか物足りなさを感じてしまうようになったのも否めぬ事実だ。

 そんなことを感じさせる研究成果が、ナショナル・ジオグラフィック・ニュースが報じているので、この記事をネタに動物学の“今”を考えてみたい。

 「科学者も驚くクモの“蘇生”能力」のタイトルからもわかるように、瀕死状態に陥らせたクモが蘇生するってことを紹介している(※英語のタイトルは「Spider “Resurrections” Take Scientists by Surprise」。直訳ですね)。

 フランスのレンヌ大学の研究チームが、クモの種類ごとに120匹のメスを集め、これを海水に沈めて、2時間おきにブラシでつついて、反応を確認。そして、観察によって溺死したと思われる個体は、体重測定のため乾燥させたが、その過程で、蘇生した個体が現れたというのだ(蘇生率については紹介されていない)。

 このこと自体、面白い話題ではあるんだけど、どういうメカニズムで蘇生できたのか明らかにしていないのは、ちょっと物足りなさを感じてしまう。いちおう、呼吸を必要としない代謝プロセスに切り替えて、生き残るすべをもっているのではないかとの推測も記事では触れているんだが、だったら、具体的に呼吸を必要としない代謝プロセスとはどういったものなのかまで踏み込んだ研究を行ってから、発表したほうがいいんじゃないだろうか。

 記事によると、この研究のリーダーを務めたのは、ベルギーのヘント大学のクモ学者(arachnologist)のようで観察を中心とした古典的な生物学のアプローチで研究を進めるタイプの人だろうから、細かい分子機序まで求めるのは酷かもしれないが、「科学者も驚く」ほどの組成能力だって言うのなら、それを可能にしている分子機序まで踏み込んで解明してもらいたいと思ってしまった。

 10年ぐらいまでまでなら、この研究成果に物足らなさを感じることはなかったかもしれないが、ライフサイエンスの様々な研究ツールが、多くの研究室に普及するようになると、やはり、観察結果だけを発表されても、物足りなさを感じてしまうのである。

 まぁ、クモの蘇生能力の背景にある分子機序の解明は、今回の石灰を発表した研究グループにとっても、今後の課題であるかもしれないので、今後の発表にも注目することにしようか・・・。

http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=86990066&expand

http://news.nationalgeographic.com/news/2009/04/090424-spider-resurrection-coma-drowning.html

 ではでは・・・。

豚インフルエンザの感染拡大で、タミフル耐性のウイルスが増えなきゃいいが・・・

 ここ数日、豚インフルエンザの報道が喧しくなってきているし、この分野だと、外岡立人さんのサイトが、詳しい情報を提供してくださっているので、ライターの話題が口をはさむ必要はないと思っていたけれど、あまり指摘されていない点で、ちょっと言及したい。

 直接、豚インフルエンザの感染科学大の話題と関係はないんだが、今年の3月4日にAFPが、タミフル耐性のインフルエンザウイルスが出現していることを報じている。

 論文はJournal of the American Medical Association(JAMA)に掲載されているようだが、2007年~2008年の流行期に確認されたアメリカのインフルエンザウイルス(H1N1)の5件に1件がタミフル耐性だったというのだ。

 この記事を読んだ時に感じたことは、季節性のインフルエンザでも死ぬ人はいるわけで、タミフルを使う気持もわからないではないが、強毒性のH5N1のウイルス(鳥インフルエンザウイルス)が人の間でも感染が拡大した時には、多くのウイルスがタミフル耐性になっていたらまずいんじゃないかってことだった。

 つまり、強毒性のH5N1ウイルスの感染が拡大したときのために、タミフルの乱用を避けたほうがいいんじゃないかって思うのだが・・・。

 もちろん、H5N1ウイルスと、AFPの記事で紹介されていた、タミフル耐性となったH1N1ウイルスは別のものなので、H1N1ウイルスで確認されているタミフル耐性が、そのままH5N1ウイルスにも置き換わるってものじゃないのかもしれないが、ウイルスの変異の早さを考えれば、ちょっと心配になってしまうわけだ。

 そして、今回の豚インフルエンザだ。

 当然、今後、タミフルの使用は増大するだろうが、豚インフルエンザ(H1N1)は弱毒性だというではないか・・・。死んでいる人がいるわけだから、弱毒性っていうのもなんだと思うが、強毒性のH5N1ウイルスの感染拡大を押さえこめていないのなら、タミフル耐性のH5N1ウイルスを出現させないためにも、タミフルの乱用は避けたほうがいいんじゃないかとも思ってしまうのだが・・・。

 とはいえ、致死率が比較的低めだということで、弱毒性といえるとは言え、症状はけっこう重篤であろうから、タミフルを使わないっていう選択は難しいんだろうなぁ。

 だったら、せめて豚インフルエンザの感染拡大と、タミフル使用量の増大と、タミフル耐性のウイルスの出現の相関は、しっかり調べておいてもらいたいものだ。

http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2577900/3876833

 ではでは・・・。

2009年4月29日 (水)

がん治療に活かせるか!? 血管新生を阻害する新たな分子を発見

 がん細胞は、正常な細胞と違って無秩序に分裂を繰り返すという性質をもっている。そのため、がん組織は徐々に大きくなっていくわけだが、そのために大量の栄養を必要とするため、がん細胞自らが血管新生因子を分泌して、栄養を供給する血管を作らせることがある。

 こうした、がんの血管新生作用を阻害することで、がんが大きくなるのを抑える戦略で開発されたのが、血管新生阻害剤だ。すでにアバスチンなどが開発されているが、将来、将来、血管新生阻害剤として活用できるかもしれない新たな分子(タンパク質が)が、京都府立医科大学の松原弘明教授らの研究グループによって発見されたと、京都新聞が報じている。

 京都新聞によると、松原教授らは、マウスの血管内皮細胞で発現している多くのタンパク質の中から、血管内皮細胞だけで働いているものを見つけ出し、これに細胞死を促す働きがあることが明らかにしたという。

 ARIA(アリア ※どういう意味があるんだろう)と名付けられた、このタンパク質の遺伝子の発現を抑えて、その発現量を4割程度まで下手すと、血管内皮細胞の細胞死も7~8割減少し、別の実験(別のマウスって意味だろうか)では、皮膚がんも大きくなったようだ。つまり、このアリアが減ると、血管内皮細胞の細胞死が抑えられ、血管新生が促されたと理解できるというわけだ。

 この後、松原教授のコメントが紹介されているものの、京都新聞の説明は基本的にここまでなので、これ以上の研究成果はまだ発表されていないのだろうが、気になるのが、がん組織にアリアを供給したり、アリアの遺伝子を導入して共生発現させたら、がんの成長が抑えられるかのだろうか。

 それに、このアリアは、血管内皮細胞の細胞死を促して、血管新生を抑えるという働きを持っているようだが、この細胞死の促進作用は、血管内皮細胞以外の細胞でも働くものだろうか。この点が気になるところだ。

 日本でも血管新生阻害剤の開発が進められており、大阪大学の中村敏一名誉教授らのNK4が有名だが、これはHGF、bFGF、VEGFといった、がん細胞が出す血管新生因子を拮抗的に阻害することで、血管の新生を抑えるわけで、今回、発表されたアリアは血管内皮細胞の細胞死を促して神経を抑制するってところが違うので、なかなか興味深い。

 まぁ、今回の研究成果はマウスで見つかったということなので、人間にも同様の分子があるかどうかはよくわからない。もし、同様の分子があっても、同じように働いていているかどうかも気になるところだ。

 今のところ、京都新聞の記事を読んだだけなので、論文はPNASに発表されるようだから、論文も読んでみようか・・・。

http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2009042800086&genre=G1&area=K00

 ではでは・・・。

2009年4月28日 (火)

脳で考えたことを直接Twitterに書き込める?

 脳波などの脳が発する様々な信号を検知することによって、コンピュータなどの外部装置を操作するBMI(=Brain Machine Interface、※Brain Computer Interfaceということもある)の研究開発が進んでいる。

 このブログでも、3月31日にホンダなどが開発した考えるだけで、ロボットを操作できるBMIを紹介してきたが、CNNなどが興味深いBMIを報じているので紹介したい。

 開発したのはウィスコンシン大学で生物医工学を専攻するアダム・ウィルソンさんで、脳の中で考えたことを、一言メッセージを書き込めるブログサービスの「Twitter」に直接書き込めるというのだ。

 赤いヘッドギアを装着して脳波を検出することにより、神経活動をセンシングするようだ(ヘッドギアの写真は(※)のサイトにあります)。脳波の検出程度で、考えていることを直接、書き込めるなんてことがあるのかと不思議に思ったが、実際はもっと単純なことしかできないようだ。

 日本語のCNNのサイトでは、「脳から直接Twitterに投稿可能・・・」と紹介しているので、例えば、「カレーを食べたい」とか、「眠いなぁ」とか、「暇だなぁ」って考えたら、そのままか聞きおめるんだと思ったが、実際は、アルファベットや数字といった特定の文字をイメージして、一つずつ書き込んでいくようだ。

 まぁ、これでも脳が考えた“こと”を直接、Twitterに書き込んでいることになるのかもしれないが、正確に言うと「脳が選んだ文字を書き込める」ってことといったほうがいいだろう。実際、(※)のサイトで紹介されている動画を見ると「Spelling with My Braine」となっている。

 もちろん、文字を選べるだけでもなかなかすごいんだけど、同様の技術ならけっこう以前から開発されていたから、CNNのニュースタイトルに飛ぶついてしまって、少し損した気分になってしまった。皆さんはいかがだろうか。

http://www.cnn.co.jp/science/CNN200904240021.html

http://www.cnn.com/2009/HEALTH/04/22/twitter.locked.in/index.html

http://newsbizarre.com/2009/04/adam-wilson-twitter.html(※)

 ではでは・・・。

2009年4月27日 (月)

遺伝子導入するiPS細胞作成法だって忘れちゃいけない

 先日、スクリップス研究所のシェン・ディン准教授らの研究成果の、遺伝子導入を行わないiPS細胞の作成法の開発の話題を、このブログでも紹介したが、その日の普通のニュースでも紹介していたので、けっこう注目度は高かったわけだ。

 とはいえ、前回のブログでも書かせてもらったとおり、胎児の細胞を使っているというところに引っかかってしまうので、そうしたことまで踏み込んだ報道は、私が確認した限りなかった。

 この点で、成人の体細胞でも使えるのかどうかが気になるところではあるが、いずれにしても遺伝子導入を伴わないということは、それだけ安全性が高まるわけだから、再生医療の実用化に近づいたと評価してもいいだろう。

 だったら遺伝子導入を伴う手法は、再生医療に使えないのかっていうと、必ずしもそうとはいえないと考えている。もし、シェン・ディン准教授らが開発した手法が、成人の体細胞の初期化(リプログラミング)にさせられないとしたら、遺伝子導入する手法についても、一つのアプローチとして研究開発は進めておいたほうがいいだろう。

 そこで、注目しておきたい研究成果が、少し前、Nature4月9日号(オンラインは3月1日)に紹介されている。

 この成果は、エジンバラ大学の梶圭介博士らの研究グループによるもので、トランスポゾンのpiggyBacを用いて、4つの遺伝子を人間の胎児の線維芽細胞に導入して、リプログラミングさせることに成功したという。しかも、ある転写酵素を働かせると、確率は低いものの、導入した遺伝子を除去することもできていると報告している。

 これ以上の詳細を書くと難解になってしまうので、ご興味のある方は、原著論文を当たっていただきたいのだが、遺伝子導入によるリプログラミングであっても、ウイルスベクターを用いず、かつ導入した遺伝子をリプログラミング後に除去できるなら、ガン化のリスクはかなり低減されるのではないだろうか。

 リプログラミングに使われた細胞は、胎児の線維芽細胞ということで、その細胞由来の何らかの因子がリプログラミングに寄与した可能性もあるので、この研究報告にある成果は慎重に評価しないといけないだろうが、ウイルスベクターを用いず、かつ、遺伝子導入しても、祖手を後から除去で切るなら、これも“使える”手法になるんじゃないだろうか。

 結局、多様なアプローチによって、いろんな手法が開発され、それを公明正大に試してみて、安全性が高く、リプログラミングの効率が良く、コストが低い方法が、実用化の途を切り拓いていくんだろうな。

Natureのアブストラクト

http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/abs/nature07864.html

 ではでは・・・。

2009年4月26日 (日)

地球に最も似た惑星を発見! 地球外生命体は存在するか?

 科学メディアが扱う研究成果の多くは、普段、科学技術に注目することのない人々にとっては、ともすれば「どうでもいい話題」であるため、もう10年以上、サイエンスライターをやっていても、マスコミ業界の中でも地味ぃ~に活動している。

 ただし、中には一般の人々の関心を引く話題がある。“キラーコンテンツ”というと、大げさだが、科学雑誌だけでなく、テレビの情報番組などでもしばしば取り上げられるものになるわけだが、そうした注目度の高い話題の一つに、地球外生命体の探索がある。

 映画『コンタクト』でも紹介されたことで、SETI(Search for Extra-Terrestrial Inteligence=地球外知的生命体探索)はけっこう知られるようになったが、『コンタクト』で描かれた研究アプローチは、宇宙からもたらされる非自然的な信号を探知しようというものだが、まったく別のアプローチがある。それが、太陽系外惑星(系外惑星)の探索であり、そのニュースがAFPのニュースサイトで紹介されている。

 ただし、恒星であれば天体望遠鏡による観測で探せるわけだが、自ら発光することのない系外惑星を探索することは決して簡単なことではない。そのため、系外惑星の探索は、主に恒星の揺らぎの観測によって進められる。惑星が、恒星の引力の影響を受けて、恒星の周囲を公転しているように、恒星もまた惑星の引力の影響を受けて、微妙に揺らいでいる。このため、恒星が発する光を詳細に分析するとドップラーシフトを起こし、光の波長が揺らぐのである。つまり、発する光の波長が周期的に揺らいでいる恒星があれば、その周囲には惑星が存在することが示唆されるというわけだ。

 他にも公転する惑星が、恒星が発する光をさえぎることで、周期的に光度が低下することを観測することによって系外惑星を探索する方法もある。

 そこで、AFPが報じている、新たに発見された系外惑星だが、グリーゼ581eと呼ばれており、これまでの分析により、地球の2倍程度の大きさで、これまで発見された系外惑星の中では、最も地球に似ていると考えられている。

 ならば、このグリーゼ581eこそ、地球外生命体が住む星なのか・・・と期待してしまうが、ちょっと話が違うようだ。

 というのも、生命が存在するには、液体の水が存在するなどの条件が整っていなければならない。そのため恒星から適度な距離に位置している必要があり、こうした範囲を「ハビタブル・ゾーン」と呼ぶ。

 グリーゼ581eは中心星となる恒星の近くを公転しているため、表面温度は非常に高温で、「ハビタブル・ゾーン」からははずれているようだ。つまり、グリーゼ581eは大きさこそ、地球に最も似た系外惑星でも、その位置は生命の生存には適してはいなかったというわけだ。

 もちろん、グリーゼ581eが「ハビタブル・ゾーン」に位置する惑星であっても、それで言えることは、生命が存在する可能性がある・・・ということだけで、生命の存在を実際に確かめることは難しい。相手が知的生命体で何らかの信号を地球に送ってくれているならいいが、原始的な生命であれば、いつまでたっても「生命がいるかもしてない」という推測の域を出ることはないだろう。

 やはり、地球外生命体の探索は、科学的な確認ができないロマンの領域から出ることはないのかもしれない。

http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2594616/4057434

 ではでは・・・。

2009年4月25日 (土)

群馬県立自然史博物館、お勧めです

 いつもはお堅い科学の話題ばっかり書いているので、たまには博物館へのお出かけガイドなんてのも書いてみようと思います。先日、アップしたJAXAの筑波宇宙センターの特別公開の記事をアップしたら、アクセスが伸びたって言うのも関係しているんですけね。

 さて、今回、紹介するのは群馬県高岡市にある群馬県立自然史博物館です。

Dsc_3152_3  「自然史博物館」の名にふさわしく、生物の進化の歴史をわかりやすく紹介しており、県立規模の博物館にしては、恐竜の化石の展示物も充実していますから、お子さん連れにはうってつけなんじゃないでしょうか。

 それに、あまり紹介される機会が少ない、哺乳類の古生物Dsc_3166 の化石の展示も充実しているのもいいですね。コロンビア・マンモスの巨大な化石は注目です。

 群馬県立ということもあって、群馬県の自然の紹介も積極的に行っているのですが、尾瀬の自然を紹介する「尾瀬シアター」にはちょっと苦笑してしまいました。初めて出かけたときは、平日の昼間で、私一人だったんですが、内容が子供向きに作られているので、見ていてはずかしくなってしまいました。土日なら、終日、上映しているのかもしれませんが、平日で、観覧者が少なかったためか、職員に「見せてください」ってお願いして、上演してもらう んですが、途中で退席したときは、ちょっと気まずかったです。Dsc_3181

 2階に上がると、「ダーウィンの部屋」というコーナーがあり、かつての博物学者の研究質を模した展示になっています。一応進化論の展示になっているんですが、あまり進化と環境との関連を示すような展示になっていないようにも思いますが、あまり細かいことを言う のはよしておきましょう。

 そうそう、決して派手な展示ではありませんが、人間を含めた霊長類の展示はなかなか見ごたえがありますし、ホッキョクグマ、ヒグマ、ツキノワグマ、マレーグマのはく製を並べて「ベルクマンの法則」(暖かいところに住む動物より、寒いところに住む動物のほうが大きくなる という法則)をわかりやすく示しているのもいいですね。

 大人だったら、Dsc_3205_3 理屈で理解できることでも、子供はちょっと理解しにくいってことがあるんですが、こうやって分類学上、同じグループに属しながらも、地域(暑さ、寒さ)によって体のサイズが違ってくるということを示すと、実にわかりやすいと思います。

 群馬県といっても、東京からだと2時間ぐらいでアクセスできますし(休日の渋滞は無視しています)、近くには富岡製紙場、妙義山といった観光スポットもありますから、東京からの1日のお出かけには最適なエリアなんじゃないでしょうか。

 少し離れていますが、JR横川駅に隣接した「碓井峠鉄道文化むら」も、お子さん連れのファミリーには(もちろん道好きのお父さんにも)お勧めです。

http://www.gmnh.pref.gunma.jp/view/servlet/MuseumTop

 ではでは・・・。

 

2009年4月24日 (金)

ハノーヴァー・メッセで公開されたペンギン・ロボットはなかなか面白い

 現在、ドイツのハノーヴァーで開催されている「ハノーヴァー・メッセ」で、ドイツ企業のフェスと(Festo)が発表したペンギン・ロボットはなかなか面白い。

 日本だと、ロボットといえば、ヒューマノイド・ロボットの開発に傾倒しており、実用化を前提とした産業用ロボットはともかく、それ以外のロボットの開発はあまり注目されていない。魚型ロボットなんてのも開発されているんだが、メディアもあんまり紹介していないようだ。

 だから、このペンギン・ロボットも、ほとんどの日本のメディアはスルーするんだろうが、New Scientistのニュース・サイトで紹介している。

 そもそも、Festoは、空気圧機器のメーカーとしては世界トップクラスの技術を持っている企業のようで、ペンギン・ロボットも得意の空気圧機器技術を生かして作成されている。で、何が面白いのかっていうと、その動きが本物そっくりなのである。

 New Scientistのサイトでは、動画も見られるようになっているので、ぜひご覧いただきたいのだが、器用にフリッパーを動かして、ペンギンのように泳いでいるのだ。

 もちろん、ペンギンの泳ぎと、二足歩行を比べれば、二足歩行のほうが数段複雑な制御機構があって初めて実現するようなものだろうから、技術的な高さという面で、このペンギン・ロボットに使われている技術がすごいっていうつもりはないんだが、その動きが、生身のペンギンに実に似ているだけに、つい「すごい!」って思ってしまうわけだ。

 しかも、ボディ部分にヘリウムを重点にて、空を飛べるタイプのペンギン・ロボットも開発しているのだ。

 ペンギン・ロボットを開発した研究グループは、タコのような柔軟な動きができるロボットアームなども開発しているようで、併せてチェックしていただきたい(以下のサイトから別サイトに飛べます)。

http://www.newscientist.com/article/dn16996-bionic-penguins-take-to-the-water--and-the-skies.html

 ではでは・・・。

遺伝子を使わずにiPS細胞の作製に成功!

 iPS細胞を再生医療に使う場合、大きな障壁になるのは、遺伝子を導入する際に用いるウイルスベクターの安全性であることは、このブログでも紹介してきた。

 ただし、発現効率の高い、非ウイルスベクターを開発できたとしても、遺伝子を導入する以上、発がん率が高まるというリスクも考えられるわけで、できれば遺伝子導入せずに、体細胞の初期化(リプログラミング)ができるようになるのが理想だといえる。

 そんな研究成果を、朝日新聞が報じているので紹介したい。

 開発したのはアメリカのスクリップス研究所のシェン・ディン准教授、ドイツのマックスプランク分子医薬研究所のハンス・シェラー教授らの研究チーム。遺伝子を用いないiPS細胞の作製法の開発については、かねてからシェン・ディン准教授が公表しており、その詳細は明かされなかったが、昨年、5月に京都で開催された国際シンポジウムでの講演でも語っていた。

 その際は、ただ「化合物」としてしか紹介していなかったが、今回、開発された方法は、京都大学の山中教授がiPS細胞を作る際に用いた4つの遺伝子を元に、大腸菌に合成されたタンパク質を用いるというのだ。これらのタンパク質のままでは、細胞内に入れられないため、細胞膜の透過性を高める工夫を施した上で、マウスの胎児の細胞内に入れたところ、iPS細胞になったというようだ。

 タンパク質を導入してiPS細胞化できることから、タンパク質の英語のプロテイン(protain)の頭文字を取って、“piPS細胞”と名付けており、すでに心臓や肝臓などの様々な臓器の細胞に分化誘導させられることにも成功しており、その高い分化能を確認しているという。

 この方法を人間の細胞にも適応できれば、再生医療を実用化させる上で、画期的な技術革新だと言えるわけだが、ちょっと気になるのが、タンパク質導入でiPS細胞化させたのが、マウスの胎児の細胞だということだ。

 iPS細胞技術を再生医療に応用するとなると、理想は患者自身の細胞をリプログラミングして、そこから必要な臓器、組織を作って患者に移植するという方法がとられるわけだが、だったらタンパク質導入でリプログラミングする場合も、成体の細胞を用いるべきではなかったのか。

 これは私の勘繰りなんだろうが、今回、マウスの胎児の細胞をリプログラミングできたと発表しているということは、生体のマウスの細胞ではリプログラミングできなかったということを意味するんじゃないだろうか。

 理想は、分化しきった生体の細胞のリプログラミングなわけだから、シェン・ディン准教授らの研究グループも、当然、生体の細胞を用いた実験を行っていることだろう。しかし、現実に発表されたのが胎児の細胞での成功事例だということは、生体の細胞ではうまくいかなかったということを意味すると思うのだが、どうなんだろうか。

 胎児の細胞を使っているということは、生体の細胞にはない、何らかの高分化能、高増殖能をもたらす、何らかの分子が機能している可能性も否定できないのではないか。つまり、今回は山中4ファクターのタンパク質を導入してリプログラミングできたといっても、実は元々、マウス胎児の細胞に備わっている、何らかの分子が機能して初期化できたとも考えられないわけではない。これでは、再生医療への応用を想定した、成人の細胞のリプログラミングにつながる技術とは言い難いだろう。

 このあたりのレビューは新聞では無理だろうから、科学雑誌が紹介してもらいたいところだ(どこかの編集部のみなさん、私に取材させませんか?)

http://www.asahi.com/science/update/0424/TKY200904230292.html

 ではでは・・・。

メディカル・バイオ2009年5月号に記事を書いています

 一昨日より書店に並んでいるメディカル・バイオ2009年5月号(オーム社発行)に記事を書いています。

 私が担当している連載記事の「先駆者(プリカーサー)」では、千葉大学大学院薬学研究院の星野忠次准教授に取材させていただき、コンピュータを活用した、医薬用抗体の最適化の研究を紹介しています。

 また、5月号ではもう一件、特設記事を担当しておりまして、2009年がチャールズ・ダーウィン生誕200年ということもありますので、「進化医学とはなにか?」というインタビュー記事を執筆いたしました。

 さらに、新たな記事ではないのですが、このブログでもしばしば紹介しているiPS細胞研究に関連して、過去の記事を再編集したブックレットを付録として付けています。

 私が執筆したものでは2008年3月号に掲載された「世界に衝撃を与えたiPS細胞」、2008年9月号に掲載された「文部科学省ライフサイエンス課菱山裕課長に聞く『iPS細胞の産業化促進への施策』」の2件です。

 その他、iPS細胞の産みの親である山中教授へのインタビュー記事のほか、疾患特異的iPS細胞の研究で知られる中畑龍俊教授(京都大学)や、iPS細胞関連の知財動向に関して高須直子さん(京都大学iPS細胞研究センター)へのインタビュー記事なども掲載されております。

 書き下ろしではないので、最新の情報ってわけではありませんが、これまでのiPS細胞研究の動向を把握するにはちょうどいい資料となると思います。

 研究者向けの科学雑誌ですので、1980円と、ちょっとお高いのですが、もしよかったらご一読いただければ幸甚です。

 ではでは・・・。

2009年4月23日 (木)

二足歩行ロボットは月へ行けるのか?

 4月4日に、政府の宇宙開発戦略本部が、「宇宙基本計画」の原案に二足歩行ロボットによる月探査を盛り込んだことを、このブログで批判させてもらったが、その原案の内容が宇宙開発戦略本部のウェブサイトにアップされたので、紹介したい。

 詳細は、以下のサイトをご覧いただくとして、私が問題視した二足歩行ロボットの話もちゃんと盛り込まれていた。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/utyuu/senmon/dai6/gijisidai.html

 じゃ、具体的に二足歩行ロボットを選択する理由が書いてあるのかなって思って、関連項目を読んでみたが、

我が国が得意とするロボット技術を活かして、二足歩行ロボット等による高度な無人探査を実現を目指す(※筆者による抜粋)

 と書かれているだけで、技術的に二足歩行ロボットである理由ないようだ。つまり、「日本は二足歩行ロボットの開発では世界最先端を行っているから、宇宙開発でも使えるんじゃないの・・・」ってことなんだろう。

 そこで、この戦略本部の「宇宙開発利用体制検討ワーキンググループ」のメンバーにロボットの専門家が入っているのかと思い、確かめていると、残念ながら、ロボットの専門家と思われる人間の名前は見当たらない。宇宙論の佐藤勝彦・東大教授、小型衛星の中須賀真一・東大教授、あと日本航空宇宙工業会の田中俊二常務理事といった、宇宙関連の研究者・専門家の名前は散見されるものの、ロボットの専門家の名前は見つけられなかった。

 だったら、JAXA、東北大学、東京大学に、宇宙ロボットの開発をしている研究者がいるんだから、会議に読んで、無人月探査を進める上で二足歩行ロボットを利用するのは妥当かどうか聞いてみればいいのに・・・と思うのは、私だけだろうか・・・。

 まぁ、「二足歩行ロボット」と書かれているんだから、現実的にはローバータイプのロボットを利用することになると思うが、「宇宙基本計画」は絵に描いた餅じゃないんだから、「二足歩行」なんて盛り込まないで、ただ「ロボット」でいいんじゃないのかなぁ。

 今回、明らかになった「宇宙基本計画」については、二足歩行ロボット以外にも注目すべきことが書かれているので、そちらにも触れておきたい。

 まず、スペースデブリの低減の必要性について明確に言及したことには積極的に評価したい。

 ただし、現在の技術で宇宙空間を漂うデブリを回収するというのは非常に難しい(不可能と言っていいだろう)わけだから、デブリを低減させるには、できるだけ宇宙に“もの”を持っていかないことが求められる。当然、。今後、人工衛星の打ち上げは必要最低限のものにして、その目的や意義を厳密に審査した上で進められるべきだろう。

 しかし、現実には、メインの人工衛星を打ち上げる際に、ロケット内部にできた余剰空間を利用して、小型衛星を打ち上げるってことをやっているわけで、これも難しくなるんじゃないか。大学の一研究室が打ち上げる教育目的の小型衛星などは、その意義を厳しく問われることになるんじゃないだろうか。ワーキンググループに小型衛星の研究者である中須賀教授が参加しているわけだから、この点についての中須賀教授の考えをうかがってみたいところだ。

 それから、宇宙太陽光発電についても言及されており、3~5年以内に、小型衛星による実証試験を行って、実用化について検討するとなっている。

 このブログではアメリカのソーラーエン社の宇宙太陽光発電のことを紹介したが、アメリカでは実用化させようとするベンチャー企業があるっていうのに、ちょっと遅れているんじゃないかって思えてくる。もちろん、ソーラーエン社のプロジェクトが現実的に可能かどうかって問題もあるから、なんとも評価できないが、宇宙太陽光発電についても、もう少し積極性を見せてもらいたいと思うのだが・・・。

 というわけで、まだ触れておきたい点もあるのだが、あまり長くなってはいけない。別の機会に譲ることにしよう。

 ではでは・・・。

台風を操る技術って禁止されていたんじゃなかったっけ・・・

 先週末に紹介した宇宙太陽光発電を開発している、アメリカのソーラーエン社が、この技術を応用して台風を操作する技術を開発し、アメリカで特許申請しているという話題がTechnobahnが報じている。

 詳しくは、以下のサイトをご覧いただくとして、簡単に技術の概要を説明しておくと、宇宙空間に設置した太陽電池パネルで発電した電力を地上に送信するの使う電磁ビームを台風の内部に照射すると、台風の内部の温度が高まり、台風の勢力が減衰するというのだ。

 実際にやってみて、その効果が確かめられたので特許申請に・・・というわけではないだろうから、そこまで効果があるのかわからないが、そもそも台風を操作する技術って禁止されていたんじゃないかったか・・・。

 そこで、少しネット上で調べてみると、1978年に発効した、「環境改変技術の軍事的使用その他の敵対的使用の禁止に関する条約」(略称は「環境改変技術の軍事利用禁止条約」・・・。そんなに略していないようだが・・・)で禁止されているようで、(※)のサイトに

環境変更技術の軍事利用禁止とは,現在あるいは将来開発される技術により自然界の諸現象を故意に変更し(例えば地震や津波を人工的に起こりたり台風やハリケーンの方向を変える),これを軍事的敵対的に利用することを禁止しようとするものである。

 と紹介されている。

 ちょっとわかりにくい文章なのだが、その前後を含め、よくよく読んでみると、台風を操作する技術を研究開発することまで禁止しているわけではなく、あくまでも台風の操作技術を軍事的に利用することのみを禁止しているようなので、今回のソーラーエン社の特許申請は条約に抵触するということではなさそうだ(私の記憶では、世界気象機関(WMO)が台風操作の技術を研究すること自体を禁じているようなことを聞いたことがあるんだが・・・)。

 とはいえ、日本は水資源の一部を台風によってもたらされる雨雲に頼っている以上、台風の勢力を減衰させる技術の開発っていうのは、要注意事項になるんじゃないだろうか。

 現在のアメリカとの外交関係を考えると、アメリカが日本に対して敵対的に台風を操作する技術を使うとは思えないが、台風の操作技術が開発されたとなれば、将来的に有事の際、日本にやってくる台風の勢力を事前に減衰させ、降雨量を減らすことで、水供給を混乱させるなんてことを考える国があらわれても不思議はないだろう(考えすぎ・・・?)。

 まぁ、ソーラーエン社の技術が、どの程度の効果を持っているのかわからない以上、なんとも評価しようがないわけだが、台風を操作する技術は、軍事転用可能な技術であるわけだから、この技術の特許申請にともなうアメリカ政府の対応は注視しておいたほうがいいかもしれない。

http://www.technobahn.com/cgi-bin/news/read2?f=200904211540

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/bluebook/1977_1/s52-2-4-2.htm(※)

 ではでは・・・。

ES細胞研究 アメリカ政府が予算の投入を決めたようだけど・・・

 ブッシュ政権下では、連邦政府の予算投入が禁じられていたES細胞研究に対して、オバマ大統領は、政府の助成を解禁することを認めたと、複数のメディアが報じている。これにともない、ES細胞の調達については、不妊治療などに際して作られた受精卵のうち、必要なくなったもの、つまり、廃棄受精卵を用いることに限定するということも続報として報じられている。

 いやぁ~、自分で書いていても「作られた受精卵」とか、「廃棄受精卵」なんて言葉は、嫌だなぁ~。どうも筆の進みが止まってしまうが、無神論者の私でさえ、ES細胞を調達するところ、つまり、不妊治療で必要がなくなった受精卵の扱いについては、若干ながら生命に対する冒とくに似た感情を抱いてしまう。

 ならば、これまでES細胞研究に冷たかったブッシュ政権を熱烈に支持していたキリスト教原理主義の皆さんは、忸怩たる思いでいるんだろうな。

 というわけで、オバマ政権のES細胞研究に対する動向は、以下のサイトでチェックしていただくとして、今回の記事では、ブッシュ政権で幹細胞研究が不遇の時代をおくらなければならなくなった原因であるキリスト教原理主義について、ちょっと書いてみたい。

 といっても、私自身、アメリカには、過去3回、旅行ででかけたぐらいなので、キリスト教原理主義者の動向はメディアを通じて知るしかなく、彼らの動きを肌で感じることはできないので、あくまでも「どうなっているんだろうな」ってことを書きだけだ。

 当然のことながら、先に書いたとおり、オバマ政権がES細胞研究に政府予算を投入することを決めた報道を、キリスト教原理主義の皆さんは、歯噛みしながら見ているに違いない。

 そこで、心配されるのが、テロまがいの行動にもでる輩の出現だ。

 一口にアメリカといっても、キリスト教原理主義が幅を利かせているのは、いわゆる“バイブル・ベルト”と呼ばれる地域に限られるわけだが、バイブル・ベルトの中に入ってしまうと、幹細胞研究も進化論も否定され、妊娠中絶なんてもってのほか。妊娠中絶を施す医師に対して過激な行動をとる輩もいるというではないか・・・。

 それに、ダーウィン進化論に対する執拗なまでのネガティブキャンペーン(というか、いいがかり)などを見ても、キリスト教原理主義者のライフサイエンスへの反感は根強いものがあるわけで、ES細胞研究を進める研究機関はもとより、ES細胞を作るための受精卵を提供した病院などへの不法行為も心配される。

 まぁ、連邦政府の予算が投じられなかっただけで、これまでにもES細胞研究では世界のトップランナーを走り続けてきたアメリカだけに、十分な警備体制を整えて、ES細胞研究、そして、iPS細胞研究に邁進していくんだろうな。

 おっと、最後に今回の決断に際して、オバマ大統領の発言だけは引用しておこう。ブッシュ政権に対する強烈な批判ではあるが、要は生命科学と宗教をごっちゃにするなってことだよな。

 「これまでの政権は、健全な科学と道徳価値観を取り違えてきた。この2つは両立できる」

 う~ん、いい言葉だ。

http://jp.ibtimes.com/article/biznews/090310/31013.html

http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2008/090310_2.htm

http://ameblo.jp/regenerative-kyoto/entry-10244701701.html

 ではでは・・・。

2009年4月22日 (水)

岡山大学 iPS細胞から肝細胞を作ることに成功!

 先日、このブログで、日本のiPS細胞研究は、アメリカに対して大きく遅れをとっているという読売新聞の報道を紹介したが、いやいや、日本の研究者も頑張っているぞっていう話題を紹介したい。

 山陽新聞などの報道によると、岡山大学病院の小林直哉講師らの研究グループは、マウスのiPS細胞に、肝細胞増殖因子(HGF)などを与えて培養することで、肝細胞を作り出すことに成功したという。

 ただ、こうした話なら、これまでにも何度か報じられてきたんじゃないかと思われる方もいらっしゃるんじゃないだろうか。私もそうした一人で、山陽新聞の見出しを見ただけでは、「ふ~ん、そうなの」というぐらいにしか感じなかった。しかし、今回がすごいのは、ちゃんと肝細胞として機能することが確かめられ、肝細胞特有の分泌物を出すことが明らかになったというのである。

 これまでの私の取材では、何らかの幹細胞から肝細胞に分化誘導することができても、ばらばらの状態(単離した状態)では、肝細胞特有の分泌物がでるといった機能は十分に果たすことができる、そのままでは再生医療には使えないというような話を聞いたことがある。そのため、大きな肝臓にまで、完全に培養することはできなくても、ある程度、複層の立体構造をもった組織を作らなければならないと考えていた。

 その点で、今回、岡山大学が発表した肝細胞からは、アルブミン、アシアロ糖タンパク質受容体といった肝臓が作り出す分子の存在が確認されたというのだから、iPS細胞から肝臓の機能をもった肝細胞を作り出すことに成功したと言っていいだろう。

 それだけに、山陽新聞は「肝不全患者らへの再生医療につながる成果」とまで書いているが、少し気になるのは、確認された分泌物の量はどうだったのかってことだ。

 確かに、iPS細胞から作り出された肝細胞が、肝細胞特有の分子を作り出しているという事実は注目に値する。しかし、実際に再生医療に利用するとなると、その量も問題になるだろう。このことが気になるところだが、山陽新聞の記事では、そこまで踏み込んで報じていないので、なんとも評価しようがない。

 もちろん、今回の成果で、「じゃ、臨床研究に進みましょう」ってことにはなるはずはないわけで、今回の研究成果をもとに、さらに患者の体に移植した場合に健全に働く肝臓(「肝細胞組織」といったほうが正確かな・・・)を作る技術の開発を進めていくのだろう。今後の研究成果にも期待したい。

http://www.sanyo.oni.co.jp/sanyonews/2009/04/17/2009041722245579000.html

 ではでは・・・。

地球環境のためにスリムな体型を維持しろっていうけれど・・・

 健康のためにはスリムな体型を維持しましょう・・・とは言われるものの、ロンドン大学の研究グループの研究成果では、地球環境のためにもスリムな体型を維持しないといけないようだ。

 このニュースは、ロイターが報道しているもので、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のフィル・エドワーズとイアン・ロバーツが、国際疫学ジャーナル(International Journal of Epidemiology)に発表した論文「Population adiposity and climate change」を元にしている。

 ネット上に公開されている、この論文のアブストラクトによると、普通の体型(普通のBMI=Body Mass Index)のグループに対して、40%太った人のグループでは、必要の食料は19%増加し、さらに体重の重さから移動に必要なエネルギー量も増加するため、10億人という人口規模で、体重の増加が起こると、温室効果ガスとなる二酸化炭素は0.4~1.0ギガトン増加するという。

 まぁ、太っていれば、食べる量が増え、体重の重さから、痩せているように同じように移動しても、消費するエネルギーは多くなるというのは、当たり前といえば当たり前だが、だったら基礎代謝量が低く、体重も軽い黄色人種(モンゴロイド)よりも、基礎代謝量が高く、体重も重い白人(コーカシアン)は地球温暖化問題を深刻化させる存在だっていうことになってしまうんじゃないか。

 それに、運動しない人より運動する人のほうが、やせっぽちより筋肉質の人のほうが、基礎代謝量は高いわけで、アスリートは地球温暖化問題を加速させてしまうともいえる。でも、そんなことは誰も言わないわけだろう。

 だから、今回の研究成果が得られたからといって、地球温暖化問題解決のために体型を維持しましょう・・・と言うのはやっぱりおかしいと思うわけだ。やっぱり体型維持を訴求するのは、あくまで「健康のため」ということにしたおくべきだろう。あっ、「見た目のため」でもいいけどね。

http://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPJAPAN-37580920090420

http://ije.oxfordjournals.org/cgi/content/abstract/dyp172v1?maxtoshow=&HITS=10&hits=10&RESULTFORMAT=&fulltext=Phil+Edwards&searchid=1&FIRSTINDEX=0&resourcetype=HWCIT

 ではでは・・・

2009年4月21日 (火)

研究者を研究以外の雑用から解放せよ!

 サイエンスライターをやっていると、当然のことながら、研究者を取材することが多い。ほとんどは研究内容についてインタビューをしているのだが、取材が終わって雑談になった時、よく耳にするのが、研究者の多くが雑用に忙殺されているといるということだ。特に国立大学が独立法人化して以降、「書類の多さに辟易している」ということを口にする教授が実に多いのだ。

 雑用が多いということは、本職である研究に割ける時間が減っているということを意味する。これでは高いレベルの研究成果など、期待できるものではないだろう。

 そこで、文部科学省は、研究者を雑用から解放するために研究支援者を充実する方針を打ち出したことを、毎日新聞が生じているので紹介したい。

 記事によると、研究者一人当たりの研究支援者数は、欧米と比較して、日本は3分の1程度しかおらず、どうしても研究者が雑用に追われてしまうのだという。

 そのため文部科学省では、今年度の補正予算案に300億円を盛り込み、今後、2年間で2500人の研究支援者を全国に配置。研究装置の整備や研究費の申請などの雑用のサポートにあたらせるというのだ。

 こうした施策は、大いに評価したいところだが、もうひとつ付け加えるなら、広報スタッフの拡充もお願いしたい。別に私に仕事をくれって言っているわけじゃなくて、海外なら大学や公的研究機関内に、ハウス・ジャーナリストというか、メディア対応に長けたスタッフがいて、広報業務に従事していることを考えると、日本の研究機関内部の広報機能は余りにもぜい弱すぎるのではないだろうか。

 過去、私が関わったテレビ朝日の『ダヴィンチの予言』という科学番組で、アメリカのコールド・スプリング・ハーバー研究所に取材班を出した際も、研究所付きのジャーナリストがインタビューに応じてくれたってことがあった。それも、所属する研究機関が発表する成果をなぞるだけでなく、遺伝子研究では先駆的な仕事をやってきている同研究所の広報の仕事をしているだけに、遺伝子技術がもたらす未来像って話をわかりやすく紹介してくれた。

 もちろん、日本の各大学や、産総研や理研にも広報担当者はいる。しかし、彼らはあくまでも黒子として研究者から出されて研究成果の説明書きを、プレスリリースにして、メディアに配布したり、記者レクを開催するなど、その仕切りをやっているに過ぎない。

 広報担当者自らが、いかにすれば一般の方々に理解してもらえるのかってことまで腐心しているとは言い難いのが現状だ。その結果、各研究機関が発行している広報誌が、学者言葉の羅列で、一般の方々には理解しがたいものになっている。

 これでは研究の意義を一般の方々に理解してもらうための広報活動としては不十分と言わざるを得ないだろう。

 だからこそ、研究者の雑用をサポートするスタッフを配置するなら、それとともに研究の意義を一般の方々に理解してもらうための機能も拡充したほうがいいんじゃないだろうか。

 東大、北大、早稲田で実施されている、科学コミュニケーターを要請する大学院プログラムも、始まって3年ぐらいがたつだろう。だったら、ここを修了した者を広報担当者として採用し、単なる論文の引き写しのような広報誌ではなく、できるだけ多くの人に興味を持ってもらえるような広報メディアづくりをしてもいいと思うのだが、いかがだろうか。

http://mainichi.jp/select/science/news/20090420k0000m040117000c.html

 ではでは・・・。

2009年4月20日 (月)

性行為が花粉症を治療するってホントか?!

 日本では、花粉症の飛散の終息宣言まで出され、花粉症を患う皆さんは、「やれやれ」と胸をなでおろしているかと思うが、イギリスのテレグラフ紙が、花粉症に関連して、実に興味深い記事を掲載しているので、紹介してみたい。

 なんと性行為が花粉症の症状を緩和してくれるかもしれないというのである。

 にわかには信じがたい研究成果だが、イランのタブリーズ大学の研究者たちが発表した研究によると、性行為によって血管が収縮することで、花粉症特有の鼻づまりの症状が緩和されるというのだ。

 まぁ、理屈としてはそういうこともあるのかもしれないれど、ヤレば花粉症の症状を少しは緩和することができるのかもしれないけれど、花粉症の原因となるアレルギー反応そのものを抑えられるわけではないので、所詮対処療法に過ぎないんじゃないだろうか。

 脱感作、減感作療法以外の、一般的に付録実施されている花粉症治療は対処療法だから、性行為で症状を少しでも抑えられるのなら、花粉症に悩む方々にとっては朗報かもしれない。いかがだろうか・・・(私自身、花粉症ではないので、どうもそのあたりの感覚がよくわからんのです)。

 ただ、どういう経緯で、こんな研究を始めたんだろうか、そこが気になるところだ。やっぱり、花粉症に悩む研究者が、ナニをイタシテいる時、鼻づまりが収まったので、「もしや・・・」と思ったんだろうか・・・。だったら、これもまた「セレンディピティ」だなぁ~。

http://www.telegraph.co.uk/health/healthnews/5112808/Hay-fever-could-be-cured-by-sex.html

 ではでは・・・。

日本科学未来館の新しい展示を見に行ってきました

 この4月から、日本科学未来館の3階の常設展示が全面リニューアルされたと聞いて、見に行ってきました。

 展示の内容は、これまで研究者たちが、どういったアプローチ(発想)で革新的な技術を生み出してきたのかを、それぞれの道筋で示しています。飛行機(グライダー)の羽根の形状の開発が、抗生物質ペニシリンの開発といった、過去の様々な技術革新を、「むすびつける」「くみあわせる」「ひらめく」「みならう」「きりかえる」という、わかりやすい5つのキーワードによって分類して、それぞれの技術革新にたどり着くようなディスプレイになっています。

 例えば、「みならう」の流れでは、グライダーの羽根の形状の開発が示され、空を飛ぶために鳥の羽根の形状をまねたことを題材に、自然を見習う(見倣う)ことで、その技術革新ができたということが展示されています。

 こうした自然物の形や機能を参考にする研究のアプローチは、最近ではバイオ・ミメティックスなどと呼ばれ、研究分野としても確立した観がありますが、飛行機の羽根の形状の開発のように、古くから科学研究の重要なアプローチの一つであったことがわかるようになっています。

 私自身、サイエンスライターとして、有象無象の科学研究の成果を紹介する際、どういった“括り方”で紹介するのかっていうのは、いつも頭を悩ませています。「免疫学」とか、「遺伝学」とか、「細胞工学」などと、元々、研究領域に分かれた話をまとめるだけであれば決して難しい話ではありませんが、これではあまり魅力的な記事とはいえません。

Dsc_3106  だからこそ、常に一般の方々に興味を持ってもらえるというか、琴線に触れるような見せ方、伝え方の工夫を心がけているのですが、日本科学未来館の新しい展示は、実にすばらしいと思います。

 展示の全体像は、「こんなことあったらいいな」思える言葉があらわれる“願いの泉”を源泉(写真)から始まります。これを起点として、さきに紹介した5つのアプローチの川を流れて、生み出された技術によって豊かになった現代社会を示す“豊饒に海”に至るという展示デザインになっているのですが、これには溜飲を下げるしかありません。いや、本当にすごいと思いますよ。

Dsc_3108  まぁ、ここに書いていることは、私が感じたことなので、日本科学未来館の展示開発のスタッフのみなさんの想いは別のところにあるのかもしれません。ですので、まず、一度は日本科学未来館に出向き、展示を体感していただきたいと思います。

http://www.miraikan.jst.go.jp/exhibition/ex2/innovation.html

 ではでは・・・。

日本のiPS細胞研究 アメリカに対して1勝10敗

 4月19日の読売新聞に「iPS細胞の研究競争激化、日本は米に『1勝10敗』」という記事が掲載された。

 iPS細胞の研究の競争が激化することは、京都大学の山中教授がマウスのiPS細胞の樹立を発表した頃から指摘されていたので、「何を今さら・・・」という思いはあるものの、山中教授、自らが「1勝10敗」と語られているのを見ると、「やはり、そうかぁ~」と、今さらながらに愕然とさせられてしまう。

 2007年12月25日に京都で開催された、iPS細胞研究の特別シンポジウムに参加した際、山中教授を筆頭に、日米を比較して、その研究費の違いを指摘する研究者が少なからずいた。今回の読売新聞の記事でも触れているが、カルフォルニア州だけで10年間で3000億円もの予算が投入されている。一方、日本はというと、今年度は55億円。大きな開きがあるが、これでも日本の予算はずいぶん増額されているのだから、こうした研究費の違いだけでも、1勝10敗というのはむべなくかなといった感じだ。

 ただし、私自身、そう悲観しているわけではない。

 というのも、日本が1勝10敗しかできないほど、アメリカが進歩しているといっても、iPS細胞を活用した“究極の再生医療”にぐっと近づいているかというと、そうとは言えないからだ。

 確かに、アメリカでは幹細胞を用いた複数の臨床研究が実施されようとしている。この点は日本よりも進んでいるとは言えるものの、患者の体細胞からiPS細胞を作り、それを素に、必要な臓器を作り出して、患者に移植するという“究極の再生医療”の臨床研究が始まっているわけではないこともちゃんと理解しておかないといけないだろう。

 例えば、読売新聞でも紹介している筋委縮性側索硬化症(ALS)に対する臨床試験は、中絶胎児から採取した神経幹細胞を培養、凍結保存し、これを移植するというものでしかない。つまり、アメリカの幹細胞を使った再生医療が、“究極”の高みにまで達したってわけではないのだから、まだまだ悲観する必要はないんじゃないだろうか。アメリカだって、iPS細胞から、心臓、腎臓のような複雑な立体構造をもった臓器を作り出すなんてことは、誰でも成功はしていないんだから・・・。

 もちろん、研究費、研究者数、論文数ともに、現在の日本は劣勢にあるのは否めぬ事実であるし、安穏としていられる状況ではないのは重々承知している。しかし、アメリカだって、“究極の再生医療”という、ゴールに近づいているわけではないんだから、まだまだ挽回のチャンスはあるだろう。

 16日と昨日に、批判的なことばかり書いたが、政府与党でも、科学研究を強力にバックアップする法案や、研究費の増額を検討してくれている(それがiPS細胞研究に投入されるかどうかは未定だが・・・)。今後の日本の研究陣の奮闘に期待しようじゃないか!

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20090419-OYT1T00363.htm

 ではでは・・・。

米コメディアンの名前はISSのトイレではなく、運動器具に付けられる

 4月9日に、国際宇宙ステーション(ISS)の施設の名称に、アメリカのコメディアン、スティーブン・コルベアの名前が付けられるかもしれないというニュースを、このブログで紹介したが、その続報がCNNなどが報じているので、こちらについても紹介しておこう。

 ただし、以前のニュースから話が違っているのが、コルベアの名前が付けられるというのが、トイレではなく、運動器具(トレッドミル)になったということだ。

 以前、ネタ元にしたものの一つの、space.comのサイトでは、はっきりと“NASA Might Name Toilet For Comedian Stephen Colbert”と書いており、そのことは、以下のURLからもわかるだろう。このサイトでは、トイレらしき施設の写真まで掲載している。

http://www.space.com/entertainment/090324-colbert-space-toilet.html

 ところが、CNNが報じたニュースによると、トイレではなく、トレッドミルに決まったと、宇宙飛行士のスニータ・ウイリアムスが、コルベアの番組“The Colbert Report”に出演し、発表されたというではないか・・・。

 といっても、以前のニュースが誤報だったわけではなく、元々、NASAが行った施設名称の公募は確かにトイレ(ノード3)だったわけだが、どういうわけか、運動器具のトレッドミルの名称になったようだ。

 しかも、その器具の正式名称が“The Combines Operational Load Bearing External Resistance Treadmill”で、頭文字をとるとCOLBERT(コルベア)になるんだとよ・・・。こりゃ、こじつけだろう!

 まぁ、NASAが冗談が一切通じない頭の硬い機関だったら、施設名称公募での「コルベア」の1位獲得は無視されただろうが、別の装置になったとはいえ、こうして実際にコルベアの名前が採用されたってのは、それだけ冗談が通じるってことだろう。その上、頭文字をとるとコルベアになる正式名称まで考えておくなんて、なかなか気が利いている。

 ご存知の方も多いと思うが、無重力の宇宙空間では、筋肉が衰えやすいため、宇宙飛行士には一定の運動が課せられる。当然、近い将来、ISSの宇宙飛行士はコルベアで運動することになるわけで、コルベアは宇宙飛行士の体型維持に貢献することになるのだろう。

http://www.cnn.com/2009/SHOWBIZ/TV/04/15/colbert.nasa/index.html

 ではでは・・・。

2009年4月19日 (日)

自民党がイノベーション促進法を検討しているようだが・・・

 大学や公的研究機関で得られた研究成果を、実用化させるには、特許化したり、実用化の担い手となる企業に技術導出するなど、様々なプロセスを踏まなければならない。そのため、研究一筋の人生を歩んできた研究者に任せておくだけでは、実用化されぬまま、研究成果が埋もれてしまうことがある。

 こうした状況を踏まえ、自民党が、研究成果を迅速かつ的確に実用化させる体制を強化するために、研究成果実用化促進法案(イノベーション促進法案)の検討に入ったことを時事通信や科学技術振興機構(JST)の情報サイト「サイエンスポータル」が伝えている。船田元衆議院議員を座長に、プロジェクトチームを設置し、早ければ、今国会での法案提出を目指しているという。

 「研究成果を迅速かつ的確に実用化させる体制を強化するため」という一文だけを読めば、サイエンスライターとしては応援しなければならない法案ではあるが、報道を見る限り、疑問を感じてしまうのだ。

 時事通信の記事を引用すると、

研究者が研究活動に専念できる環境を整備するため、知的財産の管理や研究資金の調達を担う「研究管理専門職」を各大学に新設。研究活動に必要なデータの収集などを行う「研究技術支援専門職」も置くとした。

 ってことのようだが、では、これまで大学に知財を管理する部門がなかったと言っているのだろうか。

 残念ながら、私は十分には機能しているとはいえないと思うが、大学や地域ごとに技術移転機関(Technology Licencing Organization=TLO)が設立され、ビジネスシーズになりうる研究成果を特許化し、企業との橋渡しをする事業を行っていたではないか。

 また、JSTでは各地域のイノベーションプラザ、イノベーションサテライトを設置し、管轄地域の大学や公的研究機関で得られた研究成果の掘り起こしをはじめ、企業との連携も推進しているし、「新技術説明会」と題した研究成果の発表会を実施し、企業への紹介も積極的に進めている。

 このような、これまでにもやられてきた事業を担当する部署を「新設」するっていうのは、どういう意図があるか理解に苦しむのだ。単にスタッフを増員しようというのではないと思うが、どのように改革していくのか、具体像を示してもらいたい。

 このような疑問に感じていたところ、このニュースを報じていた、同じ「サイエンスポータル」にある、海外の情報を紹介する「デイリーウォッチャー」というページで、興味深い記事があったので、こちらも併せて紹介したい。

 それは、イギリスのイノベーション・大学・職業技能省(Department for Innovation Universities Skills=DIUS)が、医薬品や医療技術などのライフサイエンス分野の問題を解決するため、ヴァーチャルな組織として「ライフサイエンス庁(Office for Life Science=OLS)」を設置したというニュースだ。

 この「ヴァーチャルな・・・」という組織の位置づけがよくわからないのだが、その役務について明確に示されており、特に私が注目したのは、(1)医薬品のより迅速な市場化を支援する、(2)臨床試験基地としての英国の魅力増大を図る、の2点だ。この2点については、日本においても十分に機能するものだろう。

 いちおう自民党が検討している研究成果実用化促進法案でも、時事通信の記事によると、「新薬承認の迅速化や安全対策の強化を図るため、厚生労働省から独立した医薬品庁(仮称)の創設を提唱」しているというので、この点は評価するが、具体的にどういった支援が行われるのか、いまいちよくわからない(それは、今検討中なんでしょうね)。

 過去、複数の創薬系のバイオベンチャーを取材させてもらって経験から言わせてもらうと、まず日本で治験を行おうというベンチャーは決して多くはないというのが否めぬ事実だ。中国か、アメリカで実施し、その国での承認を得てから、市場の動向を見ながら日本でも治験を進めるという意向を示した経営者は多かったのだ。

 つまり、日本における治験実施のハードルは非常に高く、限られた予算の中で研究開発を進めているベンチャー企業にとって、日本での治験は無謀ともいえるチャレンジになっているのかもしれない。

 その点で、OLSが役務として掲げている、「臨床試験基地として魅力増大」はぜひ、日本でも取り組んでもらいたいところだ。

 冒頭で、研究成果実用化促進法案について否定的な見解から書き始めたが、現状の報道で示されている限りでは、これまでもやってきたことをなぞっているだけで、新奇性はあまり感じられない。今後、法案を提出するまでに、具体的な支援施策が決定されていくだろうから、今後の推移を見守りたい。

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_date3&k=2009041600955

http://scienceportal.jp/news/daily/0904/0904162.html

http://crds.jst.go.jp/watcher/data/645-002.html

http://www.dius.gov.uk/ols

 ではでは・・・。

4月18日 JAXA筑波宇宙センター特別公開

 いつも堅苦しいことばかり書いているので、今宵はちょっと趣向を変えて・・・。

 昨日、4月18日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の筑波宇宙センターの特別公開に出かけてまいりました。

 科学技術週間(今年は13日~19日)に合わせて、この時期、多くの研究機関が一般公開をしており、過去、同じJAXAでも、東京都調布市になる調布航空宇宙センターの一般公開に出かけたことはありましたが、今年は筑波宇宙センターへと相成りました。

 10時~のペットボトルロケットの工作教室に参加したいと子供がいうもので、眠気眼をこすりながら、7時20分に出発。なんとか9時半には筑波についてのですが、その時点で午前の分の整理券の配布は終了しておりました。

 調布航空宇宙センターの一般公開では、多くの来場者があるとはいっても、比較的のんびり見られるのに対して、筑波宇宙センターはけっこうな人出でして、10時半頃には駐車場のキャパシティからから、入場を制限しているようでした(その後も断続的に車は入ってきているようでしたが・・・)。

 午後のペットボトルロケットの工作教室の整理券の配布は1時からということで、早めに12時には並びにいったのですが、この時点ですでに終了。みなさん、すごいですねぇ。1時間以上も並ぶなんて・・・。私なんぞ、子供の面倒は嫁さんに任せて、個人的な趣味で一人で見学して回りました。

 筑波方面での取材は、70%程度が産総研、25%程度を筑波大学、残りの5%程度の頻度で高エネ研、環境研、森林総研に行くぐらいで、筑波宇宙センターを取材する機会はほとんどなし。お隣の産総研の取材のため、目の前を通り過ぎることは頻繁にあるのですが、センターの構内に入るのは6~7年ぶりですか・・・。でも、ここは面白いですね。入ってすぐのところに巨大なDsc_3085 HⅡロケット(写真)があり、宇宙ロボットがあり、国際宇宙ステーションの日本の実験棟「きぼう」(写真)があり、その「きぼう」の管制室も見学できました。

 ただ、現在進行形で運用中の「きぼう」の管制室ということもあって、保安上の措置から、建屋のエントランスのところで荷物を預けます。Dsc_3059 写真撮影も禁止・・・。まぁ、しかたがありません。というわけで、「きぼう」の管制室の写真はありません。

 宇宙ロボットの公開スペースでは、近い将来、運用する予定というハンドロボット「アストロボット」を見学(写真)。見た目の動きでは、ジェット推進Dsc_3078_3 研究所が開発していたロボノートに比べると、シンプルな感じだったため、「ナットを回せるか?」と聞くと、「ナットは回せない」とのこと。というか、そもそも「ナットは回す必要はない」ということで、電動工具を操作するために握ることが重要だそうで、こちらについては開発されているということででした。

 こうしたロボットは人間の宇宙飛行士の代わりに、危険な船外に出して利用することを想定しているため、船外の環境に適応できる必要があります。例えば、真空環境でも潤滑油(グリース)が蒸発しないようにシールドを施す工夫をしているようですし、宇宙空間では日光が当たる場所と、日光が当たらない場所では相当な温度差になるのに対応できる特殊なグリースが開発されているとのことでした。

 このように研究者と直接、話ができるのも、研究機関の一般公開の面白さの一つ。本日(4月19日)もJAXAの調布航空宇宙センターのほか、様々な研究機関が一般公開になりますので、お出かけしてみてはいかがでしょうか。

 ではでは・・・。 

2009年4月18日 (土)

宇宙太陽光発電は次世代の自然エネルギーの切り札になるか?

 地球温暖化問題や、化石燃料の枯渇の問題を考えると、今後、我々が消費する電力の生産は、太陽光や風力などの自然エネルギーにシフトしてかなければならない。

 しかし、現状の技術では、こうした自然エネルギーだけに頼るのは実に心もとない。

 立派な風車を建設しても風が吹かなければ発電できないし、太陽電池パネルをいくら並べようとも、曇りの日が続けば、十分な発電量を得ることはできない。自然エネルギーが自然まかせである以上、安定的な電力供給は決して簡単なことではないのだ。

 そこで、次世代の自然エネルギーのひとつとして開発が進められているものに、宇宙太陽光発電(Space Solar Power System=SSPS)がある。衛星軌道上に巨大な太陽電池パネルを設置し、そこで発電した電力をマイクロ波やレーザー光に変換し、これを地上に送信。地上のアンテナが受けたマイクロ波やレーザー光を電力に変換して利用しようというものだ。

 地上での太陽光発電とは異なり、天候の影響は受けないし、夜もないため、1日24時間、1年365日、発電し続けることが可能で、自然エネルギーであっても、電力の安定供給ができると期待されている。

 日本でもJAXAや京都大学で開発を続けており、電力送信の基本的な技術開発が確立しているという。それだけに、早く実証試験に進んでもらいところなのだが、大規模な太陽光発電施設を宇宙空間に建設することには膨大な予算が必要であるため、未だSSPSは「夢のエネルギー技術」の域を脱していない。

 ところが、アメリカ、カルフォルニア州の電力会社が、SSPSの運用を州政府に申請していることを、複数のメディアが伝えている。

 この申請を行ったのは、サンフランシスコとカルフォルニア州北部に電力供給を行っているパシフィック・ガス・アド・エレクトリック社で、自然エネルギー開発、コンサルティングを行うソーラーエン社と、SSPSの導入で合意に達したことで、2016年の運用開始を目指し、カルフォルニア州政府に、施設の設置許可申請を行ったというのである。

 イギリスのガーディアン紙の記事によると、今回のSSPSの計画は200メガワットの設備規模になるようだが、問題はいかに建設費用を調達するのかということのようだ。世界的な金融不安の中、SSPSというチャレンジングな計画に十分な投資が得られるかどうかが、この計画の成功のカギを握っていると言ってもいいだろう。

 SSPSは、次世代の自然エネルギーの旗手と目されているだけに、この計画のこれからを見守りたい。

http://www.guardian.co.uk/environment/2009/apr/16/solar-energy-farms-space

http://www.msnbc.msn.com/id/30198977/

 ではでは・・・。

2009年4月17日 (金)

京都大学 iPS細胞研究でアメリカのバイオベンチャーと提携

 iPS細胞の特許は、日本国内では京都大学がパテント・ホルダーであると認められたわけだが、アメリカでは、山中伸弥教授がヒトのiPS細胞の研究成果を発表する前に、ドイツの製薬会社バイエル社が特許出願していた可能性が示唆され、一時期、国際的には京都大学の特許が認められないのではないかと囁かれていたこともあった。

 マウスでのiPS細胞の樹立を山中教授がいち早く発表しているわけで、山菜っ享受こそインベンター(発明者)であり、パテント・ホルダーは京都大学がなるべきだと考えているが、国際特許についても、その後、京都大学の出願のほうが早かったと発表され、今のところ京大のほうが優位であるようだ。

 こうしたiPS細胞の特許問題がある以上、バイエル社から技術移転を受けているベンチャー企業と、京都大学は敵対関係にあるんだろうと思っていたが、そのベンチャー企業であるアメリカのアイズミ・バイオ社と京都大学が、iPS細胞研究で提携することが発表された。

 詳しくは以下のリリースをご覧いただきたいのだが、リリースではiPS細胞の特許問題については一切触れられておらず、京都大学とアイズミ社が持つ技術を相互に交流させ、それぞれの方法で作ったiPS細胞の比較検討などを進めることが紹介されているだけなので、どのような経緯で今回の提携に至ったのかはよくわからない。

 ただし、私が確認できた範囲では、今回の提携について、読売、毎日、産経、共同、時事が伝えており、時事以外が特許問題に触れ、共同については、「特許問題で融和?」とまで踏み込んで書いている。その経緯はわからないままだが、両者が歩み寄って、今回の提携に至ったのだろう。

 研究成果で競い合うならともかく、すでに発表されている成果の特許化について、反目しあうのは、決して生産的とは言えない。その点で、お互いの技術で作られたiPS細胞の性質が違うなら、それを比較検討し、より良いiPS細胞の樹立方法の解決につなげていけばいいわけで、今回の融和は大きな意味があるだろう。

京都大学のリリース

http://www.icems.kyoto-u.ac.jp/cira/doc/090414_izumi_J.pdf

共同通信(47ニュース)の記事

http://www.47news.jp/CN/200904/CN2009041401000920.html

 ではでは・・・。

360度どこから見ても立体映像になるディスプレイを開発

 立体映像を実現するディスプレイは、左右の目の視差(両眼視差)を利用して、3D画像を表示するものが実用化されているが、長時間使用すると生理的に不快感を催すことがある。そのため、新たな3Dディスプレイの研究開発が様々なアプローチで進められている。

 一昨日(4月15日)、情報通信研究機構が発表した、3Dディスプレイは、なかなか面白い。

 この3Dディスプレイは、10cm四方の立方体から成り、各面には小さな凸レンズが並べられており、液晶ディスプレイと組み合わせることで、360度どこから見ても、立方体の内部にものが浮かび上がったように見えるという。百聞は一見にしかず、ぜひ、以下のリリースのサイトで3D画像を表示したディスプレイをご覧いただきたい。

 ディスプレイ開発のアイデア自体は、非常に面白いのだが、その用途がうまくイメージできない。リリースでは、「手の届く程度の近い距離で、人と人とのコミュニケーションを支援するためのツールとしてデザインした」と、この3Dディスプレイの開発意図が紹介されているのだが、こう言われても、どのように利用されるのかイメージできるだろうか。

 そもそも、人が人とコミュニケーションを取る際、何らかのテクノロジーによる支援を必要とするのは、離れた場所にいる者どうしがコミュニケーションをとろうとする場合に限られるのではないか。

 ただ会話すればいいし、相手の心情を示す表情だって、手に取るようにわかるわけだから、手の届く程度の近い距離にいる者どうしがコミュニケーションするのに、3Dディスプレイなど必要ないだろう。

 だから、「手の届く程度の近い距離で、人と人とのコミュニケーションを支援」という、開発コンセプト自体、ちょっと間違っているように思えてしまうのだ。

 といっても、この3Dディスプレイがまったく意味をなさないなというつもりはない。

 たとえば、6面ある画面をどこから見ても、内部にものがあるように見るわけだから、これを活かして、これまでにないゲームソフトの開発なんてできるんじゃないだろうか。

 現在のゲームが平面の画面に表示しているため、これまでは360度どの方向にもスクロールできるゲームなんて不可能だったわけだが、この3Dディスプレイを利用すれば、それが可能になる。だったら、これまでにないゲームが期待できるだけで、クリエイターの腕の見せ所だと思うのだが・・・。

http://www2.nict.go.jp/pub/whatsnew/press/h21/090415/090415-1.html

 ではでは・・・。

2009年4月16日 (木)

2700億円規模の研究強化基金を新設するというけれど・・・

 一昨日、日本の科学研究費が対GDP比では世界一であることを、このブログで紹介したが、さらに政府、与党は、科学技術分野での国際競争力を高めるため、総額で2700億円にも上る研究強化基金の創設を決めたことは、4月11日の読売新聞が報じている。

 研究費が増額されることは、科学研究の成果をネタに原稿を書いている、サイエンスライターとしては、好意的に受け止めなければならないのだろうが、今回の基金については、ちょっと気にかかる点がある。

 読売新聞の報道を引用すると「世界最先端の研究チームを最大30件選定し、それぞれ3~5年で90億年の資金を提供する」となる。この30件に絞るという意図がよくわからないのだ。

 確かに、有望だと思われる研究課題に予算を集約して、確実に研究成果を上げていくということも必要だと思うが、「ノーベル賞級の飛躍的な成果の創出を狙う」っていうのなら、もっと萌芽的な研究に、広く研究資金を提供したほうがいいんじゃないか。

 3~5年で90億円もの膨大な研究資金が提供されるということは、各チームは確実に研究成果をだしていかないといけないだろう。「やってみましたが、うまくいきませんでした」という結果など許されるものではない。

 となると、研究費の提供を求める側も、それを選ぶ側も、無難な研究テーマになるのではないか。現状では不可能と思えるようなチャレンジングな研究テーマなど、そう簡単に選ばれるものではないだろう。これで、どうやってノーベル賞級の研究成果を上げていこうというのか。

 それに、物理の実験で使う加速器のような巨大な施設を新たに建設しようとするならともかく、現在、研究が行われているラボに、研究資金を提供するのに、なんで3~5年で90億円も必要なのか。

 「研究チーム」という言葉を使っているので、科学技術振興機構(JST)による研究費助成の枠組みでいえば、チーム型の戦略的創造研究推進事業(CREST)のようなものにあたり、単一のラボに研究費が提供されるのではないと思うが、ポスドクを数人雇い、研究体制を拡充していくぐらいならば、そんなに膨大な研究費の増額は必要ないと思えうのだが・・・。

 現在では、数年以内のノーベル賞受賞の最右翼とされる、iPS細胞の産みの親である、京都大学の山中伸弥教授も、奈良先端科学技術大学院大学時代は、決して潤沢な研究費が与えられたわけではない。というとりも、多くの可能性を秘めた若い研究者に広く予算が配分されたことで、iPS細胞という結果が得られたのではないか。

 ならば、最大30件で、2700億円を分配するなどせずに、300件に、5~10億円ぐらいを提供したほうが、ずっと予想を超えた研究成果が得られるんじゃないだろうか。

 もちろん、300件のうち、295件ぐらいは、大した研究成果を得られるままに終わるだろう。でも、それでいいんじゃないか。先にも書いた通り、ノーベル賞級の研究成果など、成果の得られない膨大な研究行為を礎にして得られるのだから・・・(「膨大な研究者の徒労という屍の山を礎に」と言い換えてもいい)。

 ただ、この基金の設立で、一つ、評価したいことがあるので、もう少し書かせてもらう。

 それは研究費の年度の繰り越しの問題を柔軟に対応しようとする方針だ。これは研究費の運用だけでなく、行政全般に言えることだが、単年度で予算を使い切るなんて考えること自体、実にナンセンスだ。研究費にしても、年度末に無理やり必要のない研究機器を購入するなんてことはあってはならない。

 「柔軟な対応」とはいうが、予算を繰り越し、無駄遣いをしないようにするのは、何も柔軟な対応ではなく、当たり前のこととして取り入れてもらいたい。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20090411-OYT1T00145.htm

 ではでは・・・。

 追記

 上記の記事を公開してから、科学技術振興機構(JT)が運営しているウェブサイト「サイエンスポータル」で、この話題についての紹介があったので補足しておきたい。

 概ね読売新聞の記事と同じなのだが、サイエンスポータルの記事では、野田聖子・科学技術政策担当大臣のコメントが紹介されている。引用すると、「研究現場の声を聞いて、年度予算という制限が研究の推進を阻んでいると感じた。従来の枠組みを超えることができる制度」と、この基金への期待を寄せているようだ。

 単年度単位の予算制度を是正しようというのは、上記のとおり賛成するが、だからといって1チーム90億円も投入するほど研究現場では予算が足りないっていう声があがっているのだろうか・・・。どういう研究者にインタビューしたんだ・・・?

http://scienceportal.jp/news/daily/0904/0904151.html

再生医療実現化プロジェクトの講演動画を公開

 これまで、何度かiPS細胞の話題を取り上げ、創薬スクリーニングだけじゃなく、再生医療への支援も必要だって話をしてきたけれど、文部科学省を中心となって、再生医療を実現するための研究は進められている(個人的にも文科省だけなく、厚労省にも、もっと支援してもらいたいところが・・・)。

 その動きの中核をなしているのが、文部科学省の「再生医療実現化プロジェクト」だが、その公開シンポジウムの内容が、ダイジェストではあるものの、動画で公開されている。

 動画で公開されているのは、文部科学省ライフサイエンス課の菱山課長とプロジェクトのプログラムディレクターの高坂新一氏の挨拶と、京都大学の山中伸弥教授、東北大学の西田幸二教授、テルモの片倉健男主席推進役の講演が見られる。

 当日は、理化学研究所CDBの笹井芳樹グループディレクターの講演もあったようだが、こちらの動画は閲覧できるようにはなっていない。

 iPS細胞関連の研究は、日本のみならず、アメリカで急ピッチで進められているため、講演の内容は、最先端とは言い難いが、iPS細胞を再生医療に使おうとする研究の動向を把握するにはちょうどいいのではないだろうか。

 この分野の研究に興味のある方は、ぜひご覧いただきたい。

http://210.196.168.142/news/2009/03/post.html

 ではでは・・・。

本日発売の別冊宝島で男性乳がんの記事を書いています

 本日(4月16日)、発売の別冊宝島1622『日本人だけが騙される「健康・ダイエット」の落とし穴』に、男性乳がんの記事を執筆しております。

 本のコンセプトとしては、巷に流布する、ダイエットや健康情報がいかにいいかげんなものかってことを紹介しております。

 その後半で、がんについても論じているのですが、その最後の最後に、男性でも乳がんになることはありますよ・・・という話題を、2ページだけですが、まとめさせていただいております。

 よかったらチェックしてやってください。

http://tkj.jp/book/book_20162201.html

 ではでは・・・。

温暖化を放置すれば、猛暑死のリスクが3.7倍になるというけれど・・・

 ここ数日、東京も最高気温が20℃を超える日が続いており、メディアにおける地球温暖化論議が活発化しそうな気配だが、4月14日付の読売新聞が、国立環境研究所などの研究成果として、温暖化を放置すれば、猛暑死のリスクが3.7倍になるとの報じている。

 この研究成果は、14日に開催された政府の中期目標検討委員会で報告されたもので、3つの予測を提示している。

 その中で、世界中が温暖化対策を講じずに、最も温暖化が深刻化した場合(1990年に比べ気温が3.3℃上昇すると予測)、暑さによる熱ストレスで心臓や肺に負担を抱える人が体調を悪化させるなどして死亡するリスクは3.7倍に達するというのだ。温暖化対策が強化され温度上昇が1.6倍に抑えられても、2.1倍になるとも予測している。

 こうした予測が報じられれば、「だったら温暖化対策を強化しなければならない」と世論は傾くのだろうが、これには大きな疑問を感じてしまう。

 確かに平均気温が上昇すれば、熱ストレスによる死亡者数は増加するだろう。しかし、一方で、冬に寒さによる死亡リスクは大幅に低下するんじゃないだろうか。

 私は地球温暖化問題については、対策論者ではないし、懐疑論者でもない。逆に得場、対策を必要とする論議にも疑問を感じるし、懐疑論者の論調にも疑問を感じている。

 それだけに、今回のように気温上昇した場合の熱ストレスによる死亡リスクだけを研究成果として報告する態度には大きな疑問を感じてしまうのだ。暑さによる死亡リスクの増加を論議するなら、、同時に、寒さによる死亡者数のリスクの減少についても論じるべきだろう。それが健全な科学論議というもののはずだ。

 そこで、一つ、注目すべきデータを紹介しておきたい。

 ビョルン・ロンボルグの『地球と一緒に頭も冷やせ!(原題「COOL IT」)』(ソフトバンク・クリエイティブ発行)によると、ヨーロッパ各地域での100万人当たりの暑さ、寒さによる死亡者数は(65~74歳人口100万人あたり p30 ※書ききれないため一部抜粋)

            南フィンランド  オランダ  ロンドン  北イタリア   アテネ

 暑さによる死亡者    248       53      40      325     445

 寒さによる死亡者    1379     1345    3145     1238     2533

 であるという。温暖化が深刻化した場合に、寒さによる死亡リスクがどの程度、減少するかは明らかではないため、これらの数字を基にする、トータルの死亡リスクの変動を予測は難しいが、もともとの死亡者数が大きい原因を軽減するほうが、つまり、寒さを軽減するほうが、総体としての死亡リスクは減るのではないか・・・。

 たとえ、温暖化が進み、暑さによる死亡者数が増加しても、寒さによる死亡者数の減少のほうが大きく、結果として暑さ、寒さによる死亡者数は、温暖化が深刻化したほうが減少する可能性があるってことを、私は言いたいわけだ。

 ロンボルグも、温暖化対策ではなく、暑さ対策(つまり、暑さで死なせないための直接的な対策)を講じれば、温暖化によって寒さによる死亡者が減少するはずだと指摘している。

 ただし、だからといって、温暖化問題を放置していいとは考えてはいない。疑問は多くあるが、IPCCが言うように地球温暖化が人間が輩出した温室効果ガスが原因であるとすれば、人為的に気候を変動させることは避けるべきだと考えている。

 かといって、温暖化が深刻化した場合に、暑さによる死亡リスクの増加だけでをあげつらうアンフェアな論議を放置していいはずがないだろう。

 もしかしたら中期目標検討委員会では、寒さによる死亡リスクの低減も論じられ、読売新聞がそのことを報じなかっただけなのかもしれないが、少なくとも読売新聞の記事を読む限りは、温暖化問題を既成事実としたい欺瞞を感じてしまうのは私だけではないと思うのだが、いかがだろうか。

http://www.yomiuri.co.jp/eco/news/20090414-OYT1T01052.htm

 ではでは・・・。

国際宇宙ステーションへの移動手段は中国の「神舟」になる?

 現在のスペースシャトルは、2010年に全期が退役する予定になっており、そのために後継機の第一候補としてORIONの開発が進んでいることは、このブログ(4月1日)でも紹介した。

 ところが、アメリカによる独自開発の後継機だけでなく、国際宇宙ステーション(ISS)の運用に中国を取り込み、中国が開発した「神舟有人宇宙船」の利用も検討課題の一つとして挙がっていることが、アメリカの複数のメディアが伝えている。

 これはオバマ大統領の科学技術顧問(Science Adviser)のジョン・ホールドレン博士が語ったもので、アメリカによるシャトル後継機の開発が遅れる可能性があるとして、中国の神舟有人宇宙船に白羽の矢が立ったようだ。

 日本では、こうした中国を取り込もうとする動きは、科学技術政策を超えて、政治的に問題視する意見も噴出するかもしれないが、私、好意的に考えている。

 というのも、現在のISSの建設、そして運用は、アメリカを中心に、ヨーロッパ(ESA加盟11カ国)、ロシア、カナダ、日本によって進められているが、新たな国が参加すれば、費用分担の面でメリットは大きいと言えるだろう。

 ならば、中国か、インドあたりの参加が予想されるところだが、今のところ両国の参加は実現していない。

 中国も、過去、ISSへの参加を正式に打診していたとの報道もあるだけに、スペースシャトルの退役にあたって、神舟有人宇宙船を利用するというのは、中国にとっても渡りに船の動きと言えるのではないか・・・。当然、費用分担の面で、中国への期待は大きくなるに違いない。

 それに、宇宙開発の進捗度合いからいえば、中国はアメリカ、ロシアに継ぐ、第三位の国と言ってもいい。有人宇宙飛行を実現させたといっても、まだまだ人工衛星程度でしかない・・・といった批判もあるが、一国の技術力だけで宇宙に人間を送ったのは、アメリカ、ロシア、そして中国だけでしかないのは否めぬ事実だ。この点を考えると、日本よりも進んでいると言える。

 ならば、中国の独自の宇宙開発を傍観しているだけで、将来的に何らかの利権を主張されるぐらいならば、国際的な協調関係の中に取り込んだほうが得策といえるだろう。

 現実に、ISSに宇宙飛行士や物資を届けるのに神舟有人宇宙船を利用するならば、今以上に情報公開を求めることになるだろうし、現在のようなディスクローズされていない状態で、独自の宇宙開発をさせておくよりはずっといいんじゃないだろうか。

 今のところ、「神舟有人宇宙船を使ってもいいんじゃないの・・・」っていう判断が下され、検討課題に加わったという程度のことで、具体的に神舟有人宇宙船を利用するプロセスに進んでいるわけではないので、今後の進展に注目するしかないが、まずは中国政府の反応が気になるところである。

http://www.al.com/news/huntsvilletimes/local.ssf?/base/news/123935497642100.xml&coll=1

http://www.universetoday.com/2009/04/13/will-us-astronauts-ride-chinese-rockets/

 ではでは・・・。

2009年4月15日 (水)

シドニーに人間の病気を展示する博物館がオープン

 ここ数年、日本を循環している「人体の不思議展」ってなかなかの人気のようだ。

 あぁいった人体標本はどうも苦手(というか、剥製以外の動物の標本自体が苦手)なので、首都圏で開催された時も、私は出かけることはなかったが、こういった標本に興味がある方にとっては打って付けの博物館が、この3月、オーストラリア、シドニーに開館した。

 この博物館は、ニューサウスウェールズ大学内に設置された、Museum of Human Desease(人間の病気博物館)。もともとは医学部生のための資料館だったようだが、限定的ながら一般にも公開されるようになったようだ。

 海外ではタバコのパッケージにも印刷されているので、見る機会も多くなった、喫煙者の黒ずんだ肺のほか、関節炎で変形した脚など、人間の病気に関する様々な標本が展示されているという。

 こうした展示物だけをあげつらうと、なんとも悪趣味な博物館のように思えるが、ニューサウスウェールズ大学のニュースサイトによると、博物館マネージャーのロバート・ラウンズタウン氏は、「標本を見学してもらえれば、健康の重要性を理解できるはず」と語っているようだ。

 博物館として開館したものの、医学部生のための資料館として機能しているため、一般への効果時間は限定されており、個人での訪問の場合、平日の午後3時~午後5時に限られている。詳しくは、以下のサイト(※)をチェックしていただきたい。

ニューサウスウェールズ大学のニュースサイト

http://www.unsw.edu.au/news/pad/articles/2009/mar/Museum.html

Museum of Human Deseaseのインフォメーション(※)

http://medicalsciences.med.unsw.edu.au/SOMSWeb.nsf/page/MoHD+Public+Visits

 ではでは・・・。

経済対策も兼ねて理科教材費に200億円

 近年、子供たちの理科離れが進んでいると言われているようだが、小中学校の授業にもっと実験を取り入れれば、理科好きも増えるのに・・・と思っていた。

 ただし、状況は、そんなに甘いものではないようだ。

 科学技術振興機構(JST)と国立教育政策研究所が昨年、実施した調査によると、現場の理科教師が実験を行いたいと考えていても、実験必要な理科教材が十分にそろっていない学校が多いという。

 そんな状況を改善すべく、文部科学省が、理科教材の購入費に充てるため、200億円の追加要求を政府の新経済対策に盛り込むことを、4月14日付の朝日新聞が報じている。

 この記事によると、小学校の備品費は年平均9万円程度で、指導要領とおりの授業を実施しようとした場合に必要とされる金額の半分程度だったという。このため、コンデンサー、手回し発電機などの新指導要領で必要とされる実験機器がない小学校が6割以上もあったという。

 そこで、理科教材の購入費を増やしていこうとなったわけで、このこと自体は大いに評価したいが、せっかくだったらもう一歩踏み込んで、より積極的な理科教育を実現してもらいたい。

 単に予算請求だけでなく、指導要領の変更も伴わなければならないのだろうが、従来からある実験器具に加え、例えば、DNA抽出キットや、LEGOのマインドストームなどを購入して、子供たちに触れさせてみるのもいいんじゃないか。

 すべての小学校、中学校でこれを実施するなど、予算的に難しいだろうから、市町村の教育委員会で用意して、各学校を巡回するという手もあるだろう。小学生のうちにマインドストームを触る機会があれば、「僕もロボット研究者になってみたい」と思う子供たちが現れれば、それだけでも事業としては成功だと思えるのだが・・・。

 学校教育とは外れるが、日本科学未来館クラスの科学博物館を、政令指定都市クラスの大都市には整備してもらいたい。

 現在でも科学博物館が各地にあることは十分認識しているが、内容的にかなり古くなったものも多く、展示物のリニューアルはほとんど行われていないんだろうなって思えるものになっている。

 こちらも予算の問題が阻んでいるのかもしれないが、東京に日本科学未来館がある関東圏はともかく、札幌、仙台、名古屋、大阪、福岡ぐらいには同程度の科学博物館を設置して、より多くの子供たちが最先端の科学技術に触れられる環境を整備してもらいたいと思うのだが、いかがだろうか・・・。

http://www.asahi.com/science/update/0411/TKY200904110225.html

 ではでは・・・。

経済刺激策だけじゃなかった、オバマの環境政策

 就任以来、矢継ぎ早に経済政策を打ち出すオバマ大統領だが、彼の経済刺激策の中心となっているのが、「グリーン・ニューディール」と呼ばれる環境産業の創出であることは、多くの方がご存知であろう。

 自然エネルギー産業への支援や、環境対応型の新型自動車の開発へのサポートに加え、「マイクロ・グリッド」といった電力供給とIT技術を融合した新たなエネルギービジネスの創出も加えられている。

 こうした政策自体は、環境政策に後ろ向きだったブッシュ政権と比べると、大きな前進と思えるが、少し気になっていたのが、「オバマにとって、環境政策にとって経済刺激策の一環でしかないのか?」ってことだった。

 まぁ、世界的な経済危機の中、経済刺激策を提案し続けなければならない点は十分に理解できるが、本来、環境政策は経済活動を規制することのほうが多いものだ。有害な汚水を垂れ流す工場の操業を停止させたり、環境を破壊してしまった企業には罰金を支払わせるための法律を立案するなど、経済活動への規制こそ、環境政策の本質と言っても過言ではないだろう。

 そのため、経済刺激策としての環境政策ばかりが打ち出されるオバマ政権の動向に、少なからず疑問を感じていたわけだが、先日、インターナショナル・ウルフ・センターのウェブサイトにアップされたニュースなどが、オバマ大統領は野生生物の保護地域の拡大させる法案に署名したことを報じているため、このブログでも、この話題に触れてみたい。

 この法案はOmunibus Public Land Manegament(OPLM) Act of 2009(日本語では「2009年包括公有地管理法」と訳されるようだ)と呼ばれるもので、この法案の中で最も注目しているのが、保護地域の拡大だ。インターナショナル・ウルフ・センターの記事によると、カルフォルニア州、コロラド州、アイダホ州、ミシガン州、ニューメキシコ州、オレゴン州、ヴァージニア州、ウエストヴァージニア州の国有地に新たに210万エーカーの保護地域を設置するというではないか・・・。

 日本の国立公園と違い、アメリカの場合、保護地域に指定されると、そこでの経済活動は大幅に制限される。ホテルやお土産屋など、一部の観光事業は許されるものの、農林業や鉱物の採掘業などは厳格な規制を受けることになり、ほぼ不可能になると言っていい。つまり、こうした保護地設定は、経済活動への打撃に当たるのだ。

 実際、インターナショナル・ウルフ・センターの記事でも、「土地をエネルギー産業に利用しようとしている者たちにとっては失望となった」と論評している。

 現在のような経済危機の真っただ中にあっては、経済刺激策一辺倒になりがちだと思えるが、OPLMへのサインを考えると、オバマ政権が、経済刺激策としての環境政策にのみならず、純粋に環境保全を行うための政策を実施しているという点は大いに評価できるだろう。

 この点で、前述の私の疑問(というか危惧)は一応払拭された。今後のオバマ政権の環境政策に期待したい。

http://www.wolf.org/wolves/news/live_news_detail.asp?id=4080

 ではでは・・・。

ドバイが世界初のクローンラクダの誕生を発表!

 伝統的な育種技術だけでなく、家畜生産にクローン技術を利用することは、単に量的な生産性を高めるだけでなく、優良な個体の形質を維持することに意味があるんだと、私は考えている。

 例えば、ロスリン研究所が、世界初の哺乳類の体細胞クローンであるクローン羊のドリーを生み出したのも、特定のタンパク質を含む乳を出すように遺伝子組み換えを行った羊を大量生産するという、産業応用的な目論見が関わっていた。

 たとえ遺伝子組み換えにより、優良な個体を作り出しても、その個体が普通に繁殖させれば、優良な遺伝子が子供にも受け継がれるかどうかはわからない。これでは、個体ごとに遺伝子の改変を丘縄なければならない。その点、クローン技術を応用すれば、確実に優良な遺伝子を、親(細胞提供者)から子(クローン)へ受け継がせることができるため、動物を薬品工場として特定のたんぱく質を作らせるといった産業応用を可能にするには、クローン技術は必要不可欠なものとなる。

 もちろん、遺伝子組み換えを行わない場合でも、上質な肉質を生産できるブランド牛の中でも、とびきりの個体(チャンピオン牛など)の形質を確実に受け継がせるのにもクローン技術は有効だ。現在、優良な雄牛を種牛にして、精子を得て、それを使って仔牛を増やしているが、100%完全に親牛の形質を受け継ぐとは限らないため(逆にもっと優良な仔牛なる可能性もあるが・・・)、遺伝的には100%同じ個体を得られる、クローン技術は有効だと考えられているのだ(結果、どのような牛に育つかどうかは、飼育環境も影響するだろうが・・・)。

 そのため、イギリスのテレグラフ紙などで報じられている、クローンラクダの記事に接したときには、「なんだクローンにするの?」と疑問を感じたが、ラクダであっても、優良な個体の遺伝子を受け継がせるのが目的に、クローンラクダの研究が進められてきたようだ。

 テレグラフ紙によると、ラクダ複製センター(Camel Reproduction Center)と中央獣医学研究所(Central Verinary Research Laboratory)の研究グループは、2003年からラクダのクローン技術の開発を開始。その目的は、すぐれたレース用ラクダやミルク生産用ラクダの遺伝子を残すことにあったという。

 ただし、今回、誕生したクローンラクダの遺伝子は、食肉用に屠殺された“普通”のラクダから得られたようで、卵巣細胞からDNAを抽出し、代理母から取り出した卵子に移して移植したという。テレグラフ紙では、“recostructed embryo”という言葉を使っているが、これは屠殺されたラクダのDNAを、代理母の卵子に移植したことで作られた胚のことを指しているのだろう。

 このラクダに対するクローン技術が、これからどのような形で産業応用されていくのかについては、今後の動向を見守るしかないが、これまで作られてきたクローン動物が短命であるといった問題を抱えているだけに、クローンラクダにも同様の問題が生じるかどうかなどについてもきんちと報告していってもらいたい。

http://www.telegraph.co.uk/scienceandtechnology/science/5152458/Dubai-claims-worlds-first-cloned-camel.html

 ではでは・・・。

2009年4月14日 (火)

日本の科学研究費、対GDP比では世界一ってホントか?

 科学の研究を進めていくために絶対必要なもの・・・。それは研究費である。

 研究ツールやサンプルの調達から、研究者の人件費に至るまで、研究費がなくては何にもできない。そのため、政府がどの程度の科学研究費を拠出するかが、その国の科学技術の行く末を占っているといっても過言ではない。

 その点で、興味深い調査結果が、総務省統計局のサイトにアップされているので紹介したい。

 それは科学技術週間(4月13日~4月19日)にちなんで紹介されたもので、昨年の科学技術研究調査の結果を紹介しているのだが、注目すべきは各国の科学研究費の対GDP比率だ。

 科学研究費の総額については、予想通り、アメリカが断トツ1位で43.4兆円で、日本は2位ながら、18.5兆円で、アメリカとは2倍以上に開きがある。これだけをみると、「日本の科学技術が遅れをとってもしかたがないな」と悲観的に考えてしまいがちだが、対GDP比率では、アメリカは2.66%で3位に甘んじ、日本は3.61%も拠出しており、世界一の座を獲得しているのだ。この傾向は、今に始まった話ではなく、件の統計局の記事に掲載されている対GDP比率の推移のグラフに示されている範囲(2002年~2006年)では、ずっと1位である。ちなみに2位は3.23%の韓国(2006年)。

 GDPを国の豊かさを示す指標であるわけだから、科学研究費を拠出については、日本は精一杯頑張っているといえるのかもしれない

 じゃ、日本の研究現場では、十分な予算があるのかっていうと、疑問を感じてしまうことが多い。

 普段、私が取材しているのは、研究費が潤沢そうな大御所の先生方よりも、30代から40代の若手の研究者が多いためか、多くの研究者が予算の不安を口にしている。「なんとか今は助成を得られたが、期限が切れた以降、今の研究を続けられるかどうかわからない」といった不安を口にする研究者が実に多いのだ。

 限られた予算の中での分配になるわけだから、誰もが潤沢な予算を得られるわけではないのは十分理解している。しかし、対GDP比で世界一の研究費の拠出実績があるとは思えぬほど、予算に困窮している研究者が多いのが実情なんではないか・・・。

 たまたま私が取材をした研究者が、有望な研究を行っていないため、研究費に窮しているとも考えられなくはないが、インパクト・ファクターが高いジャーナルに論文を発表している、つまり、有望な研究をしていると言える研究者でも同様の問題を口にしている者がいるのも否めぬ事実だ。

 こうした問題はなぜ起こっているのか・・・。

 今回の総務省統計局の記事では、この疑問を解き明かすことはできないため、今後、対GDP比世界一なんだから、潤沢であるはずの研究費の分配と、その成果についての再評価を知りたいものである。

 といっても、論文1件の研究費はいくら・・・なんて統計データが出てくるだけなんだろうなぁ。

http://www.stat.go.jp/data/kagaku/topics/topics38.htm

 ではでは・・・。

歯を支える歯槽骨をよみがえらせる歯科再生医療を開発!

 これまでの歯科医療では、虫歯を治すといっても、それは進行を止め、詰めものをするだけ。医療行為の結果として、歯を再生することはなかった。歯根や歯槽骨の周囲に細菌が感染し、炎症が起こり、歯槽骨が溶かされてしまうと、たとえ、歯槽骨に支えられた歯が十分に機能するものであっても、歯を失うことになっていた。そのため、入れ歯を入れるか、インプラントを行うことが多かった。

 ところが、4月12日付の徳島新聞に、歯をよみがえられる可能性を示した興味深い記事が掲載されている。

 この研究成果を発表したのは(というか、発表するのは、30日から開催される国際学会でということだが・・・)、徳島大学社会人大学院で学ぶ、歯科医の富永敏彦さんで、徳島新聞によると、歯の神経を抜く際に実施する電磁波の照射にある殺菌効果に注目し、歯根周辺で活用できないかと思い、利用研究を進めてきたという。

 その結果、電磁波に殺菌効果だけでなく、骨を作る骨芽細胞を活性化することも確かめた。一か月程度で1~2ミリの歯槽骨が再生というのだから、これは注目に値する治療効果ではないか・・・。

 私自身、興味を持っているのは電磁波を医療行為に活用したという点にある。

 電磁波の医療応用では、肝臓がんを対象にして、電磁波を照射して、がんを焼く、マイクロ波焼灼療法、ラジオ波焼灼療法が実用化されているが、こうした利用は電磁波の照射によって加熱しているわけで、原理的には電子レンジと同じだ。

 その点、今回、発表されるという電磁波照射による歯槽骨の再生は、電磁波を加熱のために用いるのではなく、細胞の活性を高めることに利用しているだけに興味深い。

 このような研究成果は、ほとんど聞いたことがないが、昨年9月に、広島大学病院の越智光夫病院長が、電磁波を用いて骨の再生を促す治療技術を開発したことを産経新聞が報じている(※)。

 こちらの方法は、MRIの造影剤として利用される鉄粉を加えた培養液で、患者から採集した骨髄液に含まれる間葉系幹細胞を培養し、細胞内に鉄粉を取り込ませることから始められる。鉄粉を取り込んだ幹細胞を作り、これを患者の患部に移植する際、骨や軟骨が欠損した場所に電磁波を照射して、幹細胞の中の鉄粉が磁力で引き寄せられ、骨、軟骨の欠損部分に集中し、組織の再生を促していくというのだ。

 これら電磁波を活用した治療法は、その方法が大きく違うため、一括して語ることはできないと思うが、細胞を破壊したり、殺菌するのではなく、細胞をコントロールするためのツールとして電磁波を利用している点は興味深いし、こうしたアプローチの研究はもっと進められてもいいんじゃないかと思う。

 一般の方々の電磁波に対するイメージはというと、「IH電磁調理器で体調を崩すのではないか」、「高圧送電線の下に住んでいるとがんになるんじゃないか」といった健康影響が心配されたり、電磁波過敏症が云々されているわけで(私は一部の方々が過剰に反応しているだけだと思うが・・・)、医療技術に利用されるのは抵抗があるかもしれない。

 しかし、ここに紹介した2件のような利用は注目に値するし、効能、安全性が十分に確認され、情報公開がなされれば、電磁波だからといって拒絶されるものではないだろう。

 アイデア次第では電磁波のもっと違った利用方法があると思えるのだが、いかがだろうか・・・・。

http://www.topics.or.jp/localNews/news/2009/04/2009_123949945524.html

http://sankei.jp.msn.com/life/body/080911/bdy0809111052001-n1.htm(※)

 ではでは・・・。

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2009年4月13日 (月)

15年かけてオオサンショウウオの指が完全再生

 2年ほど前、タガメの取材のため姫路市立水族館に出向いたことがある。今、流行の水族館では定番になっている巨大な水槽はなく、こじんまりとした水族館ではあったが、小さな子供を連れたファミリーには人気があるのか、日曜日の取材ということもあって、館内はけっこう混雑していたことを覚えている。

 その姫路市立水族館で、約20年間、飼育されているオオサンショウウオについて、4月11日付の産経新聞が興味深いニュースを報じている。

 このオオサンショウウオは水族館生まれの個体で、5歳の時に仲間(同じオオサンショウウオなんだろうな)との喧嘩で、右前肢上腕骨の先が食いちぎられた。ただし、その後、約15年かけて、再生したと報じられているのだ。X線撮影したところ、4本の指の骨がすべて元通りになっていることも確かめられ、完全に再生したという。

 再生医療や細胞工学に詳しい方であれば、イモリには高い再生能力があり、四肢を欠損しても、骨まで元通りに再生することはご存知のことと思う。

 そのため、同じ有尾目に属するということだけで、不勉強にも、私は、オオサンショウウオの体にも同様の再生能力が備わっていると思っていた。ところが、産経新聞の記事によると、オオサンショウウオの四肢が再生したという報告はこれまでなかったという。再生能力はゼロではないにしても、失われた四肢を完全な形にまで再生することは稀だということなのだろう。

 ならば、なぜ、このオオサンショウウオは、失われた右前肢を完全に再生させることがきたのだろうか。

 産経新聞の記事では、オオサンショウウオの生態に詳しい、元姫路市立水族館館長の栃本武良氏の「条件さえよければ欠損した指が完全に再生されることがわかった」というコメントを紹介している。

 この「条件」は、餌が十分に与えられていることを指さしていると思うが(温度条件考えられるが・・・)、私が気になることは、餌が十分であるという環境条件が何に作用して、再生を促したのかってことだ。

 再生するかどうかは、その個体の体に、(1)多分化能と、(2)高い分裂能を有した細胞があるかどうかによって決まってくると思う。多分化能については、未分化の細胞、つまり、幹細胞が有無によって決まってくるのだろうが、高い分裂能については栄養が豊かかどうかが大きく影響するだろう。不死化して、無尽蔵に増えるはずのがん細胞でも、栄養が滞れば、細胞分裂のスピードは鈍化するわけで、栄養が豊富だからこそ、このオオサンショウウオも前肢を完全に再生することができたんじゃないか。

 だったら、オオサンショウウオの再生能力は環境次第で、コントロールできるとも考えられるだろう。

 つまり、環境条件一つで、再生するか、しないかが決まるなら、オオサンショウウオを実験材料に使えれば、がい再生するかどうかを決める何らかの因子を見つけることができるんじゃないかって期待をもってしまうのだが・・・。富栄養条件で四肢が再生できるようになったオオサンショウウオと、貧栄養条件で四肢が再生できなくしたオオサンショウウオで、細胞中の分子の発現を調べると、再生するかどうかを決定する因子が見つかったりするんじゃないかなんて考えちゃったわけだ。

 まぁ、軽々しく「実験材料」なんて言葉を使っているが、相手は国の天然記念物。イモリやアフリカツメガエルのように実験動物として扱うことは不可能だろうが、この産経新聞の記事に触れて、こんなことを考えてしまった・・・。

http://sankei.jp.msn.com/science/science/090411/scn0904111443002-n1.htm

 ではでは・・・。

恐怖の記憶は消し去ることはできるのか?

 先週のScience誌(4月3日号)に、“Extinction-Reconsolidation Boundaries:Key to Persistent Attenuation of Fear Memories”と題された論文が掲載されている。日本語に訳するのは難しいのが、ここは強引に意訳すると、「いかにして恐怖の記憶を消し去るのか?」ってことになるだろうか。

 この論文を発表したのは、テキサス大学心理学部のマリー・モンフィリス助教授の研究グループで、彼女はニューヨーク大学神経科学センターにも所属しているようで、共同執筆者には同センターの研究者が名前を連ねている。

 研究グループが行った実験では、まずラットに音を鳴らした後、電気ショックを与えた。この結果、ラットは、その音を聞くと、電気刺激によってもたらされた恐怖の記憶を呼び覚ますようになったという。

 さらに、研究グループは、この恐怖記憶が鮮やかに残っているうちに、電気ショックを与えずに、問題の音を長時聞かせることも行った。すると、恐怖の記憶は不安定になることが示されたという。この方法なら恐怖の記憶を呼び覚まさずに済むしょうになるため、この研究成果は、薬品を使わないでも恐怖の記憶を減衰させる治療につながるんじゃないかって書かれているようだが(※)、おいおい本当かよ?

 この研究で行ったことは、恐怖の記憶に結びつく事象を、恐怖を伴わない状況で提示し続け、恐怖を呼び覚まさないようにしたってことだけだろう。

 しかし、通常、人間が精神疾患に至るほどの恐怖感を味わった場合、恐怖の根源(ラットの実験では「電気ショック」)と恐怖を呼び覚ます事象(ラットの実験では「音」)が、ラットに行った実験のように明確に区別されていることなんてまずないんじゃないか。

 ちょっと極端な例かもしれないけれど、ヤクザに怒鳴り散らされた経験があったとしよう。その経験が恐怖の記憶となって、何らかの精神疾患になったとして、じゃ、この患者に恐怖の刺激を与えずに提示するもの(ラットの実験では「電気ショックなしの長い音」)は何になるのだろうか。これがわかれば、苦労はしないんじゃないか。

 無理矢理、ヤクザを連れてきて、「ボクって本当は怖くないんだよ~ん」なんて言わするなんてことができたら、これは直接的な恐怖の原因を減滅させることになるから、有効なんだろうけど、恐怖の記憶の根源が、本当は恐怖ではないなんてことを提示するのは、このヤクザに脅されるという作り話を持ち出さなくても無理な話だってことはわかるだろう。

 まぁ、こういう心理学的な研究は、現実に起こっていること、できることとは関係なく、作られた実験条件の中で、何が言えるのかってことを考えるものだろうから、この論文内容を全否定するつもりはない。しかし、アブストラクトの文末にあり、人間の治療にも生かせるかも・・・っていう表現については、「ちょっと無理なんじゃないの?」って思ってしまうのだが・・・。

※この部分は、若干、意訳しているので、正確な文章を引用しておくと、アブストラクトの文末は「This procedure permanently attenuates the fear memory without the use of drugs」と締めくくられている。

Science誌のアブストラクト

http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/1167975

 ではでは・・・。

2009年4月12日 (日)

大阪大学がiPS研究センターを設立 再生医療への応用を目指して

 ここのところiPS細胞の実用化について、まずは創薬スクリーニングからになるってことを何度か書いてきた。

 そのこと自体は間違いはないと思うが、一方で10年後、20年後になってしまうかもしれないが、次世代の医療技術の発展を考えて、再生利用への応用を目指した研究にも十分な予算を配分してもらいたいと書いた。

 そういう意味では、今後の研究の進展に期待が膨らむ、一つの動きがあった。4月10日の毎日新聞が報じているのだが、大阪大学病院がiPS細胞の研究組織「ヒトiPS細胞臨床研究センター」を設立したのだ。

 毎日新聞によると、拡張性心筋症の患者の心筋細胞からiPS細胞を作り、遺伝子の異常と病気との関連を研究するようだ。糖尿病や肝臓病の患者から細胞の提供を受けて、iPS細胞を作成し、効率より肝臓、膵臓といった望みの臓器の細胞に分化させ、病気の原因解明を目指すという。

 う~ん、さすがに、iPS細胞から必要な臓器を作って患者の体に戻す再生医療の実現を目指しますとまでは言えないか・・・。まぁ、今、こんな宣言しても、理想の理想すぎで、現実味はないものなぁ。もちろん、研究者のみなさんは、それを目指しているのは間違いなんだろうけど・・・。

 ただ、このセンターの設立に関わっているのが、心臓血管外科の澤芳樹教授であることで、私の期待は大きく膨らんでしまうのである。

 残念ながら、私自身は、未だ澤教授を取材する機会に恵まれていないのだが、澤教授はマウスの細胞から作ったiPS細胞を心筋細胞に分化誘導し、心筋シートを作って、これを移植することで、心筋梗塞のマウスの心肺機能を回復させることに成功したという実績を持っている。これでは期待せずにはいられないってものだ。

 とはいえ、これまでiPS細胞の研究では、iPS細胞の産みの親である山中教授のいる京都大学はトップランナーであるのは言うまでもないとして、文部科学省が定めた中核拠点では京大のほか、東京大学、慶応義塾大学、理化学研究所が選ばれており、大阪大学は少し影が薄いという印象を持っていた(失礼を承知書かせていただいています。すみません)。

 もちろん、拡張性心筋症の治療を目的としたiPS細胞を使った再生医療を目指した研究を進めていることは、去年から紹介されているのを見たことはあるが、こうしてセンターを設立したことで、研究をより加速していってもらいたい。

 以前にも書いたことだが、創薬スクリーニングでも、iPS細胞を実用化できたということは、実に意義深いことだといえる。

 しかし、山中教授が臨床医を辞めて、研究者になったのは、真に患者を治せる治療技術を確立したいという想いがあったからだということを考えると、やはり再生医療としての実用化を願うばかりだ。

 創薬スクリーニングであっても、患者を治すための新薬の開発の一助になることは十分に理解しているが、新薬の開発であれば、iPS細胞がなければ何もすすまないというわけではないだろう。ならば、iPS細胞なくては始まらない、患者自身の細胞を使った再生医療という理想に向けて、がんばっていってもらいたい。

 今回の大阪大学病院でのセンター設立の報を受けて、今一度、そんなことをかんがえてみた。

毎日新聞の記事

http://mainichi.jp/select/science/news/20090410k0000m040160000c.html

2009年1月24日の日経の記事

http://health.nikkei.co.jp/news/med/index.cfm?i=2009012405276hb

 今回は、ちょっと熱くなってしまいました。すみません。

 ではでは・・・。

2009年4月11日 (土)

日本国内のコアラの短命はウイルス感染が原因か?

 その愛くるしい姿から、動物園では人気者のコアラだが、今、そのコアラに問題が発生していると、今朝(4月11日)の毎日新聞が報じている。

 全国の動物園で飼育されているコアラの9割近くに、レトロウイルス(コアラレトロウイルス KoRV)が感染しているというのだ。これが原因でリンパ性白血病などの病気を発症する危険性があり、日本の動物園で飼育されているコアラが短命なのは、このレトロウイルスの感染が原因ではないかと考えられているという。

 これまでに調査が行われたコアラは50頭で、オーストラリアでこのウイルスの感染が広がっているオーストラリア北東部出身のコアラ(日本で生まれた子孫も含む)では全頭で、南東部出身のコアラ(同)では11頭中、4頭でウイルスの感染が認められた。

 ならば、今後、レトロウイルスの対策が求められるところだが、気になったのが、日本だけでなく、オーストラリア北東部の個体群でも、レトロウイルスの感染が広がっているにも関わらず、日本国内のコアラはオーストラリアのものよりも短命の傾向があるという点だ。

 この記事では、レトロウイルスについての詳しい情報が紹介されていないので、なんとも言えないが、日本における感染源は、オーストラリアでキャリアとなったものが日本に輸入された個体だろう。

 ということは、日本のコアラに感染しているレトロウイルスがオーストラリアのものに比べ強毒性ということではないだろうから、日本のコアラのほうが短命だということは、どのように説明できるのか?

 記事では、「レトロウイルスの感染」→「白血病などの病気の発症」→「だから短命」というロジックで書かれているのだが、レトロウイルス感染が広がっているという状況はオーストラリアも同じであるわけだから、日本のほうが短命である原因をレトロウイルス感染に求めることはできないんじゃないか。

 オーストラリアでは北東部でだけレトロウイルスの感染が広がっていると書かれており、南東部での状況は示されていないことから、深読みすれば、オーストラリアのコアラの寿命のデータは、レトロウイルスの感染が広がっている南東部の個体群でのデータだけでなく、レトロウイルスの感染が広がっていない南東部個体群のデータも合わさっているため統計的に寿命が長くなって、南東部由来の個体にも感染が広まってしまった日本では、統計的に短命になっているということも理解できるのだが・・・。どうなんだろうか。

 やはり、レトロウイルスの感染以外にも、日本の動物園の飼育環境に、コアラ短命の原因があるのだろうか。

 ちなみに、コアラのレトロウイルス感染の問題は、2007年ぐらいから報じられているだけに、早急な対策を期待したい。

毎日新聞の記事

http://mainichi.jp/select/today/news/20090411k0000m040156000c.html?link_id=RTH05

 ではでは・・・。

ビーチコーミング、楽しんでみませんか

 今回は、ちょっと宣伝させてください。

 昨日から書店に並んでいる「子供の科学」2009年5月号で、ビーチ・コーミングの記事をかいております。

 ビーチ・コーミングは、海岸に打ち上げられた漂着物を、くし(コーム)ですくうように拾い歩くことから、この名が付いたアウトドア・アクティビティで、日本でも愛好家がけっこういます。

 遊びといえば、遊びなんですが、日本は近海には、黒潮、対馬海流、日本海流などの大きな海流が流れているため、その影響で様々な漂着物が見つけられ、漂着物を研究テーマとしている方々もいらっしゃします。

 今回の取材では、神奈川県、葉山の海岸を歩いたのですが、取材に先立ち、個人的に千葉県、房総半島の海岸をいくつか歩いてみました。すると、30分もたたずに、いろんなDsc_2687_2 ものが拾えるものです。各種貝殻はもちろんのこと、コウイカの骨、サメ・エイ類の卵の殻などなど・・・(写真)。

 というわけで、この週末、海に出掛けてみようかなと思っていらっしゃるなら、この記事を読んで、ビーチ・コーミングの楽しんでみてはいかがでしょう。

 「子供の科学」は小中学生向けの科学雑誌ですが、大人向けの科学雑誌と変わらぬ、科学的な視点をもって、紙面づくりをしておりますので、ただの遊びとはちょっと違う、自然を知るためのビーチ・コーミングの入門編になるんじゃないかと自負しております。

 この他、短めのニュース記事をいくつか書いておりますので、こちらも併せてご一読いただければ、幸甚です。

 ではでは・・・。

二酸化炭素の回収貯留技術って実用化できるんだろうか?

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では、隔週で「NEDO海外レポート」を発表しており、仕事がら、定期的にチェックしているわけだが、今週公表された1042号は地球温暖化特集だった。

 その第一項目で「CO2回収・貯留(CCS)関連の政策及び技術動向(世界)」と題されたレポートがあった。CCSとは、Carbon Capture and Storageの略称で、二酸化炭素を分離回収しCo2 て、地中や海中の貯留することで、地球温暖化を防止する技術である(図)。

 現在の地球温暖化対策が排出抑制に限定されており、それがなかなか効果を示していないことを考慮すると、二酸化炭素を集めてきて、地中や海中に封じ込めてしまえるなら、CCSへの期待は膨らむばかりだ。

 日本でも地球環境産業技術研究機構(RITE)が中心となって、CCS技術の研究開発を進めており、新潟県長岡市のガス田で二酸化炭素を地中に封じ込める実証試験が行われた。

 私がRITEでCCS技術について取材をさせていただいたのは、2004年に発生した新潟県中越地震の後だったが、あれだけの地震があっても、地中に封じ込められていた二酸化炭素が地上に出てくるようなことは確認されなかったという。

 また、NEDO海外レポートでは、海外でのCCSの研究開発の動向が紹介されており、ノルウェー、カナダ、アルジェリアでの事例が紹介されている(1043号に続編が掲載されるようなので、これ以外の国でもCCSの研究開発は進められていると思うが・・・)。

 ただし、CCSに対する期待は大きくとも、実用化にあたってのコストの問題が気になるところだ。CCSは、直接、大気中の二酸化炭素濃度を減らす技術になりうるわけだが、あまりにもコストがかかりすぎては、実用化は難しくなるだろう。

 そこで、CCSのコストについて調べてみたら、RITEが日本国内でのCCSのコストは二酸化炭素1トン当たり7300円であるとの試算を発表している(※)。

 この二酸化炭素1トン当たり7300円ってコストって高いのか、安いのか・・・。

 もちろん、将来の本格的に実用化させていくためには、コストダウンが必要不可欠だと思われるが、現状の7300円というのはなかなか評価しにくい数字だ。

 京都議定書の基準年の1990年時点での日本の温室効果ガスの排出量は約12億3000万トンだといわれている。この排出量の6%を削減しなければならないわけだが、1%分だけをCCSが担うとすれば、1230万トンを処理することになり、そのコストは約900億円必要となる。

 しかし、2003年の排出量は13億3900万トンにまで増加している以上、CCSが処理しなければならに二酸化炭素はもっと増える可能性があるが、排出権(CER)の取引で帳簿上の排出量を抑制することを考えれば、コスト的には、まぁなんとかやれない金額ではないだろう。

 いずれにしても、大幅なコストダウンは求められるわけで、今後のCCSの研究開発に期待したい。

NEDO海外レポート1042号

http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/1042/index.html

RITEのCO2貯留研究グループのサイト

http://www.rite.or.jp/Japanese/labo/choryu/choryu-frame.html

RITEのCCSに関する「研究評価(技術戦略マップ)」(平成19年度)(※)

http://www.rite.or.jp/Japanese/kenki/koubo/map2008/map2008.pdf

 ではでは・・・。

2009年4月10日 (金)

脂肪幹細胞を使った血管の再生医療 臨床試験が始まる

 幹細胞というと、近年、多分化能(いろいろな臓器、組織になれる能力)をもったiPS細胞やES細胞への注目が集まりがちだが、再生医療への応用という意味では、成人の体の中にも存在する体性幹細胞を活用したもののほうが早く実用化されることだろう。

 そうした体性幹細胞の一つ、皮下脂肪にある脂肪幹細胞(※正確には脂肪組織由来幹細胞(ADSC)という)を使って、患者の血管を再生しようとする臨床試験が、信州大学を中心に実施されることになったと、信濃毎日新聞が伝えている。

 臨床試験の対象となる患者は、末梢性閉塞動脈疾患の重症患者。信濃毎日新聞では詳しく伝えていないが、糖尿病などが原因で動脈硬化の症状が進むと、末梢の血流が滞り、潰瘍や壊死を起こし、ひどい場合は四肢の切断が必要となる。そこで、血管再生効果をもったADSCを、血流が滞った患部に注射して、血流を回復させようとするのが、この再生治療の“肝”だ。

 ADSCの採取については、患者の皮下脂肪を100~300g取り出して、ここからADSCを分離するという。ADSCの分離は、信州大学とともに共同研究を進めてきたアメリカのバイオベンチャー、サイトリ・セラピューティックスが開発した機器によって行われるという。

 皮下脂肪の採取は局所麻酔によって行われ、脂肪の採取から、ADSCの分離、患部への注射までの一連の過程は数時間で済むというので、患者に対する負担は少なそうだ。

 肝心の血管再生については、今後3年間をかけて、信州大学のほか、名古屋大学、熊本大学、福岡特集会病院の4施設で、計40人に実施して確かめていくが、これまでに実施されたマウスを用いた実験では、ADSCにより血管が再生されていたという。

 4月中に厚生労働省に申請する予定だが、末梢閉塞性動脈疾患については、大阪大学発のバイオベンチャー、アンジェスMGが幹細胞増殖因子HGFを用いた遺伝子治療(でもあり、再生医療)の製造販売の承認申請を行っており、2009年中には認可されるのではないかと言われている。それだけに競合する技術になるであろう、信州大学の再生医療技術の効果についても注目していきたい。

信濃毎日新聞の記事

http://www.shinmai.co.jp/news/20090401/KT090331LVI090011000022.htm

サイトリ・セラピューティクスの日本法人のウェブサイト

http://www.cytoritx.com/japan/index.html

 ではでは・・・。

これってiPS細胞の実用化ってこと?

 4月2日のぶろぐで、iPS細胞の実用化は、まず新薬開発のための薬効試験(創薬スクリーニング)などに使われることで始まるんじゃないかってことを書いた。

 大学など、実用化をあまり考えないでいい研究機関では、10年後、20年後っていうずいぶん先のことを考えて、再生医療への応用を模索できるわけだが、民間企業ではそんな悠長なことは言っていられない。

 まず、新薬開発の研究でも使えるなら、はやく実用化させてしまおうということなわけだが、4月8日、9日に、複数のメディアが、京都大学が民間企業2社とiPS細胞に関する特許契約したことを伝えている(正確にはiPS細胞の特許を管理するiPSアカデミアジャパンが民間企業2社との契約締結)。

 契約を結んだのはバイオベンチャーのタカラバイオとリプロセル。

 タカラバイオはiPS細胞を高効率に制作するための試薬の製造、販売と、iPS細胞の受託作成を行うという。

 また、リプロセルはiPSから新規細胞(心臓の筋肉の細胞)を作って販売するほか、新薬候補の化合物が心筋細胞にどのような影響を及ぼすのかを調べる受託研究をおこなていくようだ。

 いずれにして、再生医療のための研究いうより創薬スクリーニングでの実用化問い終えるだろう。ということは、マウスでのiPS細胞樹立の発表から、3年を絶たずして実用化したってことになる。夢の再生医療への応用は、まだまだ先の話になりそうだが、創薬スクリーニング用とはいえ、実用化にまでこぎつけたのは大いに評価したい。iPS愛あで見亜ジャパンでは、この他10社と契約締結に向けた交渉を進めているようなので、近いうちに同様の続報がもたらされるだろう。

 iPS細胞の産みの親である山中伸弥・京都大学細胞統合システム拠点iPS細胞研究センター長(長い肩書だ)の公演は、これまでに何度か聞いたことがあるが、メディアのインタビューを受けて「数年以内に実用化させたい」と言ったのを「再生医療での実用化」と勘違いされてしまったというようなことを話されていたことがあった。

 まぁ、「創薬スクリーニングのための・・・」と言ってもうまく伝わらないのは仕方がないとしても、一口に「iPS細胞の実用化」といっても、必ずしも一般向けに喧伝されることが多い再生医療への応用とは限らないってことは認識しておいたほうがいいと思うのだが・・・。

 いずれにしても、今回の民間企業2社との契約締結で、iPS細胞の実用化はぐっと近づいたってことになるんだろうが、国際特許はどうなっているんだろう・・・?。

ネタ元の記事

http://www.asahi.com/edu/news/OSK200904080105.html

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20090408-OYT1T00928.htm

http://mainichi.jp/select/science/news/20090409k0000m040135000c.html

http://sankei.jp.msn.com/science/science/090408/scn0904081910002-n1.htm

http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2009040800190&genre=G1&area=K00

http://www.47news.jp/CN/200904/CN2009040801000502.html

 ではでは・・・

2009年4月 9日 (木)

国際宇宙ステーションの施設にコメディアンの名前が!!!

 国際宇宙ステーションの施設には、それぞれ名前が付けられている。日本の実験施設には「キボウ(希望)」と名付けられているのは有名だが、ロシアの居住モジュールには「ズヴェズダ(星)」、アメリカの実験モジュールには「ディスティニー(運命)」という名が付けられるなどしている。

 こうした命名は、モジュールの開発を担当した機関(日本ならJAXA)が一般公募するなどして行われるわけだが、これから作られる新しい施設(NODE3 トイレのようだ)の名称についてNASAが公募を行った。

 この公募は、自由に名前候補を応募させて、NASAが選ぶというやり方ではなく、事前に「レガシー(遺産)」、「ベンチャー(冒険)」などのいくつかの候補を挙げておき、参加者はそれらの候補を選んで投票するという方式がとられていた。

 ただし、自由に名前を書く欄も設けられていたのだ。その結果、圧倒的多数のThe_colbert_report 投票を得て、アメリカのコメディアン、スティーブン・コルベア(写真)のファミリー・ネーム「コルベア」が堂々の1位になってしまったことを複数のメディアが伝えている(以下のURLをご参照ください)。

 日本では、ほとんど知られていないが、このスティーブン・コルベアは、アメリカのコメディ専門のケーブル&衛星テレビ局の「コメディ・セントラル」に、『コルベア・リポート』という番組を持っている。このことだけなら、他の多くのコメディアンとあまり違いはないように思えるが、この『コルベア・リポート』では、保守論客を演じつつ、ジョージ・W・ブッシュ前アメリカ大統領をホメ殺すことで、痛烈に批判するという、なかなか痛快なことをやってくれているのだ。

 しかも、ホメ殺しを真に受けた(ほんとかよ?)、ホワイトハウス記者クラブ主催のブッシュ大統領をねぎらう晩餐会に招待され、スピーチをするっていうことまでやってのけたのである。当然、このスピーチもホメ殺しによるこきおろしであって、なかなか笑わせてくれる。

 この時の映像は、今でもYoutubeにいくつかアップされているので、ぜひ見ていただきたい。英語のヒアリング能力が拙い私でも、ブッシュの表情だけを映し続けたもの(※)はなかなか笑える。生憎、この映像のコルベアのスピーチ音声が消され、BGMに差し替えられているのだが、当初は笑顔でコルベアのスピーチを聞いていたブッシュの表情が徐々に強張っていくのが手に取るようにわかる。

http://www.youtube.com/watch?v=qa-4E8ZDj9s

http://www.youtube.com/watch?v=MOYZF3It848

http://www.youtube.com/watch?v=iAvFM4TYQKU

http://www.youtube.com/watch?v=X-oMlBSiX3g(※)

 ちなみに、このホワイトハウス晩餐会でのコルベアスピーチ事件(?)については、映画評論家でコラムニストの町山智浩さんが、自身のブログで紹介し、彼のコラム集でも紹介している。特に2006年4月29日のブログ(※※)では、スピーチの日本語訳がアップされている。コラム集については、去年から今年にかけて何冊か出たコラム集は全部読んだので、どのコラム集に出ていたのか思い出せない。仕事場の書棚ではなく、自宅の書棚に置いてあるため、また確認して紹介する。

http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20060429(※※)

http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20060516

 こういう痛快なコメディアンの名前がISSのトイレの名前の第一候補になるっていうのも、痛快である。まぁ、日本でいうところの、“祭り”ってことなんだろうが、コルベアを選ぶあたりにはなかなかセンスを感じさせる。

 投票の結果、1位になったからといって、そのことで自動的にトイレの名前に決定・・・ということではないようだが、NASAでは前向きに検討しているという。

 国際宇宙ステーションのトイレがコルベアなら、ごみ箱にはブッシュって名前をつけてほしいんだけど・・・。

ネタ元の記事

http://www.msnbc.msn.com/id/29863574/

http://www.space.com/entertainment/090324-colbert-space-toilet.html

http://www.foxnews.com/story/0,2933,512023,00.html

http://www.asahi.com/science/update/0408/TKY200904080060.html

 ではでは・・・。

オルドビス紀末の大量絶滅はガンマ線バーストが原因か?

 人間による環境破壊がなくたって、これまでに地球上に出現した生物のほとんどは絶滅してきた。ただ、断続的に絶滅しているのではなく、過去、地球における生命の歴史38億年において、5回の大量絶滅があったことが知られており、「ビッグ・ファイブ」と呼ばれている。

 例えば、6500万年前、白亜紀末に恐竜が絶滅したことがよく知られているが、これもビッグ・ファイブの1つだ。その恐竜の絶滅の原因については、様々な説が提唱されており、最も有力なのはメキシコのユカタン半島に巨大隕石が落下したことによる気候変動説だが、植物相が変化して便通が悪くなった結果、糞が詰まって多くの恐竜が死んだなんて説もある。

 こうした過去の大量絶滅の原因の探索は、我々の科学的な好奇心を触発してくれるわけだが、National Geographic Newsに興味深い研究成果が載っているので紹介したい。

 約5億年前から約4億4000万年前まで続いた古生代オルドビス紀末期の大量絶滅がガンマ線バースト(イラスト)によって引き起こされたというのである。

Gunmaray_burst  ガンマ線バーストというのは、質量の大きな星が崩壊したことで、高エネルギーの放射線であるガンマ線が閃光のように発せられる天体現象で、現在でもしばしば観測されている。

 このガンマ線バーストが、太陽系の近くの恒星系で起これば、大量のガンマ線が地球に降り注ぐことも考えられるわけで、アメリカのウォッシュバーン大学天文物理学部(Department of Physics and Astronomy)のブライアン・トーマス博士(※)は、コンピュータ・シミュレーションにより、6500光年以内で発生したガンマ線バーストにより、大量のガンマ線が地球に届き、オゾン層を破壊。地球を寒冷化させたと考えているようだ。

 トーマス博士は、直接的に当時の生物の多くの絶滅においやったのは気候変動としているわけだが、大量のガンマ線が地球に降り注げば、同時に当時の生物の遺伝子に損傷を加えたことも考えられる。

 それが致死的な損傷だったかどうかはさておき、遺伝子に損傷が加わるってことは、通常では考えられない速度で変異が進んだとも推測できる。ということは、オルドビス紀末に起こった大量絶滅の原因はガンマ線バーストだったかもしれないが、ガンマ線バーストは、この大量絶滅を生き残った生物たちのその後の進化を促したってことにもなりはしないだろうか。

 一部にガンマ線バーストによってもたらされるガンマ線を含めた、宇宙線が生物の進化を推し進める役割を担ったと提唱している研究者もいるようなので、単に大量絶滅の原因がガンマ線バーストだって・・・というだけでなく、もう一歩踏み込んで生物の進化をドライブしたのは何かってことまで考察してみると思いろいんじゃないだろうか。

 ちなみに、この話題は、以前からNASAのウェブサイトでも紹介されているので、ご興味のある方は、こちらも併せてご覧いただきたい。

※彼のウェブサイト(http://www.washburn.edu/faculty/bthomas/)で肩書きを確かめたが、Assistant Professorになっている。これって今の日本の肩書きでいえば、「准教授」じゃないよなぁ。准教授ならAsociete Professorのはずだし・・・。というわけで「博士」野肩書きで紹介した。

National Geographic Newsの記事

http://news.nationalgeographic.com/news/2009/04/090403-gamma-ray-extinction.html

http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=54952751&expand(日本語)

NASAの記事

http://www.nasa.gov/vision/universe/starsgalaxies/gammaray_extinction.html

※上のイラストは、以下のNASAのサイトより引用させていただきました。

http://www.nasa.gov/mission_pages/GLAST/science/gammay_ray_bursts.html

 ではでは・・・。

皆既日食ツアー、ちょっと高すぎやしねぇか?

 ご存知の方も多いと思うが、今年の7月22日、日本では46年ぶりに日食が見られる。

 といっても、皆既日食になるのは、トカラ列島の悪石島を中心に、屋久島の北部、種子島の南部を北限、奄美大島の名瀬付近を南限とする範囲だけで、陸地はごくわずかしかない。

 今回の日食は、インドや中国などの人口の多い地域でも皆既日食が観測できるので、近年、まれに見る多くの人間が見られる皆既日食ではあるものの、こと日本においては、皆既日食が見られる範囲のほとんど海の上であるというのが残念でしかたがない。

 皆既日食を見ようと思えば、7月21日に現地に入り、トカラ列島の島々、奄美大島、屋久島の宿で泊まらなければならないが、当然、宿泊の予約は困難なものになるだろう。

 私自身、年明けすぐぐらいから、楽天トラベルなどの旅行関連の予約サイトを覗いて、皆既日食エリアの宿泊施設を予約できるかどうかチェックしているのだが、皆既日食エリアの宿泊施設はまったく予約できない状態が続いている。

 ついさっき、今一度、楽天トラベルで調べてみたら、7月21日チェックインで予約できるのは、与論島や徳之島など、皆既日食エリアから離れる島の宿泊施設ばかり・・・。

 結局、皆既日食というめったにないイベントということで、エリア内の宿泊施設は、すべて旅行代理店に押さえられているのだろう。

 じゃ、ツアーへの参加はどうかって調べてみると、近畿日本ツーリストなどがツアーを企画し、すでに販売しているようだが、これがけっこういいお値段なんである。宿泊施設の予約だけでなく、本州からの飛行機やフェリーも7月21日の便は、プレミアムチケットになるだろうから、それなりの値段になってもしかたがないと思うのだが・・・。

 例えば、近畿日本ツーリストのツアーで、東京発、東京着で、7月21日出発、25日帰着の4泊5日コースで242000円。ひぇ~、これなら海外旅行できるじゃないか。

 もっと安いコースはないかと思えば、鹿児島発、鹿児島着ながら、7月20日出発、7月23日帰着で、114500円~となっているが、これがなんとテント泊。しかも、安く抑えようとするとテントは自前で用意しなければならず、テントが用意されているコースだと14万円以上となる。1人での参加者用なのか、「相部屋」ならぬ「相テント」なんてコースもあるが、これは遠慮したい。

 こんな値段だから、当然、我が家はあきらめた。家族4人で宿泊施設に泊まるコースで出かければ、ツアー料金以外のもろもろ含めると、100万円を超えてしまうだろう。不景気のご時世、こうしたツアーに出かける人がいるのかどうか気がかりだが・・・。

 ただし、これまで書いてきたことは、あくまでも皆既日食の観測にこだわった場合のことであって、部分日食なら、日本でもかなり広い範囲で観測することができる。

 例えば、福岡まで出向けば、食分(太陽が欠ける割合)0.897の部分日食が見られる。皆既日食ではなくても、ほぼ9割も隠れてくれるんだから十分じゃないか。

 東京でだって食分0.749の部分日食が見られるわけで、関東以西にいれば、十分に部分日食を楽しめるだろう。できるだけ皆既日食エリアに近づけば近づくほど、食分は大きくなるし、部分日食の時間は長くなるので西へ移動するといいだろう。

 金払いの良いセレブリティの皆さんは、内需拡大にもつながるわけだから、大枚はたいてトカラ列島に出掛けてもらうとして、我々庶民は、本州、四国、九州で部分日食を楽しむことにしようか・・・・

 ちなみに、2035年9月2日には、本州の広い範囲で皆既日食が見られる。あと26年間は生きていられる自信があれば、次の皆既日食を待った方がよさそうだ。

近畿日本ツーリストの日食ツアーのサイト

http://www.knt.co.jp/eclipse/

国立天文台の2009年の日食に関するサイト

http://www.nao.ac.jp/phenomena/20090722/

 ではでは・・・。

2009年4月 8日 (水)

“クモの糸”の人工合成技術の開発に成功

 石油資源の枯渇が心配される中、燃料だけでなく、ポリエステルやナイロンなどの石油由来製品についても代替品の模索が行われている。そうした研究の一つとして注目したいのが、本日(4月8日)の河北新報に紹介されている、クモの糸の人工合成技術だ。

 クモの糸は、しなやかで高い強度をもった繊維として注目を集めている。3年ほど前には、奈良県立医科大学の大崎茂芳教授が、3か月かかって集めたコガネグモの糸を束ねてロープを作り、自らぶら下がるという実験(?)をやってみせたことは、マスコミ的にも話題になった。

 実験ならともかく、1本のロープのために3ヶ月間だけて集めて回るようでは、クモの糸を産業利用は不可能だ。そこで、慶応義塾大学先端生命科学研究所の大学院生、関山和秀さん(博士課程2年)と菅原潤一さん(修士課程2年)は、人工的に「クモの糸」を合成する技術を開発に取り組み、このほど成功したというのである。

 クモの糸の主成分である、フィブロインというタンパク質の合成法を開発したというわけだが、残念ながら、河北新報では、その合成法について詳しくは触れられていない。「培養したバクテリアにフィブロインと呼ばれるたんぱく質を合成させる」という一文から察するに、バクテリアにフィブロインの遺伝子を導入し、発現させることでフィブロインを合成させたのだろう。

 また、この記事で驚かされるのは、大学院生ながら、バイオベンチャーを設立した点にある。すでに関山さんと菅原さんは、この技術をビジネスシーズとして、バイオベンチャーの「スバイバー」を設立しているのだ。

 スパイバーのサイトを覗いてみると、単にフィブロインの遺伝子をバクテリアに導入して、合成させるだけでなく、バイオインフォマティクスを活用して、フィブロインのアミノ酸配列の最適化を図り、強度、伸縮性、耐熱性を高める、分子デザインもできるというようなことも書かれている。

 生物由来の製品となると、生分解性素材になるだろうから、耐久財への利用が難しいように思えるが、分子デザインによって天然フィブロインの改良を加え、耐久性を高められれば、さまざまな用途への応用が期待できるだろう。

 河北新報の記事も、「将来的には」と前置きはあるものの、「自動車や航空機、発電用風車の材料」といった耐久財への活用を目指していると紹介している。

 アメリカなどでは、大学の研究者が、自らの研究成果をビジネスシーズに、ベンチャー企業を興すことは決して珍しいことではないが、まだまだ保守的な日本の研究現場では、自らベンチャーを興す研究者は決して多くはない。ベンチャーを興す研究者に対して批判的な同業者も存在することも否めぬ事実である。

 そのため、10年ほど前に比べると、大学発ベンチャーも増えたとはいえ、そのすべてが研究者自らが設立した企業というわけではなく、外部の弁理士やベンチャー・キャピトルがの仕掛けで設立された企業も決して少なくはない。

 そういう意味で、大学院生でありながら、自身の研究成果をシーズにベンチャーを設立し、世に問うていこうという姿勢には大いに拍手を送りたい。

 河北新報の記事によると、2人の大学院生を指導したのは、生命科学研究所の冨田勝所長と紹介されているが、慶応義塾大学発のベンチャー企業となった「ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ」の設立に参画した研究者だけに、研究面での指導に加え、新産業を興そうとするベンチャー・スピリットも受け継いでいるのかもしれない。

 いずれにしても、この新しい技術の実用化と、スパイバーのビジネスの成功に期待したい。

河北新報の記事

http://www.kahoku.co.jp/news/2009/04/20090408t52015.htm

スパイバー社のサイト

http://www.spiber.jp/jp/index.html

予定通りか、素早い対応か? ACの結核予防CM

 漫才コンビ「ハリセンボン」の箕輪はるかさんが肺結核に感染し、共演者、スタッフのみならず、劇場で彼女たちの漫才をみたり、番組観覧した観客も感染している可能性があるとして、ここ2日ばかりは、このニュースが頻繁に紹介されているのは、ご存知の通りだが、つい先ほど、公共広告機構(AC)の結核予防キャンペーンのCMが放映されていた。

 ACでは、結核予防会とともに、「地球の咳」と題したキャンペーンを展開中のようなのだが、これってタイミング良すぎじゃないか・・・。

 元々、結核予防の啓発CMの放映を予定していたかもしれないが、箕輪さんの感染の報道を受けて、世間的に関心が高まっているだろうから、必要以上に恐怖感を与えない意味からも(CMは結核に対する恐怖感を抑えるような作りになっている)、結核予防のCMに差し替えたんじゃないだろうか。

 ACなんて、親方日の丸の団体と思っていたが、私の推測通りだとすると、結構迅速に対応することがあるんだね・・・なんて、ちょっと見直してしまった。

 まぁ、蓋を開けてみれば、ACの対応が迅速だったんじゃなくて、広告代理店が動いたっていうほうが妥当な判断かもしれないが、ヒステリックに怖がってもしかたがないわけで、このタイミングで、こうしたCMが放映されるのは良いことであるのは間違いない。

 というわけで、以下のサイトでもCMは見られますので、これを機会にチェックされはいかがだろうか?

http://www.ad-c.or.jp/campaign/support/06/

 ではでは・・・・。

日米で世界最大級のレーザー核融合施設が完成

 3月31日に、アメリカのローレンス・リバモア国立研究所内に、世界最大のレーザー核融合施設「国立点火施設(National Ignition Facility=NIF)」(写真)が完成したことが、いくつかのメディアが報道している。

2008niflaserbay  レーザー核融合とは、レーザー光を一点に集中させて、水素(重水素)を核融合してヘリウムを作り出す技術をいう。太陽エネルギーも、この水素の核融合が源であるわけだから、NIFは太陽で起こっている核融合反応を、地上で起こそうとするための研究施設思ってもらえばわかりやすいのではないか。

 新しく完成したNIFは192本のレーザー光を集中させて、超高音を作り出し、水素を核融合させる。レーザー核融合施設は、日本の大阪大学のレーザーエネルギー学研究センターなどにあるが、NIFが最大と紹介されている。

 大阪大学レーザーエネルギー学研究センターも新しいレーザー装置“LFEX”を完成させたばかりで、3月13日付の朝日新聞では、「10ペタワット(1ペタは1000兆)の光を出す」という意味で世界最高だと紹介されている。

 どちらが世界最高かっていうような論議は、あまり建設的ではないので、細かいところはつっこまないが、既報道での研究の目的が、お国柄を表わしているので興味深い。

 大阪大学のLFEXは、朝日新聞の言葉を引用すれば、「低コストの核融合やブラックホール解明なのど研究に使う」のだそうだ。

 一方、NIFについて、時事通信の言葉を引用すると、「核融合炉の開発、恒星の研究」に加え、「水爆の性能確認に使う」そうだ。

 ローレンス・リバモア国立研究所といえば、1952年に核兵器を開発するために設立された研究所で、「水爆の父」と呼ばれたエドワード・テラーが所長を務めたこともあるだけに、核兵器の研究にも活用しようというのもわからないではないが、つい先日、オバマ大統領が核軍縮について言及したんだから、水爆の性能検証もないだろうに・・・。

 もちろん、オバマ大統領が核軍縮の宣言でもしたって、そう簡単にアメリカから核兵器がなくなるとは思えないが、ローレンス・リバモア国立研究所は国防総省の管轄ではなく、エネルギー省(DOE)の管轄にあるんだから、核融合炉の開発ってのを第一目的にして、核兵器の研究なんてやめときゃいいのに・・・。

 このあたりはやっぱりお国柄の違いってことなのかなぁ~。

NIFのことを紹介している報道

http://www.47news.jp/CN/200904/CN2009040101000197.html

http://www.technobahn.com/news/200904031230

大阪大学のLFEXことを紹介している報道

http://www.asahi.com/science/update/0313/OSK200903130111.html

※上の写真は、以下のサイトより引用させていただきました。

http://www.sandia.gov/ASC/library/fullsize/predictive-science-nif-laser-bay.html

 ではでは・・・。

2009年4月 7日 (火)

ロボットに感じる気持ち悪さって何だ?

 先日、あるロボットの取材をしている際、研究者が「外観を人間に似せるすぎると、人間との動きの差異から、不気味にかんじられるようになる」ということを話されていた。

 確かに、このヒューマノイド・ロボットの不気味さというか、違和感はずっと感じていたことで、例えば、多くのヒューマノイド・ロボットが、中腰でひざを曲げて歩いているところには、違和感を感じていた。

 だけど、ロボットの動きに感じていた違和感、不気味さって、本当に外観に似れば似るほど感じられるものなのだおるか。確かに、ホンダのASIMOは、ひざを曲げて歩いていることには、若干の違和感を感じるものの、不気味という言葉で形容されるような感情を抱くことはない。中腰でひざを曲げているものの、ヒョコヒョコ歩いている姿は、コミカルにさえ感じられる。

 一方、二足歩行しているわけではないが、大阪大学の浅田稔教授らが開発しているCB2(CBはのChild-robot with Biomimetic Bodyの略 写真)なんて、私には不気味で仕方がなCb2 い。素材的にはソフトな感じだが(布?)、全身灰色で、頭髪もなく、外観的には人間に似せているわけではない。でも、このCB2にはいかんともしがたい不気味さを感じてしまうのだ。写真よりも動画のほうが、その不気味さがわかるから、ぜひYoutubeで、CB2の動きをご覧いただきたい。

 http://www.youtube.com/watch?v=bCK64zsZNNs

 http://www.youtube.com/watch?v=Z8ixJIfOD-s

 それに、二足歩行タイプのヒューマノイド・ロボットじゃないが、アメリカ国防総省の防衛先端研究計画局(DARPA)の委託を受けて、軍事利用を前提に民間企業のボストン・ダイナミックス社が開発を進めているBig Dog(下のイラスト)も、私には気持ち悪く感じられる。

 このイラストを見る限りでは、その気持ち悪さは伝わらないとは思うが、Youtubeで動いているところをみると、人間っぽい足の動きが、なんとも不気味さを誘うのである。特Boston_dynamics_bigdog に、以下のURLのYoutubeの動画の中ほど、凍結した路面で滑って、転倒しそうになる様子は、四足歩行ロボットながらなにか人間っぽさを感じてしまい、それが違和感を誘っているように思える。

 http://www.youtube.com/watch?v=W1czBcnX1Ww

 少なくともBig Dogは外観では人間とは似ても似つかないのに、違和感、不気味さを感じてしまうわけで(私だけが感じる違和感、不気味さかもしれないが・・・)、何が原因でロボットに違和感、不気味さ、逆に親しみ、かわいらしさなどを感じるののか気になるところだ。

 将来的にはロボットが私たちの生活空間や職場空間で利用されることを考えると、何がロボットに対する感情を左右するのかを、しっかり明らかにしておくことも必要なのではないだろうか。

 まぁ、CB2のような赤ちゃんロボットは研究用のプラットフォームであって、実用型のロボットになることはないだろうが、身近な空間でロボットが利用されるようになれば、不気味で、違和感を感じるものよりも、親しめて、かわいらしく感じられるロボットのほうがいいだろうし・・・。ロボットに対する心理学ってあんまり研究されていないように思うんだが・・・。いかがだろうか?

 上に紹介させていただいた写真、イラストは以下のサイトから引用させていただきました。

 http://sankei-kansai.weblogs.jp/photos/uncategorized/2007/06/12/dja00116g070611d.jpg

 http://www.jamesprovost.com/illustration/bigdog.php

 ではでは・・・。

 

岡山大学、前立腺がんの遺伝子治療を承認

 山陽新聞(以下のURL参照)の記事によると、岡山大学が前立腺がんに対する新しい遺伝子治療を承認したようです。

 この遺伝子治療は、「REIC」と呼ばれる遺伝子をがん細胞に導入して、がん細胞を殺す(アポトーシスさせる)というもの。REIC遺伝子は、もともと細胞の不死化の研究課程で見つかってきたこともので、がん細胞のように死ななくなった不死化細胞で、その発現が減少していることから、Reduced Expression in Mortalized Cellsの略称から、「REIC」と呼ばれるようになった。

 不死化細胞でREIC遺伝子の発現量(つまり、REICタンパク質の発現量)が減少しているということは、逆に不死化細胞にREIC遺伝子を導入して、共生的に発言させれば、不死化状態を壊す、つまり、細胞死(アポトーシス)させることができるのではないかと考えられる。

 そのため、2005年にはウイルスベクターを用いて、前立腺がん細胞にREIC遺伝子を導入し、共生発現したところ、目論見通りにアポトーシスさせることにできたという。

 この研究をす進めている岡山大学ナノバイオ標的医療イノベーション(ICONT)センターの公文裕己センター長は、このREIC遺伝子を用いた遺伝子治療を実用化させるための、バイオベンチャー「桃太郎源」の設立に参画しており、FDAとも臨床研究の実施に向けた折衝を進めているようだ。

 REIC遺伝子自体、岡山大学の研究によって発見されたもので(発見者は難波正義・岡山大学名誉教授)、この遺伝子治療は純国産技術と言える。それだけに、期待を持って今後の臨床研究の推移を見守りたいところだが、やはり気になるのは、遺伝子を導入させるのに用いるのはウイルスベクターだってことだ。

 アメリカのベイラー医科大学ベクターセンターにおいて、REIC遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクター「Ad-REIC」の製造にも着手しているようで、今後、日本、アメリカで実施されるであろう、臨床研究も、このアデノウイルスベクターが用いられるんであろうが、ウイルスベクターの安全性は、どこかで論議されることになるだろう。

 ウイルスベクターを用いた遺伝子治療による副作用事故は、決して多くはないが(というか、遺伝子治療自体の実施例も多いわけではないけれど・・・)、現状では遺伝子導入と、共生発現はウイルスベクターに頼らないといけないとしても、将来的には高性能の非ウイルスベクターの開発を期待したい。今回、発表されたREIC遺伝子を用いた遺伝子治療のような有望な技術が知ると、さらに高性能の非ウイルスベクターの開発の必要性を感じるばかりだ。

※ネタ元にした山陽新聞の記事

http://www.sanyo.oni.co.jp/sanyonews/2009/04/06/2009040622082644007.html

※バイオベンチャー「桃太郎源」のサイト

http://www.mt-gene.com/seeds/index.html

 REIC遺伝子を用いた遺伝子治療についての説明もあります。でも、この「桃太郎源」って企業名はどうなんだぁ? 岡山大学発のバイオベンチャーだけに、童話の「桃太郎」からきているんだろうけど・・・。

 ではでは・・・。 

 

2009年4月 6日 (月)

北朝鮮の人工衛星ってデブリになるだけでしょ?

 いきなり扇動的なタイトルになってしまったが、ここ数日、北朝鮮のミサイル(人工衛星)の打ち上げの報道が喧しい。

 日本やアメリカ政府は、北朝鮮の人工衛星は軌道には乗らなかったとの見解を示し、北朝鮮は、まぁ、プロパガンダなんだろうが、衛星軌道に乗って、金日生、金正日の歌を送信していると喧伝しているようだ。

 実際、衛星軌道に乗ったかどうかは確かめようがないので、日本やアメリカ政府の発表を信じるとしても、もし、衛星軌道に乗っていたら、邪魔になるだろうなって思うわけだ。

 というのも、運用機関が好きで廃棄された人工衛星や、先日、国際宇宙ステーションで宇宙遊泳しながらの作業中に、宇宙飛行士が離してしまった工具などは、すべてスペースデブリ(宇宙ゴミ 下図)となって、衛星軌道上を周回し続けるのだ。

Spacedebris  中には地球に落下し、大気圏に突入する際に燃え尽きてしまうものがあるようだが、多くは衛星軌道上を周回し続け、増加の一途を辿っているという。

 もし、これ運用期間中の人工衛星に衝突すれば甚大な被害が及ぶことになるだろうし、それが国際宇宙ステーションであれば、乗り組んでいる宇宙飛行士の生命に危険が及ぶ事態にもなりかねない。

 そのため、NASAではジョンスン宇宙センター内にスペースデブリを監視する部署“Orbital Debris Program Office”を設置している。

 北朝鮮にとっては、金日生、金正日の歌を送信するっていうのに意味があるんだろうが、まぁ、こんなことでわざわざ人工衛星を打ち上げないでくれよって思う。実際は衛星軌道には乗っていないんだろうが、もし、衛星軌道に乗っていれば、新たに1個スペースデブリが増えたようなものなんだろう。

 だから、北朝鮮に限らず、人工衛星を打ち上げるには、国際的な登録制度は必要なんじゃないだろうか。軍事的な衛星もあるだろうから、国家間の利害を超えて判断することはなかなか難しいとは思うが、科学的な研究や民間利用を目的した衛星なら、その価値を考慮して、打ち上げるべきかどうかを公明正大に審査したほうがいいんじゃないか。

 最近、日本のJAXAも、人工衛星を打ち上げる際に、あまったスペースを民間に開放し、有志の小型人工衛星の打ち上げ代行のようなことも行っているが、「これってスペースデブリを増やすことにはならないのか?」って疑問に思うこともあっただけに、宇宙空間(衛星軌道)の占有利用についての基準も作られるべきだろう。

 そうしないと、今後も政治的なプロパガンダを目的に、貴重な衛星軌道を無駄にしてしまうかもしれない。

 というわけで、ここ数日の北朝鮮のミサイル(人工衛星)打ち上げに関する報道を見聞きしていて考えたことを書いてみました。

http://orbitaldebris.jsc.nasa.gov/

 ※文中の図は、上のNASAのOrbital Debris Program Officeより引用させていただいた。

 ではでは・・・。

東野圭吾のファンブックで原稿を書いています

 今回は、ちょっと宣伝をば・・・。

 先月、発行された別冊宝島の『僕たちの好きな東野圭吾』(別冊宝島1609)で、原稿を書いております。

 サイエンスライターなのに、どうして東野圭吾のファンブックで原稿を書いていることに疑問を抱かれるかもしれませんが、テレビドラマ化、映画化された「ガリレオ」シリーズをはじめ、東野圭吾の作品には、けっこう理系的な話題の小説があるんですよね。

Photo_2  私自身、仕事とは関係なくミステリーは好きなんですが、仕事柄、理系的なミステリーは大好きで、東野圭吾の理系的小説はよく読んでいたので、宝島社の編集者から原稿執筆の依頼をいただいたというわけです。

 といっても、サイエンスライターとして、原稿の執筆依頼を受けているので、普通に書評してもしかたがない。というわけで、「東圭吾の理系小説って、科学的にどうなの?」という視点で原稿を書かせていただきました。

 ただし、私に許された文字量にも限界がありますので、取り上げたのは、初期の作品の『虹を操る少年』と『パラレル・ワールド・ラブストーリー』の2冊です。本当は『分身』も紹介したかったんですが、文字量の関係で、またの機会に譲ることにしました。

 『虹を操る少年』と『パラレル・ワールド・ラブストーリー』は、いずれもSFっぽいテイストをもった作品なので、科学的に実現性を検証すれば、「不可能だ!」ってことになってしまうのですが、理系的なエッセンスに、東野圭吾という作家の目敏さが見出されたので、その点を論評しました。

 よかったら読んでやってください。

 ではでは・・・。

PET技術を活用して、植物の栄養取り込みを画像化

 がんの診断などで利用されているPETの仕組みについてご存じだろうか。

 正確にはPositron Emission Tomographyの略称で、日本語の訳すと「陽電子断層撮影法」となる。

 詳しく書き始めると長くなってしまうので、ごく簡単に説明すると、微弱な放射線を発する各種を加えた分子を、人間に投与し、その挙動を画像化することで病状を診断しようとする技術と言える。

 がんの診断の場合、栄養の元となるブドウ糖に、微弱な放射線を発するフッ素が付けたFDGを投与する。がん細胞は盛んに分裂しているため、正常な細胞よりも多量の栄養を欲していることから、多くのFDGを取り込むようになる。つまり、PET画像で、FDGが集中していれば、そこにはがんがあると考えられるのだ。

 ならば、PETの仕組みを生かして、放射線を発する原子を、様々な原子、分子、化合物に付ければ、生物体内での原子、分子、化合物の挙動を明らかにすることができるだろう。そんな研究成果が発表されたので紹介したい(リリースは、以下のサイトでご覧ください)。

 研究成果を発表したのは、日本原子力研究開発機構(JAEA)と新潟大学の研究グループ。JAEAは、以前からPETの仕組みを生かした、植物内での分子の挙動を画像化する「植物ポジトロンイメージング技術」の開発に取り組んでおり、数年前、私も取材をさせていただいたことがある。

 今回の研究は、ダイズが空気中の窒素を栄養として取り込む様子を植物ポジトロンイメージング技術によって画像化することに成功したということなのだが、ダイズは自ら空気中から窒素を取り組んでいるわけではない。

 土壌中には根粒菌と呼ばれる細菌がいて、ダイズなどのマメ科植物の根に感染し、根粒と呼ばれるコブを作る。ただし、根粒菌の感染はマメ科植物にとって不都合なものではなく、根粒菌が窒素を取り込み、アンモニアに変換して、マメ科植物に提供しているのだ。その代りにマメ科植物は、光合成で作り出した栄養分を根粒菌に与えている。つまり、マメ科植物と根粒菌は共生関係あり、こうした窒素の取り込みは「共生的窒素固定」と呼ばれている。

 そこで、研究グループは、微弱な放射線を発する窒素分子を作り出し、ダイズに与えて、その挙動を画像化。根粒菌に取り込まれていることが、見事に映し出されている(図)。

Photo  植物が栄養を取り込むことは頭ではわかっていても、実際に画像化されて、見られるのは実に興味深い。

 研究グループは、今回の研究成果によって、今後、共生的窒素固定のメカニズムの解明が進むことが期待できるとし、さらに共生的窒素固定の利用効率を体かめる栽培条件を見出すこともできるだろうと考えれているようです。

 豆腐や味噌など、日本人は多くのダイズ食品を食べていながら、その自給率はわずかに4%しかなく、ほとんどを海外からの輸入に頼っている。この植物ポジトロンイメージング技術を活用して、共生的窒素固定を効率アップを可能にする栽培環境が明らかになれば、ダイズの増産も見込めるだろう。

 だからといって、現在、4%の自給率が80%、90%になることは難しいだろうが、少しでも自給率を高められることには大きな意味があると思う。

http://www.jaea.go.jp/02/press2008/p09031701/index.html

 ※文中の図は、上記のサイトより引用させていただきました。

 ではでは・・・。

2009年4月 5日 (日)

ウイルスで作った電池をMITが開発

 今から10年ほど前、当時の通商産業省の工業技術院(※2001年にいくつかの研究所と統合され、現在は産業技術総合研究所)で、植物プランクトンのアオコを利用した生体電池(植物プランクトン電池)を取材させていただいたことがある。

 アオコが発する微弱な電流を回収することで、それを電池として利用しようという技術だったのだが、すぐにアオコの寿命が尽きてしまうことが、実用化の壁になっていると、取材に協力してくれた研究者は話されていた。

 その後、この植物プランクトン電池の続報は聞かないので、研究は頓挫してしまったのかもしれないが、他の研究機関で生物や、生物が持つ分子を活用した電池の開発は進められている。

 私が取材したものでは、ソニーが開発したバイオ電池は、生体そのものは利用しないが、ブドウ糖を代謝する酵素を活用し、電気を生み出すという仕組みになっている(※この記事は、日経エコロジーに書いたもので、現在、ネットで閲覧できます。以下のサイトをご参照ください)。

 http://eco.nikkeibp.co.jp/style/eco/report/080222_budoutou/

 こういったバイオ電池は、今後も開発が進められると思うが、ITメディアニュースや日経BP社のテクノロジー系ネットニュースのTech-on!が、ウイルスを使った電池(写真)のことを報じているので紹介したい。

Virus_battery  開発したのはマサチューセッツ工科大学(MIT)のアンジェラ・ベルチャー博士(Department of Materials Science and Engineeing)らの研究グループで、遺伝子組み換えることにより、細胞表面にリン酸鉄を付着されるとともに、カーボンナノチューブにも結合する性質をもったウイルスを作成。これを電極として利用することで、ウイルス電池を作ったという。ちなみに使われたウイルスは、人間には感染することのないバクテリオファージである。

 といっても、今回の成果は電極のうち陰極(カソード)をウイルスによって形作ることに成功したのであって、陽極(アノード)については、2006年にウイルスを活用したものを開発済み。調べてみると、MITのニュースサイトでも紹介されていた(※以下に、2006年のニュースに加え、2008年、2009年の関連ニュースのURLも紹介しておきますので、興味があれば、ご参照ください)

 というわけで、このウイルス電池は、先に紹介した工業技術院(当時)の植物プランクトン電池とは根本的に異なり、ウイルスが持つ生体電気を活用しようするものではなく、電極を構成する素材を接着する糊としてウイルスを使うという、ユニークな発想の下、開発されたもののようだ。

 記事によると、今のところ、リチウムイオン電池と比べると、このウイルス電池の寿命は短いようだが、今後の改良で、寿命の問題も解決でき、しかも、環境に負荷を与える有機溶剤を使わずに製造できる点もメリットがあるという。

 広い意味でバイオ電池と言えると思うが、電気の素に生態を活用するのではなく、素材として生体(ウイルス)を利用しようとするアイデアは興味深いで、今後の開発にも注目していきたい。

 IT Media news

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0904/03/news043.html

 日経BP社のTech on!

http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20090402/168288/

 以下、MITのニュースサイト

http://web.mit.edu/newsoffice/2006/virus-battery.html

http://web.mit.edu/newsoffice/2008/virus-battery-0820.html

http://web.mit.edu/newsoffice/2009/virus-battery-0402.html

※上の写真は、MITのニュースサイト(2009年のニュース)より引用させていただきました。

 ではでは・・・。

竜脚類恐竜の首の長さは何のため?

 マメンチサウルスやアパトサウルスなどの竜脚類恐竜の首の長さは、高い樹木の葉を食べるために進化したのではないかと考えられてきたが、2009年4月1日付のBiology Lettersのイギリス生物学雑誌に掲載された記事では、この仮説に疑義が呈されている。

 この記事を執筆した、アデレイド大学の進化生物学者、ロジャー・セイモア教授は、もし竜脚類恐竜が高所の餌を食べるために首を持ち上げていたら、脳に十分な血液を送るために、高い血圧を維持しなければならず、そのために消費されるエネルギーは、得られる餌のエネルギー量を上回るはずだと指摘。得られるエネルギーより、消費するエネルギーのほうが大きい採餌行為など考えられないから、竜脚類恐竜の首の長さは、高所の餌をとるために進化したのではない論じているのだ。

 確かに、マネンチサウルス級の竜脚類恐竜なら、首の長さは8~9mに達するだけに、この首を持ち上げた状態でも貧血にならないために、相当な高血圧を維持するというのは生存戦略上不合理と判断するのも理解できる(※下の画像は、ロンドンの自然史博物館のサイトから引用したマメンチサウルスのイラストだが、セイモア教授の説に従えば、こういうイラストも間違ってことになるんだろうな)。

Mamench  じゃ、なぜあんなにも首がなくなったのかっていう疑問は残ってしまう。

 現実に首の長い竜脚類恐竜がいた以上、ダーウィンの自然選択説に従えば、首の長さが生存戦略上、有利に働くような環境があったと考えられるわけだが、エネルギー消費の面から否定された、高所の餌を得るためという仮設以外に妥当な理由は何か考えられるだろうか。

 肉食恐竜などから身を守るため・・・? これは、ちょっと違うだろう。

 首の長さがメスへの求愛アピールとなって、フィーメイル・チョイスが働いた・・・? これもなさそうに思う。

 いずれにしても、今回の論文の発表で、今一度、竜脚類恐竜の首の長さについての論議が活発化し、その進化を後押しした理由についての研究が進められることを期待したい。

Biology Lettersのアブストラクト

http://rsbl.royalsocietypublishing.org/content/early/2009/03/31/rsbl.2009.0096.abstract?cited-by=yes&legid=roybiolett;rsbl.2009.0096v1

上記の論文をもとにしたAFPの記事

http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2588609/3988004

※上の写真は、以下のサイトより引用しました

http://www.nhm.ac.uk/jdsml/nature-online/dino-directory/detail.dsml?Genus=Mamenchisaurus

厄介者の外来水草でバイオエタノールを生産する?

 ここ数カ月、小麦の価格は落ち着いてきて、パンや麺類などの小麦製品の値下げが相次いでいるが、1年ほど前は小麦価格の高騰は世界的な問題になっていた。その背景には、原油価格の高騰と地球温暖化問題を受けての、バイオエタノールへの需要の高まりから、小麦からトウモロコシへの転作する農家が増加したことが関わっているため、どうもバイオエタノールに対するイメージは悪くなってしまったのではないだろうか。

 といっても、石油資源の枯渇の問題は、数十年後には確実に深刻化する以上、バイオエタノールの普及は、石油に代わる燃料の確保という意味では重要だ。

 もちろん、そのために食糧資源をバイオエタノール生産に回し、穀物需給のバランスが崩れ、飢餓が増大するようでは本末転倒だと言える。

 そこで、食糧需給に影響を与えないバイオマスを活用して燃料生産はできないものかと考えていた。例えば、すでに大成建設などが出資して設立された、バイオエタノール・ジャパン関西が、廃木材を原料としたバイオエタノール生産を事業化している。

 ただし、その効率は非常に悪いようで、ビジネスとして成立させるのはどこまでできるのか、ちょっと疑問を感じている。

 結局、木材を原料にバイオエタノールを生産するのは、木材に含まれるセルロース、ヘミセルロースを、酵母菌が利用できるグルコースに、安価で高効率に変換することが実現しないといけないわけだが、この点が難しいのだろう。

 だったら、木材以外に、食糧の需給に影響を与えない、未利用バイオマスを活用してバイオエタノール生産ができればいいわけだが、昨日の朝日新聞に興味深い記事が掲載されていたので紹介したい(朝日新聞の記事は以下をご参照ください)。

 この記事で、新たなバイオエタノールの原料として紹介されているのが、ウォーターレタスである(下写真)。

 あまり聞きなれない名前だと思うが、標準和名はボタンウキクサという、サトイモ科に属する浮草になる水草で、ウォーターレタスというのは英名だ。

Photo  日本には鑑賞用に持ち込まれた外来種なのだが、地域によっては湖沼の水面を覆い尽くし、水路を塞ぐといった問題を生じさせている。外来生物法でも「特定外来生物」にしていられており、琵琶湖などでは駆除の対象となっているという。

 ならば、このウォーターレタスを燃料の原料にしてやれってことで、滋賀県東北部工業技術センターと京都大学の研究グループにより、研究が進められ、このほど、バイオエタノールの原料にできるようになったようだ。

 朝日新聞の記事によると、ウォーターレタスには、トウモロコシなどの穀類にはない糖類が含まれているため、これがアルコール発酵を邪魔するという。研究グループは、遺伝子組み換えにより、ウォーターレタスに含まれる糖類を原料にアルコール発酵できる酵母を作り出し、エタノールを生産できるようになったようだ(ウォーターレタスに含まれる糖類が何なのかは触れられていない)。

 今後、商業ベースに乗せるために、3年後をめどに琵琶湖に実証プラントを建設するそうだが、ウォータープラントを原料とした場合のエタノール生産の効率が気になるところだ。この点について、記事は一切触れていないが、湖面に広がるウォータープラントを回収するのは、相当な労力になるであろうし、それをプラントに運ぶのにもけっこうエネルギーを消費しそうだ。

 実際、朝日新聞の記事でも、滋賀県は2007年度に、約7000万円を費やし、他の水草を含め、2800トンを除去したというが、ウォーターレタスを回収する費用が、この除去費用と同等と考えれば(湖面に浮かぶウォーターレタスを集める行為は同じだろう)、2800トンの水草から、7000万円分以上のエタノールを生産できなければ、絶対にビジネスにはならないわけだが、どうなんだろうなぁ。

 まぁ、エタノールを生産せずとも、公的資金を投入して、ウォーターレタスを除去しているんだから、採算性には目をつぶっても、事業化する意味はあるのかもしれない。

 今回の報道については、あくまでも研究室レベルでの研究成果を紹介しているのだろうから、事業性を云々するのは気が早すぎるのだろうが、こういう事業って、どうしても税金頼みになってしまうので、継続できるものなのかなぁ。

 まっ、今後の研究成果に期待いたしましょう。

http://www.asahi.com/national/update/0402/OSK200904020061.html

※記事中の写真は、以下のサイトから引用いたしました。

http://www.epcc.pref.osaka.jp/afr/fish/tenji/gairai/gairai/botan.html

 ではでは・・・。

2009年4月 4日 (土)

二足歩行ロボットによる月探査って・・・

 政府の宇宙開発戦略本部の専門調査会が、3日、開催された。そこで今後の国の宇宙開発に関する基本方針「宇宙基本計画」の骨子がまとめられ、複数のメディアが報じている。

 宇宙開発戦略本部のウェブサイトを覗いてみたところ、第2回までの議事次第は閲覧できるものの、昨日、まとめられた「宇宙基本計画」の骨子は紹介されていなかっため、詳細については、今後のアップを待つとして、報道を頼りに、その内容をチェックしてみると、1点、気になることがあった。

 それは、2020年頃をめどに無人の月探査を行おうとしていることなのだが、月探査自体を問題視しているわけではない。NASAやESAが有人宇宙飛行を目指していることを考えると、無人の月探査ってのは、なんとも夢がないなぁ~って思えるが、これまで日本の技術だけで有人宇宙飛行を実現させていない以上、約10年後とはいえ、無人を前提とした月探査となるのも仕方がないのかもしれない。

 じゃ、何が気になるのかというと、無人探査の担い手を、二足歩行ロボットにしようということである。

 率直に言って、「なんで二足歩行ロボットなの?」って疑問を感じてしまう。

 二足歩行ロボットの開発では、日本は他国の追従を許さぬほど、独走態勢にあることはご存知だろう。だからといって、月探査に二足歩行ロボットを・・・という理由がいまいちわからない(だからこそ、はやく3日の会合の議事次第をチェックしたいところだが・・・)。

 そもそも、月の引力は地球の6分の1程度とされているとなれば、すでに開発されている二足歩行ロボットでは探査に必要な運動能力を維持できるとは思えないのだ。

 地球にいるよりも体重が軽くなるわけだから、動力源に求められる性能は劣ってもいいことになるだろうが、引力が小さい環境での高い動作性能を得るための独自の開発も求められるだろう。

 しかも、火星の表面は「レゴリス」と呼ばれる、細かい砂礫で覆われているため、そこで動かす機械には、高い防塵性能が求められるだけに、複雑な構造となるであろう二足歩行ロボットってのが、最善の選択とは思えないのだが・・・。

 だったら、NASA/JPLが火星で運用しているマーズ・エクスプロレーション・ローバー(Mars Exploration Rover 下のCG)のようなロボットでもいいんじゃないか。

Mer  実際、JAXAでも、ローバータイプの月面探査ロボットの開発を進めている。私自身、過去、2度ほど、JAXAの一般公開で見学させてもらったことがあるが、なぜこれを使わず、二足歩行ロボットなんて話がでてきたんだろうか。

 といっても、月探査に向いた二足歩行ロボットの開発を進めること自体は否定しない。ただし、それはいくつもある候補案の1つとして開発を進めるだけであって、「宇宙基本計画」の骨子で、わざわざ二足歩行ロボットでの無人月探査を目標とするなんてことは歌わなくてもいいだろう。

 まぁ、今のところわかっているのは、いくつかの報道で紹介されている範囲のことなので、今後、宇宙開発戦略本部からの正式に「宇宙基本計画」の骨子が発表されたら、今一度、このブログでも、その内容を紹介しようと思う。

 宇宙開発戦略本部のウェブサイト

 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/utyuu/index.html

 ※上の写真は、以下のサイトから引用しました

 http://mars.jpl.nasa.gov/mer/gallery/artwork/emerging_br.html

 ちなみに、私がJAXAが開発している月探査ロボットを見た一般公開が、来る4月19日に行われます。場所は、東京都調布市にあるJAXA調布航空宇宙センターです。例年通りであれば、月探査ロボットも見学できると思います。

 いちおう、一般公開を紹介している以下のサイトをチェックしてみると、公開する施設の項目に「月面掘削試験施設/月面模擬実験場」という一文がありますので、ローバーも展示されてでしょう。良かったら見学しに行ってやってください。

 http://www.ard.jaxa.jp/info/event/090419.html

 ではでは・・・。

京都大学の大学院生 幹細胞のハンドブックを編集

 昨日のiPS細胞に関連した記事でも書いたが、2006年のマウスのiPS細胞の樹立の発表以降、世間的にも関心を集めるわけだいなのか、iPS細胞関連の記事をよく書くことがある。

 でも、いつも気を揉むのが、どの程度、読者が理解してくれているかってことだ。

 ライフサイエンスの研究者なら、決して難しくはない話題であっても、一般向けとなると、なかなか説明しにくい話題が多い。

 例えば、「分化」という用語。以前、再生医療の記事を書いた際、編集者から「この『分化』って用語、『成長』って治しちゃダメなの?」って言われたことがあるが、やっぱりちょっと違うんだよなぁ。

 今さらながら、簡単に説明しておくと、未熟な細胞が別の細胞に変化することをいうわけで、一般向けの雑誌ならば、確かに「成長」と言っても差支えなさそうに思えるが、例えば、「神経幹細胞がニューロンに成長した」なんて表現をイメージすると、どうしても違和感を覚えてしまう。やっぱり、「分化」ってかかなくちゃぁ~なぁ~って思うわけだ。

 それだけライフサイエンスの用語には、一般には理解しにくものが多いわけで、iPS細胞の記事にしろ、新しいがんの治療法の記事にしろ、鳥インフルエンザなどの感染症、免疫関連の記事により、一般向けの雑誌で記事を書くときは、いつも用語のことで頭を痛めている。

 だから、ライフサイエンス関連の記事で、わかりやすい原稿を読むと、「さすがだなぁ」って思ってしまうのだが、今回、公表された京都大学の大学院生が編集したという幹細胞のハンドブックはなかなかのものだ。

 このハンドブックの公開を紹介している京都新聞によると、高校で習う生物の知識で十分に理解できるように編集されているので、これでも人によっては南海に感じられるかもしれないが、ハンドブックの冒頭でプラナリアに触れ、「分化」という用語の意味を押さえつつ、幹細胞の説明をしているあたりは、「うまいな」って思う。

 それに、イラストレーションもなかなかいい。写実的でわかりすいのだが、一般向けに幹細胞を紹介しようとするなら、もう少しマンガちっくというか、擬人化したようなイラストでもよかったんじゃないかって思えてくる。まぁ、大学が発行する冊子ではそういうのは難しいかな・・・。

 またまた、京都新聞の記事を参考にすると、このハンドブックを制作した大学院生の大河雅奈さんは、「サイエンス・ビジュライゼーション」を研究テーマにしているというではないか。日本語に訳せば「科学的知識の視覚化」とでもいうのだろうか・・・。こういう分野を研究しているっていうのもなかなか興味深い。

 というのも、仕事柄、いつも科学記事の原稿を書いていて、そこに付け加えるビジュアル要素については、いつも頭を痛めているからだ。私の頭の中では、漠然とイメージはできあがたちても、それを言葉で編集者に伝えにくいから、いつもじれったく感じている。編集者にもうまく伝えられないから、編集者の指示で動くデザイナーにもなかなか理解してもれないのか、けっこう胃が痛い思いをする。自分に画才があれば、ラフのイラストを描いて、指示をすればいいだけなのだが、これが難しくて・・・。

 現在、東京大学、早稲田大学、北海道大学では、科学ジャーナリスト(というか、科学コミュニケーターって言うんですよね)を育成する大学院プログラムが実施されているようだが、文字で書く理屈はオン・ザ・ジョブ・トレーニングでなんとでもなるから、学問として、この「視覚化」の能力を高めることを徹底してやってもらいたいところだ(やっていたら、ごめんなさい)。

 幹細胞ハンドブックは、以下のサイトでダウンロードできますので、チェックしてみてください。

幹細胞ハンドブックのPDFファイル

 http://www.icems.kyoto-u.ac.jp/cira/doc/handbookstemcell_web.pdf

幹細胞ハンドブックの公開に関する京都大学CiRAのリリース

 http://www.icems.kyoto-u.ac.jp/cira/doc/090401_handbook_J.pdf

京都新聞の紹介記事

 http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2009040200049&genre=G1&area=K00

2009年4月 3日 (金)

メタンハイドレートは使える資源になるのか?

 資源の乏しい日本にとって、国産のエネルギーを生産できるようになることは悲願と言えるが、その可能性を秘めているのがメタンハイドレートだ。

 メタンハイドレートとは、水分子の水素結合によってできた籠状の格子(ハイドレート構造)の中に、メタン分子が閉じ込められた固体結晶で、内部から可燃性のメタンが主が噴出することから、火を近づけると、激しく燃える。そのため、「燃える氷」と呼ばれることもある(写真)。Hydrate

 このメタンハイドレートが、日本近海には多く埋蔵されており、これまでに探査が進んでいる南海トラフのメタンハイドレート層だけでも、その埋蔵量は1兆1400億立法メートルもあるという。これを日本の天然ガスの年間消費量に換算すると13年分にも達するという。南海トラフ以外のメタンハイドレート層も含めると、その埋蔵量は年間消費量の数十年分にも相当すると見積もられている。

 そのため、メタンハイドレートの実用化に向けた研究開発が進められてきたが、このほど産業技術総合研究所(いか、産総研と略す)に「メタンハイドレート研究センター」が設立されたことになった(以下のリリースをご参照ください)。

 といっても、いきなり産総研がメタンハイドレートの研究開発を始めるようになったわけではない。これまでにも石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)や、エンジニアリング振興機構(ENAA)とともに、メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム(MH21研究コンソーシアム)を設立し、資源開発のための研究を進めてきたが、さらに研究体制を強化するために、前述のセンターを設立することになったようだ。

 これまで産総研では、北海道センターが、メタンハイドレートの資源開発研究を担ってきたが、北海道を拠点としていては、他の研究機関との連携がスムースに進められないということもあるのか、今回の設立するセンターは茨城県つくば市に設置されることになった。

 まぁ、これでメタンハイドレートの資源開発を急ピッチで進めてもらい、速やかな実用化を期待したいところだが、埋蔵量そのものは多くとも、費用対効果に見合った資源かどうかっていうのはどこまで明らかになっているんだろうか?

 というのも、すでに我々が使っている天然ガスは、天然ガス層まで掘削すれば、自ら噴出してくれるので容易に採掘できるわけでが、メタンハイドレートの場合、ただく掘削しただけでは自噴しないため、独自の採掘技術が求められる。

 メタンハイドレートのハイドレート構造が維持されているのは、低温、高圧条件が必要なので、メタンハイドレート層の水を吸い出すことで圧力を下げてメタンガスを噴出させるか、温水を注入すりることにより、温度を上げてメタンガスを噴出させる方法がある。いずれにしても、採掘コストはかかるため、一定箇所に厚みをもったメタンハイドレート層があればいいが、数十cmから数m程度の厚さの層ばかりであれば、数多くの採掘ポイントで掘削をしなければならなくなり、どこまで効率的な採掘ができるかどうが疑問だという声も聞かれる。

 また、地下のメタンハイドレート層からメタンガスを採掘すれば、その地層は失われるため、斜面での採掘が行われると、大規模の地滑りが発生する恐れもあるという。

 地滑り自体、海底環境を大きく改変してしまうことが危惧されるが、もし、メタンガスの採取が進まぬ前に地すべりが起これば、残っているメタンガスが噴出し、大気中に放出されてしまうことも予想される。

 メタンガスは、二酸化炭素と比べ、20倍もの温室効果をもっているため、メタンハイドレート層の大規模な崩壊によって、メタンガスの大気中の濃度が高まるようなことがあれば、地球温暖化が急速に進んでしまうことも考えられる。

 こんなふうにネガティブなことを書き連ねると、メタンハイドレート開発に対して否定的な見解を持っているのではないかと思われるかもしれないが、先に書いたような懸案事項は、すべて織り込み済みで開発も進められるだろうから、基本的にメタンハイドレート開発は賛成だ。

 ただし、コストについては十分な情報開示が必要だと考えている。先にも書いたように、薄いメタンハイドレート層が広い範囲に広がっているようなら、採掘コストは高まってしまう。実用化の初期段階では、公的な予算により採掘ということになるだろうから、経済的に採算が合うものになるかどうかもきちんと情報公開すべきだろう。

 昨年までの原油価格が高騰した状態が続けば、採算性は目をつぶっても、「メタンハイドレートの実用化を急げ!」ってことになったかもしれないが、原油価格が落ち着いている現在、採算を無視してまで実用化を急ぐ必要はないのではないか。

 地球温暖化が深刻化して、人間が採掘せずとも勝手にメタンガスが噴出して、資源が失われるようになってしまえば元も子もないが、まずはじっくり採掘技術の開発を進め、将来の実用化に備えてもらいたいところだ。

http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2009/pr20090401/pr20090401.html

※本文中の写真は、以下のサイトより引用しました

http://www.giss.nasa.gov/research/features/methane/hydrate.jpg

腐った卵が発するガスで男性器の勃起力が高まる

 1か月ほど前にBBCのニュースサイトにあった記事だが、面白いので紹介したい。

 インポテンツの薬と言ったら、誰しもバイアグラを思い浮かべるだろうが、イタリアのナポリ大学(University of Naples Federico Ⅱ)の研究グループが、腐った卵が発するガスに、男性黄の勃起力を高める能力があることが明らかにしたというのだ。

 腐った卵が発するガスに含まれる硫化水素が、神経細胞の緊張を解くのを助け、血流量の増加を促すことで、勃起力を向上させるというのだ。

 このことから、研究グループのリーダーであるジゼッペ・シリノ(Giuseppe Cirino)教授は「硫化水素が勃起プロセスにかかわっていることは間違いなく、(インポテンツの)新薬の開発につながるはずだ」と語っているようです。

 この記事を読む限り、勃起のメカニズムに硫化水素がかかわっていることと、腐った卵が発するガスの中に硫化水素が入っていることがわかったのだが、じゃ腐った卵のガス、つまり、臭いを嗅げば勃起力が高まるかどうかは明らかにしていない。

 もし、硫化水素を含むガスの臭いを嗅ぐだけ(もしくは、吸い込むだけ)で勃起力がたかまるというなら、硫化水素は自動車の排気ガスにも含まれているし、火山ガスにも含まれているから、自動車の往来が激しい道路付近や、火山ガスが噴出している温泉地などで生活している人は、自然と勃起力が高まることになるだろうが、そういうことってあるものなのかなぁ。

 それに、硫化水素は200~300ppmで急性中毒に陥り、1000~2000ppmで即死する猛毒であるため、ここ最近、硫化水素を使った自殺が行われていることはご存じだろう。

 今回の研究成果はあくまでも、腐った卵に含まれる硫化水素が、勃起力を高める効果がるというだけで、硫化水素を嗅げば勃起力が高まるとは言っているわけではないので、ゆめゆめ、硫化水素を発生させ、それを吸引しようなどとは考えるべきではないだろう(考えるわけないか?)

 ちにみにこういうユニークな研究だが、論文が掲載されたのは、いたってまともというか、けっこう権威の高い学術雑誌のPNAS(Proceedings of the National Academy of Science)です。以下に紹介するURLの2つ目で、論文の概要(アブストラクト)を読めるので、ご興味のある方はチェックしていただきたい。論文の全文(Full Text)は有料です。

http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/7920565.stm

http://www.pnas.org/content/early/2009/02/27/0807974105.abstract?sid=0eccc8b1-fe47-4d91-8990-7c760bd0c2bc

 ではでは・・・。

有人火星旅行を目指し、105日間、閉鎖環境に閉じこもる

 閉所恐怖症で、一か所にじっとしていられない性格であるため、宇宙飛行士の若田光一さんが約3ヶ月間、国際宇宙ステーションに滞在すると聞いたときは、「よくできるなぁ」ってのが率直な感想だった。

 もし、自分があんなところに3か月間も閉じ込められたら、気がふれて、船外に飛び出そうとするんじゃないかって思う。

 まぁ、元々、資質的に宇宙飛行士なんて絶対に無理なんだろうが、そんな私にとっては、絶対に御免こうむりたい取り組みが、欧州宇宙機関(ESA)とロシア生物医学研究所(IMBP)によって進められている。

 この取り組みというのが、「Mars-500」と名付けられた、将来の有人火星旅行の可能Mars5001 性を探るための模擬的に火星旅行のシミュレーション実験で、複数のネットニュース(以下のサイトを参照)によると、3月31日からボランティアの6人(フランス人1人、ドイツ人1人、ロシア人4人)が、ロシアのモスクワにある地上実験施設(写真)に入り、105日間、生活するというのだ。

 現在の宇宙空間を航行するための技術では、火星までは約250日かかるとされており、有人火星旅行を実現するには、最低でも往復で500日間、宇宙船に閉じ込められても、耐えうる精神力をもった宇宙飛行士が選ばれることと、十分に快適な環境をもった宇宙船の開発が求められる。

 今回の実験は105日間と、実際の火星旅行に必要な500日間と比べると、ずいぶん短いが、まずは第一段階として今回の実験を行い、これに成功すれば、近いうちに500日間の実験も実施するという。

 では、仮想実験に参加する宇宙飛行士が閉じ込められるMars-500はどんな施設かというと、200平方メートル程度の広さの空間に、宇宙飛行士の居室、キッチン、バス、トイレMars5002 のほか、研究スペースも設置されている(写真)。

 宇宙船の中では水が貴重であるため、風呂があるといっても、浴槽やシャワーはなく、サウナによって汗を流せるようになっているようだ。

 ・・・と聞けば、なかなか快適な環境のようにも思えるかもしれないが、わずか200平方メートル程度の空間に6人の大人が閉じ込められて生活するというのだから、当然、さまざまな軋轢が生じることだろう。個人的にはこれが最も耐えられなさそうだ。

 火星旅行を想定した模擬実験である以上、食べられるのは宇宙食だけ。外部との通信も、地球と火星との距離を考慮し、20分もの遅れを作るというのだから、なかなかの念の入れようだが、「もしもし」と言っても、相手からの返事が聞けるのが20分後だったら、まともな会話は成立しないだろうな。

 宇宙飛行士の精神的な問題も実験結果として考慮されるため、余暇を楽しむためのインターネットも使えないという。これじゃ、気がふれてもおかしくないと思うが、そうならない強い精神力の持ち主(?)ばかりが集められているのだろうか。

 ボランティアとはいえ、実験施設に乗り込む(閉じ込められる)参加者には、ESAから報奨金として2万ドル支給されるらしい。労働は少ないだろうが、105日間24時間拘束で、2万ドルじゃぁ、決して高くはないんじゃないか。この報奨金なら、自分が御免こうむりたい。というか、途中で逃げ出すのが見え見えだから、参加者には選ばれないだろうな・・・。

http://www.space.com/missionlaunches/090331-mock-mars105-begins.html 

http://www.universetoday.com/2009/03/31/crew-of-six-begins-105-day-mars-mission-simulation/

http://www.themoscowtimes.com/article/1010/42/375825.htm

http://thelede.blogs.nytimes.com/2009/03/31/national-toilets-complicate-life-in-space/?hp

※上の写真は以下のサイトより引用しました。

http://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-474340/Volunteers-locked-small-container-18-months-Mars-experiment-gets-underway.html

http://en.rian.ru/photolents/20090303/120375883_7.html

カルフォルニア州が黒い車を禁止に?

 環境政策に消極的だったアメリカにあって、カルフォルニア州は独自の排ガス規制を打ち出すなど、積極的に環境政策を進めているが、このほど黒い車の販売を禁止する方針を明らかにしていることを、複数のネットニュースが報じている(以下のサイトをご参照ください)。

 黒い車の販売禁止の法制化を進めているのは、カルフォルニア州大気資源局(California Air Resouces Board)で、これまでにも地球温暖化を防止するため、建物の屋根に太陽光の反射率の高い白っぽい色(寒色系)を使うことを義務付けてきた。

 寒色系の屋根であれば、太陽光を反射するため、それだけ地球温暖化を防止できるわけだが、同時に室内の温度上昇を抑えられることで、冷房への電力の消費も抑えられ、さらに地球温暖化対策にも寄与すると期待されている。

 こうした考えを車にも適応し、黒い車の販売を禁止しようとしているのだ。早ければ、2012年に黒い車の販売を禁止する新しい規制を運用するという。

 さらに、黒い車の販売の禁止だけでなく、寒色系に塗装した車に対しても、太陽光を反射するコーティングを施すことも義務付けるというのだから、なかなかの徹底ぶりだ。

 私自身、夏場、炎天下に駐車していた黒い車に乗り込むと、室温の上昇ぶりには閉口させられた経験があるだけに、カルフォルニア州の判断は理解できるが、黒い車の販売はどこまで有効なんだろうか。

 いくらモータリゼーションの発達したアメリカとはいえ、広大なカルフォルニア州に占める車の面積比率なんてごくわずかだろう。ここで太陽光の反射率を高めたって、地球温暖化抑制にそれほど貢献しないんじゃないかって思うのだが・・・。

 http://www.arb.ca.gov/cc/cool-paints/final_cool_cars_workshop_presentation31209.pdf

 ※California Air Resouces Boardの方針がまとめられた“Cool Cars Standards and Test procedures”のPDFファイルが見られます。

 http://www.techcrunch.com/2009/03/26/california-may-ban-black-cars/

 http://wot.motortrend.com/6500391/government/no-black-cars-california-air-resources-board-proposes-shake-up-of-color-palette/index.html

 http://latimesblogs.latimes.com/uptospeed/2009/03/black-car-ban.html

2009年4月 2日 (木)

iPS細胞の産業応用は、まずは創薬スクリーニング用で・・・

 2006年に発表されたマウスの細胞を用いたiPS細胞の樹立以降、科学メディアでは、iPS細胞関連のニュースが喧しい。

 特に2007年のヒトiPS細胞(写真 京都大学のサイトより引用)の樹立の研究成果の発表以降、再生医療への応用という点で、iPS細胞への期待が論じられてきた。

Ips  かく言う私も、再生医療への応用を目指したiPS細胞の研究についての記事を何件か書いてきたわけだが、iPS細胞の産業応用は、再生医療ではなく、まず新薬の開発のために使われるんだろうなって考えていた。

 ご存知の方も多いと思うが、新薬開発において、人間に投与して薬効や安全性を確かめる臨床試験が実施される前には、必ず前臨床試験といって、マウスや人間の細胞を用いた実験が行われる。

 ただし、人間の細胞っていうのが、ものによっては簡単に手に入らないのだ。成人した人間の細胞(体細胞)では、ほとんど分裂能力がなく、培養しようとしても限界がある。その点で、iPS細胞から求められる細胞に分化させられれば、理論的には無尽蔵に細胞を生産できることになる。

 例えば、肝臓病の新薬を開発しようとしていれば、新薬候補となる化合物に薬効があるかどうかを肝臓の細胞を用いて確かめなければならないが、そこでiPS細胞を肝臓の細胞に分化誘導してやれば、望みの肝臓の細胞を得られ、化合物に薬効があるかどうかを確かめる実験も行えるというわけだ。

 昨年6月に、京都大学と慶応義塾大学が相次いで、iPS細胞から病気の状態の細胞を作る研究を始めるとアナウンスしたが、こうした新薬開発のための細胞を作ることを目的としたiPS細胞の産業応用の流れは、ますます加速していきそうだ(京都大学のリリースは以下のサイトを参照ください。慶応義塾大学のリリースは見つけられなかった・・・)

http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/2008/news7/080605_2.htm

 3月31日に発表された、新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)のリリース(以下参照)でも、リリースのタイトルでは、「iPS細胞の産業応用プロジェクト・・・」と銘打ってはいるものの、その内容は創薬スクリーニング(毒性評価)への応用に終始している。

http://app3.infoc.nedo.go.jp/informations/koubo/press/EK/nedopressplace.2009-01-21.8698110208/nedopress.2009-03-30.1967214600/

 もちろん、将来的にはiPS細胞の技術を活用した、患者自身の細胞による再生医療の実用化も期待できるのかもしれないが、少なくともここ数年のうちの産業応用を目指すとなると、創薬スクリーニング(毒性評価)への活用が現実的だということなんだろう。

 まぁ、経済産業省が管轄する独立法人である以上、NEDOとしては、近いうちの産業応用が期待される分野への助成に限られるのはわかるが、創薬スクリーニングへの応用を目指した研究に予算が集中してしまうようなことでいいんだろうか、と疑問を感じてしまうのだが・・・。

 文部科学省の独立行政法人である科学技術振興機構(JST)では、iPS細胞の臨床応用を目指した研究への助成も進められてはいるが、実用化がかなり先のことになるという理由から、再生医療への応用を目指した研究への助成が少なくなるようでは、iPS細胞から望みの臓器に分化誘導させるための技術を他国(主にアメリカ)が開発し尽くし、その部分の知財を、すべて押さえられてしまうなんてことにはならないかと心配になってしまう。

 数年以内の実用化は、創薬スクリーニングへの応用に限られたとしても、遠い将来を見越して、再生医療への応用を模索した研究への応援も期待したいところだ。

成層圏で新種のバクテリアを発見!

 我々の常識では、生物は地上か、海の中に生息しているものと考えられていた。近年、地中にも独自の生態系が存在するとして、「地下生命圏」という考え方に基づく研究も進められているが、まぁ、土壌中を生活圏としている微生物の存在は古くから知られているだけに、「地下生命圏」はそんなに突飛な考え方ではないだろう。

 では、空はどうかというと、これまでの常識では、飛翔能力を持つ、鳥類が利用しているぐらいで、そこで恒久的な生息環境としている生物はいないと考えられていた。

 ところが、インド宇宙研究機関(ISRO)が、3月16日に発表したリリースによると、成層圏を生活の場とする微生物が発見されたというのである。

 ISROのU.R.ラオ博士らの研究グループは、気球を使って地上20~41kmの成層圏の空気を採取。このサンプルを細胞分子生物学研究センター(CCMB)の研究者たちが分析したところ、12種類のバクテリアと6種類の菌類(fungal colonies)を発見したというのだ。

 遺伝子解析も行ったところ、PVAS-1、B3W22、B8W22と名付けられた3種のバクテリアについては、新種であることが明らかになり、高い紫外線耐性を持っていることも明らかになった。

 太陽からもたらされる紫外線は、成層圏にあるオゾン層によって吸収され、地上にまで降り注がないと考えられている。

 ということは、これら3種のバクテリアは、強い紫外線が降り注ぐ成層圏の環境に適応して、独自に進化したのだろう。そうなると、これら3種のバクテリアは、成層圏においてのみ、世代交代を繰り返してきたと考えられるわけだが、繁殖や栄養の摂取はどうやっているのかってのが気にかかるところだ。

 今回、発表になった研究成果では、これら3種のバクテリアの詳しい生態については紹介されていないので、まだまだ不明な点が多いのだろう。単細胞生物だろうから、分裂という繁殖方法をとっているのだろうが、栄養をのように得ているのか気になるので、今後の研究成果に期待したい。

 http://www.isro.org/pressrelease/Mar16_2009.htm

2009年4月 1日 (水)

スペースシャトルの後継機「ORION」を一般公開

 ライターとして駆け出しだった頃、記事を書いていた雑誌の一つに「Quark」という科学雑誌があった。残念ながら1996年に休刊になってしまったが、休刊の少し前に、現行のスペースシャトルの後継機として開発が進められていたX-33の記事が掲載されていた。

 今更ながらにWikipediaでX-33のことを調べてみると、1996年に開発開始と紹介されているところをみると、そのQuarkの記事は開発当初のものだったのだろう。

 X-33は主翼がなく、スペースシャトルと比べると、ずっぐりむっくりなボディシェイプが印象的で、決してかっこよくはないものの、個人的には好感のもてるデザインだと思っていた。デザイン的にスペースシャトルとほとんど違いのない、日本が開発を進めていたHOPE-Xよりは、「これまでにないものを作るんだ」という開発者の意気込みが感じられた。

 しかし、X-33は重量過多などが災いして、2001年に開発は断念。その後もスペースシャトルの後継機をどうするのかってことは、しばしば科学雑誌で紹介されてきたが、このほど、後継機とされるNASAの「ORION」が一般公開されたと、NASAがウェブサイトで伝えている(以下の画像のNASAのウェブサイトより引用)。

323574main_dscn2527_800600  この写真をご覧になられるとわかるとおり、ORIONは、スペースシャトル、X-33、HOPE-Xとは全く異なる哲学の下、開発が進められているようだ。

 現在は、ORIONと呼ばれているが、元々、NASAでは「CEV=Crew Exploratin Vehicle」と呼ばれていたことからもわかるように、このORIONはスペースシャトルのように大型の衛星を運ぶことを目的とせず、あくまでも宇宙飛行士の運搬を主目的としているようだ。そのため、デザイン的にはアポロ計画でのカプセルを大きくしたような感じだ。

 国際宇宙ステーション(ISS)の運用は2016年までなので、ORIONがISSに宇宙飛行士を運ぶこともあるのだろうが、スペースシャトルのような大型の資材を運ぶ必要はないのだろう。

 ただし、ORIONは次期有人月面着陸計画(コンステレーション計画)での運用を目指しているというが、月面には大型の資材を運ぶ必要はないんだろうか・・・。

 コンステレーション計画は、単に月面に宇宙飛行士を運ぶだけでなく、将来的な火星への有人探査の礎を築くことを目的としているなら、ORIONのような形状ではなく、スペースシャトルのように資材を対象に運べるもののほうがいいように思うが、どうなんだろうなぁ・・・。

 となると、本格的に月面基地建設は、さらに次の次の後継機に委ねられるってことなのかもしれない。

 さて、ORIONについての個人的な好みだが、う~ん、ちょっと苦手かなぁ。アポロ方式で帰還し宇宙船が海にぽちゃんと落ちるよりも、ケネディ宇宙センターに着陸するスペースシャトルのほうが好きなんだが・・・。

 http://www.nasa.gov/multimedia/imagegallery/image_feature_1318.html

 http://www.nasa.gov/mission_pages/constellation/orion/index.html

アイシュタインの脳の標本を新潟大学が保管

 相対性理論を生み出したことで知られる、稀代の天才物理学者、アルバート・アインシュタインの脳の標本が、新潟大学で保存されていると、3月30日付の新潟日報が報じている(以下の記事をご参照ください)。

 http://www.niigata-nippo.co.jp/pref/index.asp?cateNo=1&newsNo=158098

 新潟日報の記事によると、この標本はアメリカのアインシュタイン医科大学(Albert Einstein College of Medicine)の故ハーリー・ジマーマン博士から、新潟大学の生田房弘名誉教授が譲り受けたものとのこと。

 脳の標本といっても、切片化されてスライドガラスに固定されているものようで、顕微鏡で観察するとニューロンやグリア細胞が詳しく関節できるという。「固められた・・・」という表現があるので、パラフィンに包埋するなどして個体しているんだろう(以下の写真は新潟日報のウェブサイトより引用)。

 天才物理学者のアインシュタインの脳切片の標本ということで、記事の冒頭には「天才の秘密が詰まっている?」という書き出しで始まっているが、この標本から天才ならではの脳機能の秘密が明らかになるものだろうか・・・。

 顕微鏡で観察している限り、形態的な特徴は捉えられるかもしれないが、分子生物学的な考察はできないだろうから、可能ならば、そこまで踏み込んで研究してもらいたいところだ。天才に特異的な分子が見つかったりしたら、面白いと思うのだが・・・。

暑がり、寒がりの謎が解明された?

 私は他人と比べてかなり暑がりのようで、夏よりも冬が好きなんです。だから、世間では春になっていい季節になったと言われていますが、これから寒くなる晩秋と比べると、ちょっと憂鬱なんです。

 だから、暑がり、寒がりという個体差が何によって決まってくるのかということが以前から気になっていたのですが、この疑問を解明してくれるかもしれない研究成果が発表されました。

 京都大学化学研究所超分子生物学研究室の梅田真郷教授らの研究グループは、“暑がり”のショウジョウバエになる原因遺伝子を突き止めたというのです。

 京都大学のウェブサイトに公表されているリリース(以下参照)によると、梅田教授らは、通常、22~23℃を好むキイロショウジョウバエの遺伝子を無作為に改変したところ、低温を好む暑がりのハエがいる一方、高温を好む寒がりのハエ、周囲の温度に無頓着なハエがいることがわかりました。

 そこから17.5℃程度の低温を好むハエを選び出して詳しく調べたところ、ジストログリカンと呼ばれる糖タンパク質があまり作られなくなっていることが明らかになったというのです。ちなみに、このジストログリカンは、人間の遺伝病である筋ジストロフィーにかかわる分子です。

 今のところ、ジストログリカンが少なくなることで、どうして低温を好む暑がりバエになるのかは十分に解明されていないようですが、これまでの研究により、ジストログリカンが少なくなることで、細胞内のカルシウムイオンの濃度が上昇。これにより細胞内のエネルギーの代謝が高まって、低温を好むようになったんじゃないかって考えられているようです。

 ハエのエネルギー代謝については詳しくはないのですが、人間では脂肪細胞でのエネルギー代謝が高まれば、体温が高まることが知られています。体温が高まれば、エネルギーの消費が増え、燃費が低い体になってしまうのですが、体温が高いなら、低温環境でも生活できることになるわけです。

 つまり、今回明らかになったような遺伝子の変異が起これば、エネルギー代謝が高まり、より低温な環境への進出できる(低温環境に生息分布を広げられる)ことになるんでしょう。

 リリースの最後のほうでも「このような遺伝子の変異が繰り返されることにより、(中略)生物の生存域も拡大してきたと考えられます」と紹介しています。

 人間の場合、アフリカで誕生した後、ヨーロッパという、より寒冷な地域に進出したわけですが、この際にも何らかの遺伝子に変異が起こり、寒冷地に適応できるからだ(暑がりの体)を獲得したからこそ、分布を拡大できたのでしょう。

 ということは、暑がりの私は、他の人よりもエネルギー代謝が高く、燃費の悪い体をしているはずなのだが・・・。う~ん、太っているのはなんでだぁ?

 http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2008/090327_1.htm

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