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2009年6月

2009年6月30日 (火)

同じ研究成果でも、新聞によって理解しやすがこうも違うものか・・・?

 アルツハイマー病は社会的にも関心が高い話題だけに、新たな治療法の開発につながる研究成果は、新聞各紙がこぞって紹介していますが、複数の新聞が一つの研究成果を取り上げると、それぞれの紹介の仕方が違ってけっこう面白い。

 Nature Neuroscienceに掲載されたという、理化学研究所の林悠基礎科学特別研究員らの研究グループの研究成果が、いくつかの新聞に紹介されているのですが、最初、読売新聞の記事を読んだ時には、はっきり言って、「?」が百個ぐらい頭の中を駆け巡っていたんですよ。

 記事全文を引用すると著作権に抵触するだろうから、以下のサイトをチェックしていただきたいんですが、とにかく「神経が切れる」という表現の意味がどうにもこうにもわからなかったんですよ。ニューロンの軸索や樹状突起が切れてしまうのか、他のニューロンとつながるシナプスが切れてしまうのか(といっても、シナプスはつながっているわけじゃないですが・・・)、「脊髄の神経が切れる」っていう表現もあるので、神経細胞が束ねられている神経束がぶちっと切られてしまうとも理解できるが、これがよく分からなくて、その後を読み進めても、頭の中は「?」ばかり・・・。

 「原著論文を読まないと分からんかなぁ」と思って、他の新聞の記事をチェックしたら、毎日新聞でも紹介されていたので、チェックしてみると、こちらのほうがずっとわかりやすい。

 読売新聞で書かれていた「神経が切れる」は、毎日新聞でいうところの「人間は成長期に脳神経細胞同士が突起を伸ばして盛んにつながる一方、「刈り込み」という不要な接続の削除が行われる」の「刈り込み」のことを指しているわけで、毎日新聞の記事のほうがずっと理解す安いように思うんですが、いかがでしょうか?

 読売新聞にも、「赤ちゃんのころはいろいろな細胞同士が結合しているが、情報伝達の効率を上げるため、不要なつながりは切断されていく」という一文があるので、毎日新聞の記事を読んでから、もう一度、読売新聞の記事を読めば、十分に理解できる内容ではあるんだけど、記事の冒頭の「神経が切れる」って言葉に疑問を感じてしまうと、なかなか理解が進まないものですね。

 専門性の高い科学研究の説明を、どのように誰にでもわかる言葉に置き換えるかは、私自身、いつも苦心していることなので、この記事だけをもって読売新聞を断罪するつもりなんてまったくないんだけど、科学報道の難しさを改めて実感させられる両新聞の記事でありました。

 でも、人によっては、毎日新聞の記事よりも、読売新聞の記事のほうがわかりやすいっていう人もいるんだろうなぁ。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20090628-OYT1T00911.htm

http://mainichi.jp/select/science/news/20090629k0000m040117000c.html

 ではでは・・・。

2009年6月29日 (月)

ヤギの放牧で休耕田の雑草対策! イノシシ食害を防げるか?

 現在、仕事では細胞や遺伝子を扱う、ライフサイエンス関連の研究成果を紹介する記事を書くことが多くなっていますが、大学では動物行動学に関わっていたこともあって、20代の頃は野生動物関連の記事を書くことが多かった。

 今でも、時々、そうした記事を書くことがあるので、情報収集のために野生生物保護学会の大会にも参加するようにしているのですが、ここ数年、何度かイノシシの食害対策のために休耕田でウシを放牧するという取り組みの研究成果が発表されていた。

 森に隣接した休耕田が荒地化して、森と畑地の間にバッファ(緩衝地帯)ができることにより、イノシシが畑地に出やすくなったため、休耕田でウシを放牧することで、適度に草刈がされて、イノシシが出没しにくくなるとともに、ウシの臭いはイノシシを忌避することがあるということだったのだが、同じようにヤギも利用できるという記事が産経新聞が掲載していました。

 詳しくは、以下のサイトをご覧いただくとして、簡単に記事の内容を紹介しておきますと、茨城県笠間市で休耕田でヤギを放牧しようとしているのです。元々はウシの放牧を目論み、実証試験的にウシの放牧を実施していたようですが、地域の特性からウシの手配が難しかったようで、ヤギを利用するようになったといいます。主目的は雑草対策ですが、ウシよりも臭いが強いヤギを利用することで、イノシシへの忌避効果も期待されているようです。

 ただ、ヤギの放牧となると、ちょっと気になるのが、逃げたヤギの野生化です。管理された休耕田での放牧なので、簡単に野生化させてしまうことはないんでしょうが、小笠原諸島のように、野生化したヤギが自然な植生を荒廃させてしまうようなことはないかと少し心配になってしまいました。

 ヤギは放牧を実施する笠間市では、ヤギが電気策を飛び越えるほどの跳躍力をもっていることから、ヤギに首輪を付けて放すことを予定しているようなので、大丈夫だと思いますが、野生化したウシの問題はほとんど聞いた事がない一方、野生化ヤギの問題は小笠原以外でも聞いたことがあるだけに、ちょっと気になってしまいました・・・。

http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/ibaraki/090626/ibr0906260243000-n1.htm

 ではでは・・・

2009年6月28日 (日)

“第一人者”はこうして作られる?

 Yahooのニュースページでも紹介されていたので、チェックされた人もいるかと思いますが、リクルートのフリーペーパー「L25」に『夏は1年で一番基礎代謝が低い!!“太りにくい体質”を手に入れる方法』という記事が紹介されていたようです。

 詳しくは、以下のサイトをご覧いただきたいのですが、夏になって記憶が上昇すると基礎代謝が下がって痩せにくくなるってことを紹介しています。体温を一定に保つ恒温動物である人間にとっては、基礎代謝量には外気温が影響するのは当然であるので、Yahooのサイトで、この記事を読んだときは、「そんなん、当たり前じゃないの」と思ってしまいましたよ。

 まぁ、記事中でも触れられている通り、夏場は汗をかきやすいので、その分、痩せやすいと思われるのかもしれないけれど、それはただ脱水しているだけで、脂肪の別問題っていうことは意外にわかりにくいのかもしれないですね。

 その点で、いいところに目をつけた記事なのかもしれないけれど、ちょっと気になったのが、コメントを寄せている専門家に対する紹介の一文でした。

 記事中では、永田孝行さんという方のコメントが紹介されているのですが、「代謝研究の第一人者」とある。気になったので、ネットで調べてみたら、株式会社TNヘルスプロジェクト代表取締役で、TN健康科学研究所所長と紹介されておりました(※参照)。ダイエット関連の著書も多数発行されているようなので、一般的なマスコミ的には“代謝研究の第一人者”と言えるのかもしれないけれど、これをもって『代謝研究の第一人者」と紹介することには違和感を感じてしまうんですよ。

 別に、この永田さんがいいかげんなコメントをしているなんてことを言いたいわけじゃないんですが、“●●研究の第一人者”と紹介するからには、ちゃんと研究をしてくれている人じゃないといけないと思うんですよ。

 そこで、「Nagata T」をキーワードでPubmedを調べてみたら、3件の文献がヒットしたんですが、2件は農業生物資源研究所のNagataさんの論文で、残りの1件は和歌山医科大学と思われる研究機関に所属するNagataさんの論文で、L25が取材した永田さんとは別人のようです。つまり、Pubmedに収載されるような論文は一報も書いていない人のようです(日本語の論文を書いているかもしれないけれど、まともの“研究者”なら英語の論文を書くでしょう)。この事実だけをもって、永田さんが代謝の研究者ではないということはできないのかもしれないけれど、Pubmedに収載される論文を一報も書いていない研究者が、その分野の第一人者と呼べるのかどうか・・・。

 私自身、普段から研究者を取材しているけれど、「●●研究の第一人者」という表現は、避けるようにしています(過去、そんな表現を一回もやっていないとは言い切れないんだけど・・・。一般紙の場合、編集者が書き加えていることもあるので・・・)。研究領域それぞれで、“重鎮”と言える研究者がいることは間違いないのだが、過去、信じられてきた学説が覆されることが数多く起こっているだけに、重鎮だからといって、その人の言葉が絶対的に正しいとはいえないし、何より第一人者と呼ぶに値するかどうかの判断は、私にはできないからです。

 しかし、この“第一人者”って言葉は、マスコミでは安易に使われているように思うんですよ。紹介するコメントが間違いないものであることを読者に訴求するため、この言葉が多用されているのだろうけど、今回のl25の記事のように違和感を感じてしまうことは決して少なくはありませんから・・・。まぁ、一般的なマスコミ紙面で「●●研究の第一人者」と紹介されている時は、ちょっと警戒したほうがいいかもしれません。

http://l25.jp/index.php/m/WB/a/WB001120/id/200906251101/ccd/012/rfg/1

http://www.kouenirai.com/profile/378.htm(※)

 ではでは・・・。

2009年6月26日 (金)

文部科学省がiPS細胞研究のロードマップを発表しました

 ここ最近、世界的に研究開発競争が過熱状態にあるiPS細胞研究ですが、24日に文部科学省がiPS細胞研究のロードマップを発表しましたね。

 昨日は関西地方にある大学で午前中に取材があったため、早朝に外出したので、ロードマップが発表されたことは、正午過ぎに、付き合いのあるライフサイエンス系の雑誌編集者から聞ききました。夕方、ホテルにチェックインしてから、手持ちのパソコンで文部科学省のサイトからPDFファイルをダウンロードして確認したけど、けっこう強気なロードマップになっていますねぇ。

 iPS細胞を用いた再生医療をヒトに応用した研究を進める上で、安全なiPS細胞の作出法の確立や、疾患特異的iPS細胞の確立などに関して、目標年が設定されるのは、妥当なところかなって思うんですが、再生医療分野でのヒトへの臨床研究に関して、目標年まで明記しているのには、率直に言って驚かされました。

 例えば、赤血球については、アメリカで鎌状赤血球貧血症を対象としたiPS細胞を用いる再生医療の研究がすすめられいることを考えると、「10年後以降」を目標としていることは決して驚くことじゃないけれど(「10年後以上」だから「20年後」でも、30年後」でもいいわけだし・・・)、網膜色素上皮細胞は5年以内、視細胞は7年以内と設定しているじゃありませんか! 頼もしいんだけど、「本当にできるのか?」って突っ込みをいれたくなってしまいます。

まぁ、文部科学省が、こうした年限を区切ったロードマップを設定するっていうことは、それを実現させるだけの目算があるってことだと好意的に解釈すれば、これほど頼もしいことはないわけで、予算投入をはじめ、研究環境の整備に邁進してもらいたいところです(「絵に描いた餅」ってわけじゃないですよね)。

 でも、前臨床までならともかく、ヒトへの応用って、やっぱりハードルは高いんじゃないかなぁ。

 臨床応用の場合、文部科学省マターというよりも、厚生労働省マターになるんじゃないかと思うけれど、基礎研究では積極的に推進役を担っている行政も、いざヒトに応用、つまり、臨床研究するとなると、及び腰になってなかなか許可してくれないってことが、これまでもあったから・・・。実は、今日もガンの遺伝子治療の研究をしている研究者にインタビューをしてきたんだけど、行政の許可関係に大きなハードルを感じていると語っていました。

 とはいえ、こうしてロードマップが発表されたんだから、批判したってしかたがない。これを「絵に描いた餅」にしないためにも、強力なバックアップを期待たいものです。

http://www.lifescience.mext.go.jp/files/html/7_212.html

 参考までに、今回のロードマップに関する読売新聞の報道が読めるサイトもご紹介しておきます。

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20090625-OYT8T00259.htm

 ではでは・・・。

2009年6月25日 (木)

「寄生虫の奇妙な世界」が発売されました

 手前味噌な広告なんですが、誠文堂新光社から「寄生虫の奇妙な世界~寄生…驚きに満ちた不思議な生活」という本が発売になりました。

 私がレギュラーで原稿を書いている、科学雑誌「子供の科学」の編集部が制作している「サイエンス・ブック」シリーズの新刊でして、子供向けではありますが、寄生虫のほか、宿主の写真も網羅し、寄生虫のことをわかりやすく紹介しています。

 メインは人間に寄生する寄生虫のことですが、カニに寄生するフクロムシや、陸棲貝類に寄生するロイコクロリディウムなどのユニークな寄生生物についても紹介していますし、共生についても触れています。

 執筆が、すべて私が担当しましたが、監修で目黒寄生虫館の荒木潤研究室長にもご協力いただいております。

 いちおうAmazonでのアドレスも紹介しておきますので、機会がありましたら、ご一読いただければ幸甚です。

http://www.amazon.co.jp/%E5%AF%84%E7%94%9F%E8%99%AB%E3%81%AE%E5%A5%87%E5%A6%99%E3%81%AA%E4%B8%96%E7%95%8C%E2%80%95%E5%AF%84%E7%94%9F%E2%80%A6%E9%A9%9A%E3%81%8D%E3%81%AB%E6%BA%80%E3%81%A1%E3%81%9F%E4%B8%8D%E6%80%9D%E8%AD%B0%E3%81%AA%E7%94%9F%E6%B4%BB-%E5%AD%90%E4%BE%9B%E3%81%AE%E7%A7%91%E5%AD%A6%E3%83%BB%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9-%E6%96%89%E8%97%A4-%E5%8B%9D%E5%8F%B8/dp/4416209223/ref=pd_rhf_p_t_2

 ではでは・・・。

2009年6月24日 (水)

解明された白髪になるメカニズムは、医療応用できるか?

 白髪は老化現象の一つであることは誰もが知っていることだと思うが、そのメカニズムが解明されたと、共同通信などの複数のメディアが伝えている。

 詳しくは以下のサイトをご覧いただきたいのだが、東京医科歯科大学、金沢大学などの研究グループが、毛の色素を作る細胞の元になる「色素幹細胞」が、DNAの損傷を修復できなくなったため、徐々に色素幹細胞が枯渇していくことで、毛の色が失われていくことを明らかにし、アメリカの医学雑誌「Cell」に発表したというのだ。

 といっても、色素幹細胞が少なくなったことが原因で白髪になるという話は、以前から提唱されており、4月に出版された岡野栄之・慶応義塾大学教授著の『ほんとうにすごい!iPS細胞』(講談社)にも同様の話が出てきており、今回の発表は、従来の仮説では明らかになっていなかった色素幹細胞が枯渇するメカニズムを、マウスを用いた実験により明らかにしたということのようだ。

 私自身、20代の頃から白髪が目立つほどの若白髪なので、この記事は興味深く読ませてもらったし、Cellに掲載された原著論文も読んでみようかなと思っているのだが、この研究成果が実際に白髪の治療(といっていいのかな?)に活かされるかどうかについてはいささか疑問を感じてしまう。

 確かに、色素幹細胞が枯渇により、毛に色素を供給できなくなって白髪化するとなら、何らかの方法で色素幹細胞を培養して、白髪に悩む人の頭に移植するという治療法も期待されるのは理解できる。実際、以下の東京新聞の記事でも、「幹細胞を利用する再生医療やアンチエイジング(抗加齢)への応用が期待されるという」と紹介している(※現在、ネット上に記事が残っているのが東京新聞だけなので、以下に東京新聞の該当記事のアドレスを紹介したが、共同通信と同様の文章表現なので、共同の記事を東京新聞が転載したと思われる)。

 しかし、こうした幹細胞の培養や移植を実施するとなれば、その医療費は巨額なものになるとだろうから、実際に医療サービスとして白髪治療を実施したも、どれほど利用者がいるかどうか。

 当然、保険の適応は受けぬ自由診療になるだろうし、人間に用いる以上、幹細胞の培養環境に求められる衛生条件などはかなりハイレベルなものになるだろうから、施設面でのコストの増大は不可避だろう。しかし、白髪は死ぬわけではないし、白髪染めで十分に対処できることから、高額な費用を支払っても黒髪化するかどうか。若白髪の私自身、そのニーズは感じないんだが・・・。

 医療応用が難しいとしても、白髪のメカニズムを解明した研究成果の重要性は揺らがないと思うわけで、白髪の再生医療に言及したのは、共同通信の記者が、今回の研究成果が、どのように役立つのかってことを書こうとしすぎた故のオーバーランだったんだろうなぁ。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009061202000054.html

 ではでは・・・。

2009年6月23日 (火)

エクアドルで新種のカエル、トカゲを多数発見!

 以前、このブログで、マダガスカルで新種のカエルが数多く発見されたニュースを紹介したが、今度は南米のエクアドルでカエルなどの新種が発見されたと、国際的な自然保護団体コンサベーション・インターナショナルが発表した。

 エクアドル南東部のコンディジェラ・デル・コンドールと呼ばれる山岳地帯で、コンサベーション・インターナショナルのエクアドル事務所などが実施した調査により、4種の両生類(カエル、サンショウウオ)、1種の爬虫類(トカゲ)、7種の昆虫を発見したという。

 映画のETに似た両目が離れたサンショウウオ(私は犬のパグに似ていると思ったが・・・)、最大でも1.3cmしかない超小型のカエルなど、見た目にもユニークな見つかっているので、これらの写真が紹介されている、以下のサイトをご覧いただきたい。

 ただ、新種のキリギリスの写真だけはちょっと残念だ。というのも、このキリギリス、枯れ葉に擬態していると思われるのだが、鮮やかな緑色のコケらしき植物の上で撮影しているものだから、擬態っぷりがあまり活かされているようには思えないのだ。せっかくだったら枯れ葉の上で写真を撮ったらよかったのに・・・と思うのは私だけだろうか。

プレスリリース(日本語)

http://www.conservation.or.jp/Newsroom/Press_Release/2009_06/ecuadoret.htm

写真ギャラリー(英語)

http://www.conservation.org/fmg/pages/galleryplayer.aspx?galleryid=X86

 ではでは・・・。

2009年6月19日 (金)

メディカルバイオ2009年7月号で記事を書いています

 週明けの22日に書店に並ぶのですが、メディカルバイオ(オーム社)の2009年7月号で、原稿を書きました。

 1件は、「先駆者(プレカーサー)」という連載で、東京大学生産技術研究所の酒井康行教授に取材させていただき、移植に適した大型臓器を開発しようとする話を書きました。

 もう1件は、新型インフルエンザに関する特設記事で、こちらは2本のインタビュー記事で構成しています。日本大学医学部の清水一史上席研究員へのインタビューで、分子生物学から見た、今回の新型インフルエンザは何者なのかっていう話と、北海道大学人獣共通感染症リサーチセンターの喜田宏教授へのインタビューで、求められる対策について紹介しています。

 対策に関しては、異論もあるかもしれませんが、鳥インフルエンザのグローバル・サーベイランスを進めてきた喜田教授らしい、鋭い指摘は注目に値すると思います。

 新型インフルエンザについては、日経サイエンスやニュートンなどの科学雑誌が現在書店に並んでいる号で、それぞれに記事を掲載しています。メディカルバイオは隔月刊であるため、若干、遅れてしまいましたが、他誌と比べても、十分に厚みのある記事になったんじゃないかと自負しております。

 研究者向けの雑誌ですが、機会がありましたらご覧いただければ幸甚です。

http://www.ohmsha.co.jp/medicalbio/

 ではでは・・・。

2009年6月17日 (水)

2700億円の研究基金について内閣府が意見を募集しています

 以前、このブログで、政府が経済危機対策の一環として科学研究を支援するため、2700円規模の研究基金を設立しようとしていることを紹介したが、この基金に関して内閣府が意見の募集を始めたようだ。

 詳しくは以下のサイトをご覧いただきたいのだが、この研究基金は、今のところ仮称ながら「世界最先端研究支援強化プログラム」と名付けられたもので、今回の意見募集のプレスリリースの1文を引用すると「日本の国際競争力の強化等を目的として、将来、日本が世界をリードできる研究を政府が支援するもの」として設立されるという。

 そこで、内閣府としては、これからプログラムを推進していく上で、その参考となる意見を、国民から広く求めようとしているというわけだ。

 以前も書いたが、このプログラムについては、30チームを対象、1チーム当たり90億円を提供しようとする配分方法に、いささか疑問を感じてはいるが、基本的に研究費が増額されることはいいことだと考えているので、これを機に、広く一般の方々も、最先端の研究に興味を持ってもらい、理解を深めていってもらうことも重要だろう。

 プログラムでは、単に研究費を増額するだけでなく、サポートチームを結成し、研究者が研究活動に専念できるような支援もしていくというが、だったら、いつでに研究の広報活動を積極的に進めてもらいたいものだ。

 というわけで、ぜひぜひ以下の応募フォームから何でもいいから意見を送ってほしい。ちなみに、締切は7月12日だ。

意見募集に関するプレスリリース http://www8.cao.go.jp/cstp/pubcomme/st_20090612.pdf

応募フォーム https://form.cao.go.jp/cstp/opinion-0004.html

応募するにあたっての参考になるイノベーション例 http://www.cao.go.jp/innovation/action/conference/minutes/20case.html

 ではでは・・・。

2009年6月16日 (火)

生物多様性をかく乱しているのは外来生物だけじゃないんだけどなぁ

 外来生物法関連でブラックバス論議が活発だった頃、新聞やテレビといった、いわゆる“マスメディア”でも外来生物の問題はよく紹介されていた。しかし、外来生物法が制定されて以降、紹介すべき新たなニュースはないと判断されているのか、マスメディアで外来生物の問題はあまり紹介されていない。

 ところが、6月9日付の中日新聞に、外来種の問題を報じる記事があった。記事自体は、5月22日が国連が定めた「国際生物多様性の日」であったことと、来年、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が、名古屋で開催されるということで、地元の中日新聞が記事にしたんだろうが、つい「なんか久しぶりのテーマだな」と思ってしまったので、このブログでも、外来生物問題に触れてみたい。

 記事の詳細については、以下のサイトをご覧いただくとして、大まかな内容を紹介しておくと、外来生物によって日本の生態系がかく乱されるよ・・・っていう、スタンダードな外来生物論の展開に終始しているのだが、この記事で目立つのが、「多様性」という言葉だ。記事のタイトルにも盛り込まれているし、記事の後半「記者のつぶやき」と題されたコーナー(といっていいのかな?)でも、「生物多様性は浸透度が低いが、重要なテーマだ」と述べている。

 だけどね、生物多様性の問題を指摘するなら、その原因を外来生物だけに求めるのはちょっと視野が狭すぎるだろう。

 もちろん、無秩序な外来生物の持ち込みが大きな問題であるのは間違いないし、生態系をかく乱し、近縁の在来種がいれば、交雑による遺伝子汚染のリスクも見逃せない。ただし、こうした問題が外国から持ち込まれた生物だけでなく、国内移入種でも起こることがある。その点がまったく触れられていない点には大いに不満を感じてしまう。

 まぁ、移入種による生物多様性のかく乱問題となると、その原因が外来種に集約されてしまうのは、この記事に限った話ではないので、この記事だけをあげつらうのはアンフェアだと思うので、以下は一般論として読んでもらいたいのだが、生物多様性の問題を語る上で、国内移入種の存在はあまりにも無視されているのではないか。

 例えば、毎年6月になると、各地の川でアユの友釣りが解禁になるが、天然のアユだけで押し寄せる太公望に楽しんでもらえるだけの釣果を期待することは難しい。そのため、ほとんどの川(遊魚料を取っている川なら「すべての川」といってもいいだろう)で、稚アユの放流が行われている。

 では、その稚アユはどこから来るのかといえば、かつてはかなりの割合(7割を占めていたという)で琵琶湖産のものが放流されていた。最近でこそ、琵琶湖産の稚アユの放流は激減したというのが、それでも同一水系のものに限って放流している河川って聞いたことがない(もし、生物多様性の保全を意識した同一水系の稚アユしか放流していないって川があったらご教授願いたい)。

 日本全国、同じアユなんだから問題はないだろうと思われるかもしれないが、遺伝的に水系分化が少しは進んでいる可能性は否定できない以上、琵琶湖産の稚アユが各地で放流されることは、生物多様性をかく乱することになるだろう。

 同じことは、渓流釣りの対象魚種となっているイワナでも言えるのだが、長々と書き連れらねてしまったので、イワナのことは、また別の機会に譲るが、生物多様性を保全しておこうとすると、外来種だけを問題視しても、不十分であることは間違いない。

 というわけで、今回は、久々に外来種問題の記事を新聞で読む機会があったので、思うままに書いてみた。

http://www.chunichi.co.jp/article/technology/science/CK2009060902000127.html

 ではでは・・・。

2009年6月15日 (月)

認知症がうつるっていう研究成果が発表されたけれど・・・?

 認知症の一種であるアルツハイマー病は、神経細胞にアミロイドβが沈着するとともに、過剰リン酸化したタウタンパク質によって神経細胞の機能が損なわれて、認知症特有の症状が現れる。だが、この認知症が伝染する可能性を、スイスのバーゼル大学の研究グループが発表した。

 この研究報告は、Natureに紹介されてようで、日本の新聞では、私が見た限りでは日刊工業新聞が報じているので、詳しくは、以下のサイトをご覧いただきたいのだが、簡単に内容を紹介しておくと、遺伝子を操作して、ヒトの変異型タウタンパク質を共生発現させたマウスを作って、アルツハイマー病状態にしたマウスの脳の抽出物を、健康なマウスに注射。すると、健康なマウスにもアルツハイマー病の原因と見られる神経原繊維の変化が起こったことが確かめられたというのだ。

 これで実験的にアルツハイマー病が伝染する可能性が示されたことになり、科学的には興味深い研究成果だと思うが、この研究成果が医学の発展にどのように資するのかっていう点については、どうもピンとこない。

 というのも、他人の脳細胞の抽出物が自分の脳に入ってくるという状況は、実験的には作られたとしても、実生活ではありえることではない。そのため、現実にはありえない実験をもとに、「認知症がうつる?」(日刊工業新聞の記事タイトルのまま)と言われても、閉口してしまうほかない。ちなみにNatureのタイトルも「Can Alzheimer's disease be infectious?」で、日刊工業新聞と同じ意味だ。

 記事では、遺伝子を持たないタンパク質が病気を感染させる狂牛病(BSE)、クロイツフェルトヤコブ病などの「プリオン病」との共通点を示唆しているが(これはNatureの記事も同じ)、プリオン病の場合、異常型プリオンを含む部分を食べての感染であるため、直接注射するのとはまったく異なる。まぁ、今回の研究成果が、プリオン病の病理理解を進めることになればいいんだが、そこにも直接つながらないように思うんだがなぁ~。

http://www.nikkan.co.jp/news/nkx0620090609eaam.html

http://www.natureasia.com/en/highlights/details.php?id=363

 ではでは・・・

2009年6月14日 (日)

弱まる太陽活動 地球温暖化への影響は?

 今年の3月、太陽黒点がまったくなくなったことが明らかになり、太陽の活動が弱まっていることが報じられたが、朝日新聞(6月3日付)などでも同様のニュースが報じられていたので、紹介したい。

 詳しくは、以下のサイトをご覧いただくとして、簡単に記事の内容を紹介しておくと、太陽の活動は約11年周期で活発になったり、静穏になったりと、周期的に変動している。この周期に従えば、再来年には極大期を迎えるため、今は徐々に活動が活発化しているはずなのだが、太陽の活動を示す黒点がまったくなくなってしまったというのだ(黒点の数が多ければ多いほど太陽の活動は活発と言える)。

 ベルギーの太陽黒点数データセンター(SIDC)によると、黒点の多さを示す相対数は2008年は「2.9」で、過去100年間では1913年の1.4に次ぐ2番目の低さだったという。しかも、今年に入ってから、その数値はさらに低くなり、4月までの暫定数値はわずかに「1.2」。これは200年ぶりの低水準だというのだ。

 太陽の活動が弱まれば、地球にもたらされる熱エネルギーも弱まることになる。当然、地球は寒冷化に向かうわけで、過去、地球は寒冷だった時代は、太陽黒点が少なかったと言う研究報告もある。

 しかし、世の中では地球温暖化が、まるで既定の事実であるかのように扱われているが、気候変動の予測(地球温暖温暖化予測)をしている研究者たちは、こうした太陽黒点数の減少をどのように捉えているだろうか。

 先日も国立環境研究所の研究グループが、IPCCの第4時報告に向けて、世界各地の研究機関が実施した気候変動予測を下に、アジア地域での水稲生産量の予測をした結果を公開していたが(※)、2020年に高い確率で生産量が減少するとの警告的な結果を導き出していた。

 ただね、IPCCの第4次報告書時点での気候変動予測を下にした水稲生産量の予測であることを明記しつつも、こうして太陽黒点数が200年ぶりの低水準になっていることが明らかになっているなら、「高い確率で生産量が減少」というアジテーションに似た文言は避けるべきなのではないか。

 この予測を発表した研究グループには、国立環境研究所地球環境研究センター温暖化リスク評価研究室の江守正多室長も参加しているが、彼はエネルギー・資源学会での地球温暖化懐疑論の研究者たちとの論議(※※)の中で、ベルギー王立天文台(朝日新聞が紹介しているSIDCは、この王立天文台にある)が太陽黒点数データの世界標準であることを示唆している。

 ならば、当然、江守室長は、SIDCが太陽黒点数が減少していると発表している事実(それは太陽活動が現象していることも意味するわけだが・・・)も知っているわけで、そのことに言及せずに、IPCCの第4時報告の地球温暖化予測を下に、今、地球温暖化の影響を論じる姿勢には、大いに疑問を感じてしまうのだ。

 先に紹介したエネルギー・資源学会での論議のように、温暖化論者と温暖化懐疑論者がガチンコで論議していたのは、実に読み応えがあり、地球温暖化問題における科学的な論点整理にもなったが、だったら地球温暖化予測に基づき、将来の影響を予測する研究をしているなら、寒冷化を示唆する報告を無視するような研究成果の発表は慎重になるべきだと思うのだが、いかがだろうか。

http://www.asahi.com/science/update/0601/TKY200906010159.html

http://www.nies.go.jp/whatsnew/2009/20090605/20090605.html(※)

http://www.jser.gr.jp/activity/e-mail/honbun.pdf(※※)

※上記のエネルギー・資源学会の論議には続編があり、以下で見られます(トップページ右側をご覧ください)。資料も閲覧できるようになっています。

http://www.jser.gr.jp/

 ではでは・・・。

2009年6月13日 (土)

マグロの小型魚が豊漁 マグロ資源へのインパクトは大丈夫なのか?

 先ほど、Yahooのトップニュースにも挙がっていたので、ご覧になった方もいらっしゃるかと思うが、マグロの小型魚が豊漁だという。

 ソースは、時事通信の記事なので(以下をご参照ください)、簡単に記事内容をご紹介しておくと、6月上旬から日本海などでの定置網による漁獲が好調で、さらに巻き網の漁獲量も加わり、マグロの供給量は急増しているというのだ。その結果、卸売価格も2割程度下落したようで、消費者にとってはありがたい限りだが、ちょっと気になるのが小型魚の豊漁によって、マグロ資源へのインパクトだ。

 今回、豊漁になっている小型魚は、メジマグロ、ヨコワと呼ばれる4~5Kgの若魚で、未成熟の個体だ。その若魚が豊漁と言うことは、将来、次世代の生産する親魚になる魚を獲っているということになるので、マグロ資源へのインパクトは大丈夫なのかと心配になってしまう。

 残念ながら、時事通信の記事では、そうした水産資源保護の観点での言及はない。もしかしたら、今回の豊漁程度では大きなインパクトにならないほど、マグロ資源が回復しているというなら、私の心配はただの杞憂なのだろうが、IUCNのレッドリストに掲載されるほど、クロマグロの資源量は枯渇に向かっていると言われてきただけに、今回の降って沸いたような若魚の豊漁の報道を受けても、資源管理上、問題あるんじゃないかなぁ~って思ってしまうのだが・・・。

http://www.jiji.com/jc/zc?k=200906/2009061300061

 ではでは・・・。

“海の森プロジェクト”ってなんだかなぁ・・・

 「海の森プロジェクト」ってご存じだろうか。

 東京湾に浮かぶ埋め立て地に植樹を進め、美しい森を作ろうとするプロジェクトで、東京都が推進している。建築家の安藤忠雄氏が委員長になっているようで、環境にはよさそうだっていう印象を与えるプロジェクトに見えるんだけど、どうも釈然としないものを感じてしまう。

 詳細は、以下のサイトをご覧いただきたいのが、このプロジェクトの概要を紹介したページ(※)の一部を引用すると、「都市活動の結果に生じたゴミと残土の島を、植樹活動により海に浮かぶ美しい森に生まれ変わらせる循環型社会のシンボル」ってことなんだそうだ。

 だけどね、よく考えてもらいたいんだけど、いくら美しい森を作ったって、それは自然を破壊した結果である埋立地の上にできるものであって、自然に戻したことになるわけじゃない。自然に戻すんなら、埋立地を破壊し、本当の意味での“海の森”であるアマモの群落(アマモ場)を回復させるぐらいのことはやってもらいたい。

 というのも、この海の森プロジェクトのことを知ったのも、アマモのことを調べようとして、「海の森」をキーワードに検索したところ、ひっかかってきた。最初は、「へぇ~、東京都のアマモ場の再生事業を始めようとしているのか・・・」と早合点して、以下のサイトの説明を読み始めたのだが、その期待はもろくも裏切られてしまったというわけだ(裏切るもなにも、こちらの勝手な思い込みによる期待だったわけだが・・・)。

 本気で循環型社会を目指そうというのなら、こういう埋め立て地は、「もう絶対に作っちゃいけない」という教訓にするために、不毛な大地のままにしておいたほうがいいと思う。そのほうが、ゴミを出すことの意味を市民に知らしめる意味でも大きな意味があるんじゃないだろうか。

 そりゃ、不毛の埋め立て地よりも、緑の森が作られたほうが見た目にはいいっちゃいいんだが、「これでいいんだ」って思われると、環境保全、自然保護に対する理解をすごくゆがめた形で深めてしまうことになるように思えるのだが・・・。

 最近では、人間による開発の影響を可能な限り緩和する“ミティゲーション(mitigation)”という概念が知られるようになって、日本でも代償行為にフォーカスした取り組みが検討されている。本来、ミティゲーションは、代償行為(代償ミティゲーション)に限った話ではないので、これ自体、問題はあるのだが、この海の森プロジェクトは、海を埋め立てた開発の上に、海にはない森を作ろうっていうんだから、代償ミティゲーションにもなっていないと言えるだろう。

 さすがに、以下のサイトでも「海の森プロジェクトで自然保護を進めます」なんて、突っ込みが入りそうな説明はしていないけれど、「海野森には人間や都市と自然との共生を願う日本人の自然観が反映されています」なんてことが書かれているのには閉口してしまう。

 確かに、日本では、伝統的に自然を利用しながらも、独自の多様性を維持することができる“里山”を作り上げてきたわけで、人間の営みと自然とを共生させることは、日本人の自然観の中に備わっている価値観だとは思うが、だからといって大規模に埋め立てした土地に森を作ることと同次元に考えるのは無理があるだろう。

 結局、なんとなく環境にいいことそうに見える活動でしかないってことだと思えてしまうのだ。

http://www.uminomori.metro.tokyo.jp/index.html

http://www.uminomori.metro.tokyo.jp/outline_top.html(※)

 ではでは・・・

海の森には人間や都市と自然との共生を願う日本人の自然観が反映されています。

2009年6月12日 (金)

新型インフルエンザ WHOがフェーズ6を発表したけど・・・

 新型インフルエンザですが、WHOの警戒水準をフェーズ6に格上げした。

 ここ最近、日本の報道は鎮静化ムードになってきているけれど、感染は静かに拡大しているし、オーストラリアやチリなど、現在、冬になっている南半球の国々では、さらに急速に感染が拡大しているようで、WHOもフェース6に格上げするしかなかったのだろう。

 ただし、今、警戒水準がフェース6に格上げされてもどうもピンとこない。

 というのも、今回の新型インフルエンザは、季節性インフルエンザと比べると、致死率、感染力ともに高いと言われているようだが、この冬にさんざん紹介されていた、鳥由来のN5H1インフルエンザウイルスの高病原性と比べると、いささか拍子抜けしてしまう。

 過去の感染例では、N5H1インフルエンザウイルスの致死率は6割だったわけで、それと同じぐらいの病原性の新型ウイルスが来るぞ、来るぞと紹介され続けたことを思い出すと、今回の新型インフルエンザの致死率0.4%には、「なぁ~んだ、その程度なの?」と感じた人も多いのではないか・・・。

 それでも死者は出ているわけで、警戒すべきなのは間違いないんだろうが、警戒水準が最高レベルのフェース6に格上げされたのにはやっぱり違和感を感じてしまうのだ。

 そこで、今一度、WHOのウェブサイトを覗いてみて、この警戒水準の定義を確認してみたら、やはり感染が拡大しているかどうかを示す基準でしかなく、そのウイルスの病原性については考慮していない。

 ならば、感染が拡大しているかどうかを示す、現行の基準以外に、ウイルスの病原性を示す基準があっていいんじゃないだろうか。

 例えば、「新型インフルエンザウイルスの感染拡大はフェース6に格上げしますが、病原性のリスク評価はフェース4のままです」とかね。このフェーズ4ってのは、まったく勝手に書いた例えなので、その意味は問わないでいただきたいのだが、今後、ウイルスが病原性を変化させることも想定すると、こうした表現のほうが、我々が直面しているリスクを正確に理解できると思うんだが、どうだろうか。

 今後、感染の拡大が終息に向かったところで、病原性は高まったとしたら、今の基準でWHOはどう表現するのかも気になるところだ。

 病原性は高まっていても、感染は終息に向かっているなら、現在の基準なら、フェーズは格下げってことになるはずだろう。そこで、「フェーズは格下げしますが、リスクは高まっています」なんて言っても、うまく伝わわらないんじゃないか。やっぱり、感染拡大を示す基準のほかに、病原性を示す基準を示し、新型インフルエンザウイルスが持つリスクを一般の人々に正確に伝えられるようにしたほうがいいだろう。

 まぁ、WHOの担当者が、このブログを見て、警戒水準を改正しようなんてことはないだろうけど、今日、WHOが警戒水準をフェーズ6に格上げされた報道を見て、こんなことを考えたってわけだ。

http://www.who.int/csr/disease/avian_influenza/phase/en/index.html

 ではでは・・・。

イギリスの科学博物館が十大アイコンを発表!

 イギリスの科学博物館(Science Museum)が、創設100周年を記念して、科学の十大アイコンを選出し、発表した。

 詳しくは、以下のサイトをご覧いただきたいのだが、全部で10件なので、ここで紹介しておくと

 蒸気機関(1712年)

 スティーブンソンのロケット号(1829年)

 電信機(1837年)

 X線画像診断装置(1895年)

 T型フォード(1908年)

 ペニシリン(1928年)

 V2ロケット・エンジン(1944年)

 パイロット・ACEコンピュータ(1950年)

 DNAの二重らせん構造(1953年)

 アポロ10号のカプセル(1969年)

 が選ばれている。いずれも人類の科学史に燦然と輝く科学技術ばかりである。

 創設100周年を記念しての十大アイコンの選出ではあるが、1712年に開発された蒸気機関が選ばれていることからもわかるように、選出範囲は科学史全般に渡っているようだ。

 ならば、個人的には活版印刷技術とすべきなんじゃないかとも思うだが、活版印刷技術は科学の十大アイコンというより、文明の十大アイコンと呼ぶべきものなのかもしれない。

 それに、ワトソン、クリックによるDNAの二重らせん構造の解明以外が、開発した“もの”を選出しているだけに、DNAの二重らせん構造を、十大アイコンの一つとするのには、いささか違和感を感じてしまう。

 まぁ、そんな“いちゃもん”はさておき、今後、以下のウェブサイト上で、一般投票を受け付け、ベストワンを選出するようだ。日本からも投票できるので、上記の10件の中から選ぶしかないが、皆さんも参加されてはいかがろうか。

 十大アイコンと呼ぶには違和感を感じつつも、ライフサイエンスの取材をメインにしている科学記者としては、「これしかないだろう!」ってことで、DNAの二重らせん構造を選ばせてもらいました。でも、これ、最終的になランキングは低いんだろうなぁ・・・。

http://www.sciencemuseum.org.uk/Centenary/Home/Icons.aspx

 ではでは・・・

2009年6月11日 (木)

世界初! 名古屋に常設のサイエンスカフェがオープン

 「サイエンスカフェ」をご存じだろうか? コーヒーやお酒を飲みながら、研究者を交えて科学談義をする場として、最近、日本でも盛んに開催されているが、これまではイベントとして開催されるものばかりで、いつでも利用できるというものではなかった。

 私自身、毎年、秋に日本科学未来館で開催される「サイエンス・アゴラ」をはじめ、博物館などで開催されるサイエンスカフェを覗かせてもらったことがあるが、「こういう場が常設で運営されるようになればいいのに・・・」といつも感じていた。

 その常設のサイエンスカフェが、なんと名古屋にオープンしたというニュースを時事通信が報じているので、紹介したい。

 詳しくは、以下のサイトをご覧いただきたいのだが、記事内容を簡単に紹介しておくと、このサイエンスカフェは、名古屋駅付近のビルにオープンした「ガリレオ・ガリレイ」という施設で、店内に天体の立体映像が上映されていたり、宇宙色が展示されていたりするという。これだけなら、天文学、宇宙開発をテーマにしたコンセプト・カフェといったところなのだろうが、カフェのウェブサイト(以下のサイトをご覧ください)を覗いてみると、週一ペースで、研究者を招へいしてのイベントも開催するという。

 私自身、次回、名古屋地域に出張した際には、帰京の新幹線を遅らせてでも、ぜひ覗かせてもらいたいと思うし、一般市民の科学への関心を高めるためにも頑張っていただきたいと期待しているのだが、気になるのが、このカフェがどのように利用されていくのかっていうことだ。

 トークイベント以外の日でも、気軽に出かけてみたら、店員、お客さんが、科学談義に花が咲いているという雰囲気が作られれば、もう百点満点になるんだろうけど、こればっかりはお店だけでどうこうできるものじゃない。科学の知識の有無に関わらず、科学へのロマン、憧れ、時には科学技術に対する不信感、憤りだっていいから、お客さんも積極的に科学談義に加わるようになれば、世界初の常設型サイエンスカフェとして、素晴らしい先駆けになると思うのだが、いかがだろうか。

 以前、サイエンスカフェをテーマにした、NHKの「あすを読む」(2004年12月8日放送)で、科学ジャーナリストの小出五郎さんが、当時、すでにサイエンスカフェの取り組みが進んでいたイギリスでのルールを紹介されていたのが、実に印象的だった。このルールっていうのが、研究者をゲストスピーカーに迎えて行われるサイエンスカフェでのものなのだが、参加者が質問する際、「くだらない質問かもしれませんが・・・」とは言ってはならないというのだ。

 まぁ、研究者でもない一般市民が、研究者を前にして、自分の知識の足らなさを考えると、いつ「くだらない質問かもしれませんが・・・」とか、「あまり詳しくはないんですが・・・」といった前置きをしてしまう気持ちはよく理解できる。

 私自身、取材の前には、可能な限り、取材対象の研究者の論文を読むなどして、自分なりに論点整理をした上で取材に臨んでいても、いつ同様の前置きをしてしまうことはあるから、このルールって、なかなか実践しがたいものだということは理解できるものの、誰もが「くだらない質問かもしれませんが・・・」との前置きをして論議に加わっていたら、どんな知識レベルの人の疑問や意見でも取り上げるというサイエンスカフェの狙いが損なわれてしまうだろう。

 だから、サイエンスカフェにいったら、科学に詳しいかどうかなんて関係なく、積極的に科学談義を楽しんでほしい。過去、参加したサイエンスカフェの中には、参加者がお茶を飲みながら、ゲストスピーカーとして参加した研究者のトークを聞いているという状態自体は、サイエンスカフェの体を成しているものの、1時間のイベント最中、参加者はまったく口を挟まず、ただ研究者の講演を聞いているだけっていう会も決して少なくはなかった。

 といっても、サイエンスカフェなんてものに参加するのは初めてっていう人も多いだろうから、研究者のトークの最中に口をはさむのはけっこう難しいかもしれない。さらに、トークをしている研究者も、しっかり作ってきたパワポを見せながら熱のこもった講演をしてしまい、口をはさみこむ余地を作っていないことも、サイエンスカフェが、一方的に研究者の話を聞く講演会になってしまっている一因にもなっていると思う。

 その点、常設のサイエンスカフェができれば、サイエンスカフェの雰囲気になれた“常連さん”も現れることも期待できるし、こうした常連さんが、積極的な科学談義をリードしてくれれば、誰もが論議に参加できる雰囲気作りができればって期待もしてそいまうんだけど、どうなることか・・・。

 なにか、いきなり注文ばかりつけているようだけど、不況のご時世、常設のサイエンスカフェを開設しようとした運営会社の英断には拍手を送りたいし、世界初の常設サイエンスカフェの活性化に期待しての注文ということで、ご理解いただきたい。

http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2009060600171

http://sciencecafe.jp/

 ではでは・・・。

2009年6月10日 (水)

子供の科学7月号で干潟観察の記事を書きました

 本日(6月10日)より書店に並ぶ、子供の科学(誠文堂新光社)2009年7月号で干潟観察の記事を書かせていただきました。

 今では、埋め立てなどの開発が進み、めっきり減少してしまいましたが、河口周辺には山からもたらされた土砂が堆積し、これが干潟を形成しており、独自の生態系を作り出しています。そこで、今でも自然な状態の干潟が残されている、千葉県の小櫃川河口の盤洲干潟を訪ね、干潟観察の取材をしました。

 カニ類だけでも、チゴガニ、アシハラガニ、コメツキガニ、ベンケイガニ、クロベンケイガニ、マメコブシガニを観察でき、ニホンスナモグリ、ヤドカリ、アラムシロガイ、イボキサゴなどなどの様々な干潟の生物を観察できました。

 よかったら、この記事を読まれ、遊びにいってみてはいかがでしょうか・・・。

 以下の子供の科学のウェブサイトでは、干潟観察の取材時に撮影したチゴガニのダンスも見られます。併せてご覧ください。

http://kodomonokagaku.com/

 ではでは・・・。

2009年6月 8日 (月)

JSTニュース6月号でミクログリアの記事を書きました

 JSTニュースの2009年6月号で、ミクログリア細胞の働きを観察したという話題の記事を書いています。

 ミクログリア細胞は、脳で働く免疫細胞で、脳卒中なでど脳がダメージを受けた後、脳の機能が回復する際、このミクログリア細胞は働くことで速やかに機能回復が行われると考えられていたのですが、自然科学研究機構生理学研究所の鍋倉淳一教授らの研究グループが、二光子レーザー顕微鏡を用いて、生きた動物の脳の中で働くミクログリアの様子を観察することに成功し、これまでの仮説を確かめたという話題です。

 二光子レーザー顕微鏡も、あまり聞きなれぬ名前かと思いますが、わかりやすく紹介しております。

 このJSTニュースは、全国の科学館、博物館で配布されているほか、インターネットでも読めますので、良かったら以下のサイトをご覧ください。

http://www.jst.go.jp/pr/jst-news/2009/2009-06/page08.html

 また、この記事の元ネタとなるプレスリリースのアドレスは以下になります。併せてご覧ください。

http://www.jst.go.jp/pr/announce/20090401/index.html

 ではでは・・・。

2009年6月 6日 (土)

魚のストレス検診が、漁業を救うか?

 ストレスが健康に悪影響を与えることは、今では多くの方が知っていることだが、それは人間だけでなく、魚類でも同じこと。過度なストレス負荷が長く続けば、、養殖漁えも、健全な発育に悪影響が及ぶだろうし、ひいてはおいしい魚を作ることを妨げることにもなるだろう。

 そこで、ヒラメの養殖では全国一の生産量を誇る大分県が、病気を未然に防ぎ、健康なヒラメを育てるため、養殖ヒラメのストレス検診を始めたというニュースを朝日新聞が報じているので、紹介したい。

 いつものことながら、詳しくは以下のサイトをご参照いただくとして、簡単に記事内容を紹介しておくと、前述の通り、大分県はヒラメ養殖では全国いつの生産量を誇っているが、一部のヒラメの腹部が膨れたり、目玉が出たりするといった症状が出ており、その原因はストレスや感染症だと考えられていた。ならば、こうした病気を予防するには、まずストレスを与えず、健康なヒラメを育てる環境を整えることが重要だと考え、養殖ヒラメのストレス検診を始めることになったという。

 ストレス検診の方法は、人間の医療研究にも利用されている方法と同じもののようで、ストレスにさらされた時に、血液中で増減するタンパク質を検出する「抗体・プロテインチップ」が用いられる。記事中では具体的なタンパク質の名称は示されていないが、ストレスへの応答として分泌されるコルチゾールによって代謝されたタンパク質を測定しているのだろう。

 こうしたストレス測定を実施し、養殖ヒラメの変調の原因がストレスであるとわかれば、「過密状態を解消する」「水温を調整する」などの対応をとって、養殖ヒラメに加わっているストレスを軽減していくというのだ。

 従来なら、何か変調があれば、薬を使って・・・ということになっていたのだろうが、原因が、感染症であるならともかく、ストレスであれば、薬を用いても症状の改善は望めないだろう。結果的に養殖魚は薬漬けになってしまう。その点、ストレス検診を実施すれば、養殖魚の変調の原因を明らかにした上で、薬の使用を判断できることになるので、より安全な(「安心な」といったほうがいいかな?)養殖の実現にも寄与すると期待できる。

 で、ここからは記事の内容から逸脱するが、こうしたストレス検診は、生きた動物を扱う第一次産業に、もっと活用されていいと思う。ウシ、ブタ、ニワトリといった家畜、家禽に対してストレス検診が実施されているかどうかは不勉強なので、ここでは触れないが、実は養殖ではなく、魚を獲る漁業でもストレス検診(というか、ここは「測定」といったほうがいいな)を実施し、漁業のエコラベリング化をする研究が進められていたことがあった。

 というのも、一口に漁業行為といっても、据え置いた漁網に魚が入ってきたところを捕える定置網がれば、魚群を追いかけて一網打尽にするトロール漁業など、さまざまなものがあり、魚に加わるストレスには大きな差があると思われる。

 水揚げした魚については、ストレス負荷を考える必要はないが、問題なのは網から逃げてしまった魚へのストレスだ。なんとか網から逃れることができても、強いストレスが加わったことで、魚が死んでしまうようでは、水産資源へのインパクトは、漁獲統計であらわされる以上に大きなものになっている可能性がある。

 そこで、漁法それぞれで魚に加わるストレスを計測し、たとえ漁獲量が少なくても、水産資源に与えるインパクトを測定できないかという研究が進められていた。いわば「漁業のエコラベリング」を実施しようというわけだ。

 こうした研究を進めている、ある大学の研究者に取材をしたことがあり、実に興味深い取り組みだと思ったのが、漁業のエコラベリングを実現するだけの魚のストレスのデータを集めることって意外に難しいというのだ。

 実は魚の場合、人間に触れられること自体が、非常に強いストレスになる。そのため漁法別にストレスの違いを明らかにしようとしても、ストレスホルモンを測定するための採血行為が、最も強いストレスにとなり、漁業行為によって加わったストレスだけを正確に測ることはできないのだ。そのため、なかなか研究が進まないと、取材に協力してくださった研究者は嘆いておられた。

 ならば、今回の大分県の取り組みも、測定されたストレスがが、養殖生簀の環境に起因するものなのか、ストレス測定のための採血に起因するものなのか、どうやって区別するのか気になるところだ。この取組は興味深いものだけに、うまくいってもらいたいと思うだけに、その成果についての続報もお願いしたいところだ。

http://www.asahi.com/science/update/0530/SEB200905300002.html

http://www.asahi.com/science/update/0530/SEB200905300002_01.html

 ではでは・・・。

2009年6月 5日 (金)

ロバート・ランザの研究成果じゃ臨床試験は難しいかもっていう話

あ 先週末、iPS細胞の樹立法に関するロバート・ランザの研究成果に触れ、臨床試験さえ予定していることを紹介させてもらったが、その後、付き合いのある科学雑誌の編集者などと話す機会があって、臨床試験って話はちょっと行き過ぎなんじゃないかって話になってきたので、この研究成果ついて再度、考えてみたい。

 簡単におさらいしておくと、従来のウイルスベクターによる遺伝子導入でiPS細胞を樹立する方法では、iPS細胞が高い確率でがん化してしまうので、再生医療などに用いるには、がん化を抑え、いかに安全にiPS細胞を樹立する方法を開発するかがカギとなっていた。

 そこで、先日、紹介させてもらったロバート・ランザの研究グループは、遺伝子導入によって体細胞を初期化していた4つの因子(Oct3/4、Sox2、Klf-4 c-Myc)のタンパク質に、細胞膜を透過しやすいように工夫を施した上で、細胞に導入し、初期化(iPS細胞化)することに成功したのである。これでがん化のリスクはなくなったということで、臨床試験に臨めると、ロバート・ランザらは語っているというのだが、これがちょっと行き過ぎじゃないかってわけです。

 まず、遺伝子の導入はいないといっても、がん遺伝子のc-Mycのタンパク質を導入しているんだから、がん化は高まるだろう。繰り返しタンパク質を導入しているから、がん化のリスクはゼロになったとはいえないんじゃないかと思うのだが・・・。

 また、この研究成果で用いているのが、新生児の繊維芽細胞であることも気にかかる。新生児の細胞と成人の細胞を比較して、どの程度、増殖能、分化能が高いのかはわからないが、今回の研究成果が新生児の繊維芽細胞を用いて得られたものである以上、成人の体細胞を用いれば、初期化の効率はさらに下がる可能性は否定できないのではないか。ならば、この研究成果のまま臨床試験に進むことは難しいかもしれない。

 さらに、イギリスの科学雑誌The Sicentistの記事(以下のサイトをご参照ください)で、遺伝子導入に比べ、体細胞を初期化できる効率が10分の1だそうで、これでは臨床試験は難しいのではないかと懐疑的な意見を投げかけている。う~ん、臨床試験っていうのは、単なるブラフとみるべきだろうか。

 もちろん、この研究成果のままでの臨床試験は難しいとしても、これを基礎として、さらに初期化効率の高い方法が開発されるかもしれないから、決して無駄な研究成果というつもりはないが、ランザらが言う「臨床試験に進める」というのは額面通りに受け止められないかもしれないってことは、付け加えておいたほうがいいかなって・・・(まどろっこしくてすみません。騒いでいたのは私ですからね。反省です)。

http://www.the-scientist.com/blog/display/55738/

 ではでは・・・。

iPS細胞研究の進展の早いこと、早いこと・・・・

 先週末に、ロバート・ランザの研究グループが、リコンビナントタンパク質の導入で、ウイルスベクターによる遺伝子導入に頼らず、iPS細胞の作製に成功したニュースを紹介したが、5月31日付のNatureのオンライン版に興味深い研究成果が発表されたので紹介したい。

 共同通信や時事通信も紹介しているので、併せて、そちらもチェックしてもらいたいのだが、簡単に紹介しておくと、アメリカのソーク研究所の研究者ら(※)の研究成果で、血液に異常が起こる遺伝性の病気であるファンコニ貧血の患者から細胞を採集し、病気の原因遺伝子を修復して、これからiPS細胞を作って、しかも、正常な細胞まで作ってしまったというのだ。

※すみません。ラストオーサーのJuan Carlos Izpisúa Belmonteの発音が分からなくて・・・。「フォアン・カルロス・イズピスア・ベルモンテ」かなぁ。

 一気に研究成果のエッセンスを書いたのでわかりにくかったかもしれないが、要は遺伝子に異常のある細胞でも、遺伝子を修復してからiPS細胞を作れば、正常な細胞を作れるってことを、ファンコニ貧血の患者の細胞を用いて成し遂げたってこと。いやぁ~、すごいですよ。

 iPS細胞を用いたセルセラピーを進めう上で、大きな課題となっていたのが、遺伝子異常の修復だ。過去、ハーバードの研究グループが鎌状赤血球貧血症の患者の細胞から正常な赤血球の作り出すことに成功したなんてニュースもあったように記憶しているが、こうした遺伝病がある以上、いくら患者の細胞からiPS細胞を作って、そこから必要な細胞を作り出しても、遺伝子に異常がある以上、再発する恐れは残ってしまう。

 その点、今回の研究成果のように、病気の原因の遺伝子異常を修復してから、正常な細胞を作り出して、患者に移植することができるようになれば、遺伝病の治療は飛躍的に進むだろう。遺伝病患者にとっては待ち望んでいた研究成果といえるんじゃないだろうか。

 すごいんだが、また、アメリカの研究機関に先を越されましたね。コオーサーの所属機関をチェックしてみると、今回は、スペイン、イタリアのラテンヨーロッパの研究機関との共同研究であることがわかるが、やはり日本はどんどん取り残されているのかなぁ。

http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/abs/nature08129.html

http://www.47news.jp/CN/200905/CN2009053101000610.html

http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2009060100021

 ではでは・・・

韓国のロケット打ち上げ。日本は難しい対応を迫られるんじゃないか

 北朝鮮が人工衛星を打ち上げようとした際、ミサイル(飛翔体?)であるとして日本政府は強い懸念を示していたことは、未だ記憶に新しいことだろう。ただし、この時、「韓国が宇宙開発しようとしてももめるのかなぁ」と思っていたが、やはりこの懸念はあたっていたようで、韓国航空宇宙研究所(KARI)は、初の国産ロケットの打ち上げを延期していたようだ。

 このニュースは、Technobahnに紹介されているので、詳しくそちらをご覧いただきたいのだが、韓国発の国産ロケットは「KSLV-1」と呼ばれるもので、ロケットエンジンはロシアからライセンス供与されたようだ。つまり、国内生産とはいっても、韓国独自に開発されたものではないようだ。明確な打ち上げ時期は発表していないようだが、記事では7月中の打ち上げを予定しているという。

 で、そこで問題になるのが、日本、そして、北朝鮮の対応だろう。現在、各問題から、韓国・北朝鮮の関係は冷え込んでいるから、北朝鮮はどんなことでもいちゃもんをつけるだろうから、反応は読めるが、日本はどのような対応にでるのだろうか?

 北朝鮮の飛翔体(とりあえず、この表現でいきます)の打ち上げの際は、日本の国土に落下するかもしれないと反発したとすれば、韓国から打ち上げられるロケットも同様のリスクをはらんでいるのではないだろうか。

 Technobahnの記事でも、「北朝鮮に続いて韓国もロケットの打ち上げ実験を実施した場合には、北朝鮮のロケット打ち上げを暗に容認し、南北朝鮮は一体となってロケット開発を推進していると、国際的に受け取られる可能性がったため政治的配慮から打ち上げは延期されていた」と紹介しているだけに、韓国も日本、そして国際社会に配慮する姿勢を示しているわけだが、かといって、今後も北朝鮮の飛翔体打ち上げを容認しない姿勢を示すとすれば、日本は韓国の打ち上げを容認すべきではないのかもしれないが、それもまた難しいだろう。

 いちおう韓国は日本上空を通過いしないよう、射点から南南東の方向に向けて打ち上げるとしているだけに、この点を強調し、韓国のロケット打ち上げは、あくまでも平和利用であるとして認めることになるんだろうなぁ。

 しっかし、日本より苦慮しているのは韓国だろうな。記事中で「仮にKSLV-1の打ち上げ前に再び北朝鮮がロケットの打ち上げ実験を実施した場合にはKSLV-1の打ち上げは再々延期される恐れも残っている」と書いており、韓国の宇宙開発機関も難しい選択を迫られているようだ。

http://www.technobahn.com/news/200906041132

 ではでは・・・。

2009年6月 4日 (木)

寄生虫の代謝に着目して副作用のない抗がん剤を開発できるかも・・・

 がん細胞は、正常な細胞と比べて活発に分裂しているため、多くの栄養、酸素を必要とする。そのため自ら血管新生新因子を分泌して、がん組織に血管をひくことまでしているのだが、それでもなおがん組織の内部は酸欠状態に陥ってしまうことがあるようだ。

 通常、動物の細胞は酸欠状態に陥ると死んでしまうものだが、酸欠状態でも死なないがん細胞には、特殊な代謝機能を備えていると考えられる。

 こうした点に注目して、これまでにない抗がん剤が開発されるかもしれないという研究成果を、毎日新聞が報じていたので紹介したい。

 いつもながらに、詳しくは以下のサイトをご覧いただくとして、簡単に説明しておくと、慶応義塾大学先端生命科学研究所と国立がんセンター東病院の共同研究により、酸欠状態でも生き続けられる、がん細胞の代謝機能を解明したのだが、そこで参考にしたのが寄生虫の回虫の代謝機能だったという。

 実は回虫も、がん細胞と同じように、酸欠状態でも生き続けられ、フマル酸をコハク酸に代謝によってエネルギーを得ている。この過程は酸素がない条件(嫌気的な環境)でも起こる代謝であり、「フマル酸呼吸」と呼ばれている。一方、動物の正常な細胞は酸素を取り込んで、エネルギーを得るクエン酸呼吸であるため、酸欠状態で死んでしまうのだが、がん細胞の場合も、フマル酸呼吸により、酸欠状態でも生き続けられることが明らかになったというのだ。

 しかも、回虫を退治する駆虫薬(虫下し)の中には、このフマル酸呼吸を阻害するものもあり、これをがん組織に持ちいえば、がん細胞の代謝を阻害することになり、殺すことが期待できる。実際、酸欠状態でも生きられるがん細胞に、フマル酸呼吸を阻害する働きをもった駆虫薬を与えたところ、がん細胞が死滅したという。

 人間の正常な細胞はフマル酸呼吸はしていないため、この駆虫薬がフマル酸呼吸を阻害することによる直接的な副作用はないと考えられるため、この研究成果をもとに、副作用のない抗がん剤が開発されると期待されている。

 もちろん、今回の研究成果は、がん細胞を使った実験(in vitro)であるため、今後、動物実験などで十分な効果を検証した後、臨床試験に進まなければ、実用化はできないが、治療が難しいとされるすい臓がんの細胞で効果があったことから、これからの研究の進捗が待たれるところだ。着眼点のユニークな興味深い研究成果だけに、今後の期待したい。

http://mainichi.jp/select/today/news/20090603k0000m040124000c.html

 ちなみに、この研究成果は、2009年4月11日放送のNHK教育テレビの「サイエンスZERO」でも紹介された。再放送の機会があるかもしれないので、その際はぜひチェックしていただきたい。

http://www.nhk.or.jp/zero/contents/dsp253.html

 ではでは・・・。

2009年6月 3日 (水)

脳手術後に芸術的才能が開花した!?

 脳科学関連の取材をやっていると、基本的には同じ仕組み、構造である脳を持っているにもかかわらず、人それぞれで、脳が生み出すことがこうも違うのかって驚かされることがある。だから、才能ってどのように生まれてくるのかって興味があるのだが、この興味に関連した話題を時事通信が報じていたので紹介してみたい。

 一時期、Yahooのトップニュースにも扱われていたので、ご存知の方もいらっしゃるかと思うが、簡単に紹介しておくと、イギリスに住む男性が、6年前に脳の動脈瘤の発作位により倒れ、脳手術を受けた後、奇跡の回復を果たすと、それまでなかった天才的な画才を獲得していたというのだ。

 絵を描くきっかけは、集中治療室に入っていた2ヶ月間の間に、絵を描くことを勧められたことだったそうだが、それにしても2ヶ月間で絵を描く才能が急速に高まったとは考えられないわけで、脳手術がきっかけで脳の回路に変化が生じて、それまでなかった画才を発揮させたということなのだろう。脳手術ではなく、その前に起こった脳動脈瘤による発作が原因かもしれないが・・・。

 記事では、脳損傷者団体の関係者の「脳の損傷の後遺症の大半が機能性マヒ。まれに新たな技術や細胞が発見されることがある(後略)」とのコメントを紹介しているように、こうした例は、このイギリスの男性だけというわけではない。何らかの原因で脳に損傷を負った後、芸術など才能を開花させるという例はけっこう報告されている。

 脳機能によって芸術的な才能を開花させた例としてはサヴァン症候群を思い出す。日本の民放が作る脳科学番組はサバン症候群が好きなので(見た目にインパクトありますからね)、しばしば紹介されているため、ご存知の方もいらっしゃるかと思うが、サヴァン症候群は、自閉症の患者の一部に、記憶や芸術的な分野で、類稀な能力を発揮する症状で、多くは先天的なものだが、今回のイギリスの男性のように後天的な病気、事故をきっかけに、それまでなかった能力を発揮することがあるという。今回の例について、記事中でサヴァン症候群という言葉はなく、その関連を示唆する表現もないが、私はついサヴァン症候群と関連付けて考えてしまった。

 そこで、触れておきたい科学雑誌の記事があるので紹介しておこう。2002年9月号の日経サイエンスに掲載された「右脳の天才 サヴァン症候群の謎」と題された記事で、ここでも先天的なサヴァン症候群に加え、老人性痴呆の一種の前頭側頭型痴呆(FTD)が原因となって絵の才能を開花させた、後天的サヴァン症候群が紹介されている。

 しかも、芸術的才能を発揮させたFTD患者7人を調べたところ、左脳に損傷があったというのだ。

 ならば、左脳の損傷により、右脳の機能が亢進し、芸術的才能を開花させたなんてことも考えられると思うのだが、どうだろうか?

 実際、脳機能を研究しているオーストラリアの科学者、アラン・スナイダーは経頭蓋磁気刺激(TMS)により、一時的に左脳の機能を抑えて、右脳の働き亢進し、芸術的才能を発揮させることができるという“Thinkig Cap”というデバイスを開発したと報じられたことがあったが、こちらはどうなったんだろうか。一部に批判はあるようだけど・・・。

 いずれにしても、脳の損傷によって、芸術分野での才能を発揮するようになった人がいることは事実なので、今回の記事を含めて、詳しい研究が進められることを期待したい。

http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2009060200077

http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0209/savan.html

※日経サイエンス2002年9月号は、すでに入手は難しいと思われますが、該当記事はダウンロード購入できるようなので、ご興味のある方はご覧ください。

http://wiredvision.jp/archives/200204/2002042301.html

 ではでは・・・。

若手研究者の海外渡航は進んでいるようだ

 文部科学省が日本の若手研究者の海外武者修行をサポートする政策を検討しているニュースを受けて、日本の若手研究者について論じてきた。特に昨日、アップさせてもらったJSTのサイエンスポータルのレビュー記事を受けて、若手研究者のメンタリティに触れたが、真逆の報告もあるので紹介したい。

 紹介したいのは毎日新聞の記事(5月30日付)で、大阪府立大学の浅野雅子准教授の調査により、若手研究者の海外流出が加速しているという。国が常勤職を確保しないままポスドクを増やした結果、職を得られず、海外に渡航するものが増えており、たとえ日本で職を得られたとしても、就職するまでの間に平均6.4年もかかっているというのだ。

 浅野准教授は、素粒子論の研究者で、今回の調査は素粒子論研究者で作る学術団体「素粒子論サブグループ」の名簿(1998年~2008年)を元に実施したものなので、若手研究者は素粒子科学の研究者に限られるが、毎日新聞の記事では、「他分野でも同様の傾向があるとみられる」と紹介している。

 で、この記事の内容をどう読むかだが、記事の論調は、せっかく育てた若手研究者を海外流出させてもいいのか・・・という論調になっている。明確に海外流出を止めなければならないとまでは書いているわけではないが、「日本の将来の科学技術発展への影響が懸念されそうだ」と書いていることを考慮すると、若手研究者の海外流出をネガティブに捉えていることは間違いないだろう。

 しかし、私自身、ここ数日書いてきたように、研究者たるもの、職場はどこであれ、研究ができればいいわけで(もちろん、施設や予算の問題はあるが、研究者としてのスキルアップはできるだろう)、若手研究者の海外渡航は大いに歓迎すべきことだと思う。

 昨日のブログでは、JSTのレビューで紹介されていたアジアの研究者が抱いている、日本の若手研究者に対する印象から、問題の本質は日本の若手研究者の内向的なメンタリティになるのかもしれないと書かせてもらったが、実際は、したたかに海外に渡航し、自ら研究者の途を切り開いているということなのだろう。

 ただね、ならば問題になるのは、そうした海外渡航組の研究者が海外の研究機関でスキルアップして帰国した際、ちゃんと受け皿を作れるかということになるだろう。ここ最近、私が記者会見で話を伺った中では、例えば、iPS細胞の産みの親である京都大学の山中伸弥教授や、インフルエンザウイルスの研究で知られる東京大学の河岡義裕教授が、記憶後、研究費を調達するのに苦労したというような話をされていたように記憶している。

 実際、海外武者修行から帰国した研究者が、日本の研究機関への就職や、研究費の調達で、どのように苦労しているのか(逆に苦労していないのか)を調査したレポートを見たことがないので、なんとも言えないが、日本での研究者人脈が弱いと、就職や研究費調達でデメリットがあるなら、大きな問題なんじゃないだろうか。

 5月30日に、このブログで、文部科学省が若手研究者の海外渡航をサポートを検討しているという報道を紹介させてもらったが、こうした政策を進めるなら、同時に海外の研究機関に属する日本人研究者が帰国する際、日本の研究機関への就職や研究費の調達をサポートする制度も設けなければならないと思うのだが、いかがだろうか。

http://mainichi.jp/select/today/news/20090530k0000e040077000c.html

 ではでは・・・。

2009年6月 2日 (火)

問題の本質は若手研究者のメンタリティにあるのか?

 ここ数日、日本の若手研究者の海外武者修行に関するネタで記事を書かせていただいてきたが、このネタに関連して、気になる記事が日本科学技術振興機構(JST)が運営するサイエンスポータルに掲載されていたので紹介したい。

 記事のタイトルは「アジアの有能な研究者を呼び寄せるには」というもので、そのまんまアジアの優秀な研究者を日本に招へいするにはどうすればいいかってことを論議しているのだが、その中でちょっと気になる表現がある。

 アジアの研究者23人に聞き取り調査した中、彼らが日本の若手研究者に抱いている印象が紹介されているのだが、「最近の若手研究者は、内向的になっている。海外で勉強や研究するチャンスをつかもうとしない」「博士号取得後も日本で働けるから外に行かない。外国に1年でもいいから出るべきである」なのだそうだ。

 聞き取り調査の対象となったアジアの研究者23人のうち、18人は日本の研究機関との共同研究の経験がある者のようで、何度も来日されているということなのだから、こうした日本の若手研究者に感じた印象は、勝手な想像によるものではなく、実体験から感じられたものなのだろう。

 ということは、海外武者修行に関して根本的な問題は、日本の若手研究者のメンタリティにあるっていうことなのだろうか・・・。

 私自身、取材のため頻繁に大学に出向いているものの、研究者にインタビューをするばかりで、大学院生やポスドクといった若手研究者と身近に接する機会はないままなので、前述のアジアの研究者が感じた印象について論評することは避けるが、先に紹介した印象が若手研究者の実情を如実に示すものであるなら、文部科学省が若手研究者の海外武者修行をサポートしようとしても、本当に実のあるものにはならないんじゃないかと危惧してしまうのだが・・・。

 この点については、次世代の日本の科学技術力にかかわってくるだけに、文科省なり、JSTなりが、積極的に若手研究者の意識調査を実施してもらいたいものだ。

http://scienceportal.jp/news/review/0905/0905221.html

 ではでは・・・

2009年6月 1日 (月)

piPS細胞の論文にも韓国系、中国系の名前がいっぱい

 一昨日に、中国、韓国に習って(って書いてしまおう)、日本の文科省も若手研究者を海外に武者修行に出す政策を進めようとしていることを紹介した。さらに、昨日はiPS細胞の医療分野での実用化を強く後押しする画期的な成果を得た研究に、韓国系の研究者が数多く参加している事実を紹介した。

 そこで、気になったので、このブログでも紹介した遺伝子導入ではなく、タンパク質の導入でリプログラミングをするという(piPS細胞の研究ですね)、スクリップス研究所のシェン・ディンらの研究成果についても、今一度、コオーサーを確かめてみた。すると、案の定、韓国系、中国系と思しき名前がずらっと並んでいる。もちろん、日本人らしき名前は一人もありません。残念ながら・・・(詳しくは以下のサイトをご覧ください)。

 Cellほどのトップジャーナルに掲載される論文のコオーサーになるぐらいだから、みな短期的に研修にやってきたって感じの研究者ではないだろう。それだけ、韓国、中国からは恒久的な職員として雇われるだけの研究者が、海を越えてアメリカに渡っているわけで、この事実は大いに注目すべきだろう。

 海外の研究室に所属すれば、それだけで良い研究ができるってものじゃないんだろうけれど、iPS細胞の研究で、世界的に注目を集める研究成果のコオーサーに日本人の名前はなく、中国系、韓国系の名前がいっぱいあるっていうのは、由々しき事態じゃないだろうか。

http://www.cell.com/cell-stem-cell/fulltext/S1934-5909(09)00159-3

 ではでは・・・。

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