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« オーストリア、CERN脱退を表明! 景気後退は科学研究にも悪影響を及ぼすか | トップページ | JSTニュース2009年5月号に記事を書いています »

2009年5月 9日 (土)

ウソを見抜けないといけない・・・と言われてもなぁ~

 近年、ネットの書き込みで“マスゴミ”なんて言葉が書かれているのを見ると、一般の方々のマスコミに対する不信感ってけっこう根深いのかなと思ってしまう。まぁ、ネット上での書き込みなので、多少は悪意を増しているのかもしれないが、こと科学メディアが読者の信頼を失っては始まらないと、自戒をこめて意識しているが、Technobahnに、科学メディアについて考えさせられる記事が掲載されていたので紹介したい。

 いつものように、詳しくは、以下のサイトをご覧いただくとして、記事内容のさわりを紹介しておくと、アメリカの科学雑誌「The Scientist」が報じたところによると、学術専門出版社エルゼビア社が、世界的な製薬企業のメルクの宣伝用の出版物『Australasian Journal of Bone and Joint Medicine』を、エルゼビア社のほかの出版物と思える体裁で発行していたというのである。

 残念ながら、その出版物の現物を見ていないので、どの程度、エルゼビア社の出版物に見えるものなのか判断できないが、私企業の宣伝目的の出版物をエルゼビア社の出版物を見間違うように発行しているのは、やはり問題があるだろう。

 もしかしたら、この記事の内容の何が問題なの理解できない読者がいるかもしれないので補足説明しておくと、研究成果を発表するいわゆる“学術雑誌”は、一般向けに出版されている科学雑誌と違って、査読者(レフェリー)の審査を受けて、掲載の可否が決まって制作されている。Nature、Science、Cell、The Lancetなどのトップジャーナルは、みなそれぞれの研究分野の世界的な権威に査読を依頼し、研究成果を吟味した上で掲載が強化される学術雑誌なのだ。学会が発行している雑誌(“Journal of ●●”というような雑誌タイトルのものが多いですね)も、同様の学術雑誌に当たる。

 そのため、こうした学術雑誌で紹介されている研究成果は、信頼に足るものと考えられる。もちろん、研究成果に対して異論を唱える研究者もいるだろうし、後からねつ造だったってわかって論文が取り下げられることもあるが、私のような一般向けの科学雑誌で記事を書いている科学ライターも、後追い取材をする上で、論文が掲載された雑誌がレフェリー付きかどうかっていうのは、その情報の信頼性を見極める上で重要な判断材料となる。

 そこで、今回、問題視されている『Australasian Journal of Bone and Joint Medicine』だが、これが誰も知らないような出版社から発行されたものなら、問題になることはなかっただろう。レフェリー付きかもしれないが、あまりメジャーな雑誌でなければ、多くの研究者に注目されないからだ。しかし、問題なのは、この『Australasian Journal of Bone and Joint Medicine』をエルゼビア社が発行していることにある。

 エルゼビア社は、Cell、The Lancetといった、レフェリー付きで、かつなかなか、掲載されることが難しいトップ・ジャーナルを発行している出版社であるため、『Australasian Journal of Bone and Joint Medicine』についても、「エルゼビア社の新しい雑誌なのか・・・」と思って読んだ研究者もいたことだろう。

 まぁ、メルクのような大企業が発行したものだから、あまりにも“トンデモ”な研究成果は掲載されていなかっただろうが、専門家の査読を受けていない研究成果が、まるで査読を受けたものとして読まれてしまうのは大いに問題がある。

 先にも書いたとおり、『Australasian Journal of Bone and Joint Medicine』の現物を入手できていないので、どの程度、“騙されやすい”ものだったかわからないし、それを読んだ研究者がどのように受け止めたのかわからないので、影響の程度は判断できないが、Technobahnの記事では「これが宣伝媒体だと見破ることができた研究者や専門医はこれまでにいなかったのが現状」と書いている以上、やはり「問題あり」だろう。

 Technobahnの記事のタイトルは、「嘘を嘘を見抜ける人でないと学術雑誌を読むのは難しい」と書かれているが、研究者や専門医でも、メルクの広告媒体と見抜けぬものである以上、ウソを見抜けと言われても、見抜けるものじゃないだろうな。

 学術雑誌の世界の話ではないが、一般向けの雑誌でも、編集部が制作したとしても、スポンサー企業の意向を受けて制作する記事(「記事広告」と呼ばれる)ものは、必ず「PR」とか、「記事広告」という言葉が加えられ、「広告なんですよ」ってことをわかるようにしている。

 一般向けの雑誌でも、そうした配慮をしているんだから、エルゼビア社ともあろう出版社が、広告なのに、まるで自社の出版物のようなものを発行するっていうのは問題があるわけで、少なくとも学術雑誌を発行している出版社が、私企業の広告媒体を発行する場合は、それとわかるような体裁にしておく必要があるだろう(たとえ、掲載されている論文の内容が嘘じゃなかったとしてもね・・・)。

http://www.technobahn.com/cgi-bin/news/read2?f=200905052120

 ではでは・・・。

 

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