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2009年9月

2009年9月30日 (水)

再生医療の実用化に完全な脱分化は必要か?

 このブログで何度か紹介してきたように、iPS細胞を用いた再生医療を実現するためには、iPS細胞の安全性の向上とともに、その樹立効率を高めることが必要不可欠です。

 その点で注目すべき研究成果が、Current Biologyに紹介されています。

 この研究成果を発表したのは、ハーバード幹細胞研究所の研究グループでして、細胞の増殖を抑制する因子として働くトランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)の働きを阻害することで、マウスのiPS細胞の樹立効率が高まる上、そのスピードも向上し、c-MycやSox2なしでも、iPS細胞を樹立できるようになったっていうんですよ。

 樹立効率が向上しただけでなく、導入する遺伝子も減れば、安全性の向上にもつながると期待されるだけに、iPS細胞を用いた再生医療の実用化に向けて大きな前進だと言えると思うんですが、ここ最近、再生医療に用いるのに、何もiPS細胞並み(ES細胞並みと言い換えてもいいですね)に脱分化させることが必要なのかなって疑問を感じているんです。

 再生医療に用いるために分化した体細胞を脱分化させるってことは、体細胞のままでは必要な細胞に分化誘導できないってことでしょう。でも、京都大学の山中教授によってiPS細胞が樹立されるまでは、間葉系幹細胞などの組織幹細胞(体性幹細胞)を活用する研究も続けられていたわけですよね。

 だったら、何もiPS細胞程度の高いレベルので多能性を獲得させなくても、必要な臓器、組織に分化誘導できる細胞が得られればいいんじゃないかって思うんです。

 例えば、神経細胞に分化誘導できう神経幹細胞って、成人の体にあっても、その採取が難しく、大量に得ることはできないわけですよね。だったら、同じ外胚葉由来の皮膚の細胞から、神経幹細胞を作って、神経細胞に分化誘導できれば、神経の再生医療を実現できるんじゃないのかなと・・・。

 以前、東京大学の鉄門記念講堂で開催されたシンポジウムで、産総研の大串始さん(組織・再生工学グループ長)が、分化した体細胞からiPS細胞に戻すよりのも、入手しやすい幹細胞からiPS細胞を樹立したほうがいいんじゃないかって提案されていたんですが、最終的に必要な臓器、組織の細胞に分化誘導できるなら、何もiPS細胞にまで脱分化させなくても、組織肝細胞程度までの分化にとどめるという考えた方での研究もあっていいんじゃないかって思うわけです。

 まぁ、現実的に“適度な”脱分化っていうのができるのかどうかわからないけれど、完全に脱分化させなくてもいいなら、安全性や樹立効率を向上させる研究も、違った展開になってくるんじゃないかって期待してしまうですが、どうですかねぇ・・・。

http://www.cell.com/current-biology/abstract/S0960-9822(09)01598-X

 ではでは・・・。

2009年9月24日 (木)

今年もノーベル賞の発表の季節がやってきました!

 さぁ、今年も9月下旬になりました! ノーベル賞の発表の季節がやってきたのですよ。

 先ほど、ノーベル財団のウェブサイトを覗いてみたら、10月5日の医学生理学賞を皮切りに、6日の物理学賞、7日の化学賞と、科学3賞が順次発表されていくようですから、もう2週間を切っているんですねぇ。

 で、気になるのが日本人が受賞するかどうかですが、今年もトムソン・ロイターが予想を発表しておりまして、その中にもしっかり日本人の名前が・・・。 

 トムソン・ロイターは科学3賞について18人の有力候補を発表しているんですが、医学生理学賞の候補に東北福祉大学の小川誠二特任教授を挙げているんですよ。

 小川教授は脳の活動を可視化するfMRIの基本原理を発表した研究者でして、十分にノーベル賞を受賞するに値する研究をなさってきたと思いますが、読売新聞の記事によると、トムソン・ロイター(トムソン・サイエンティフィック時代からなんでしょうね)が、過去に有力候補とした92人中、実際に授賞したのは11人ということですから、的中率はあまり高くはないようですね。

 ただし、誰か受賞するかを問うた人気投票(?)の結果も紹介しているんですが、医学生理学賞での小川教授がぶっちぎりの得票率(31%)に1位になっているんです。

 これは期待したくなるじゃないですか。

 ちなみに、トムソンの予想には挙げられていないのですが、この人気投票の物理学賞の受賞候補の中に、カーボンナノチューブを開発した飯島澄男さんの名前も挙げられておりますよ。

 というわけで、日本人が受賞するかどうかはわかりませんが、約10日後には発表されますから、楽しみに待つことにいたしましょうか。

http://nobelprize.org/nobelfoundation/press/2009/announcements_09.html

http://science.thomsonreuters.com/nobel/nominees/

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20090924-OYT1T00979.htm

 ではでは・・・。

2009年9月21日 (月)

最先端研究開発支援プログラム 支給対象者を再検討するっていうんだけど・・・

 このブログでしばしば紹介している最先端研究開発支援プログラムなんですが、民主党政権は、自民党政権時に決まったことを本気で覆しそうな気配ですね。

 毎日新聞の記事によると、文部科学省の鈴木寛副大臣が19日未明の記者会見で、支給対象者の再検討も含め、見直すことを明らかにしたっていうではありませんか。

 これまで、政権移行前に岡田克也・民主党幹事長(当時)が、「凍結もありうる」との発言はしていましたが、「十分議論のないまま、荒っぽい方法で選考された」とまで明確に言及して、支給対象者の再検討の可能性を示唆したのは、注目に値すると思うんですよ。

 ただね、本気で再検討しようっていうのなら、民主党政権には、このプログラムをどういう性格のものにして、どういう人を選ぶのかは明確にいてもらいたいですね。ただ、「自民党政権が決めたことだから・・・」という理由なら(そんな理由なら公表はしないだろうけどね)、人事異動後に前任者の否定からやり始めるバカ上司みたいなものでしょう。

 で、こんなリクエストをするのには訳があって、このプログラムは「新たな知を創造する基礎研究から出口を見据えた研究開発まで、さまざまな分野及びステージを対象とした、3~5年で世界のトップを目指した先端的研究を推進することにより、産業、安全保障等の分野における我が国の中長期的な国際的競争力、底力の強化を図るとともに、研究開発成果の国民及び社会への確かな還元を図ることを目的」としているんだけど、これだったらどんな研究だって盛り込まれてしまうわけで、あまりにも漠然としすぎているって思うわけです。

 「基礎研究から出口を見据えた研究開発まで」と断っているとはいっても、すでに実用化研究に入っているような研究から、産業応用を期待するのが難しいダークマターのような基礎研究が、同時に選らばれているのには違和感を覚えないわけじゃないんですよ。

 それに、不採択提案のリストを見ていると、「どうしてこれが採択されなかったの?」と疑問を感じうものもけっこうあいますよ。例えば、「インフルエンザ制圧のための開発研究」は、汎用ワクチンの開発にも繋がる研究プランが提案されたようですが、喫緊の課題として取り組むべきものとの意見があって採択さらかったらしいんですよ。

 まぁ、インフルエンザの制圧は、喫緊の課題であるのは間違いないにしても、中長期的に進めるべき、インフルエンザ対策のための研究課題もあるわけで、こうした研究が採択から漏れているのは理解できないですねぇ(研究プランの詳細な内容は公表あれていないおで、なんとも言えないんですが・・・)。

 だから、民主党政権が、9月4日に決まった採択結果を覆そうというのなら、変な禍根を残さないためにも、このプログラムをどういうものにして、どういう研究プランを採択するのかってことを、もう少し具体的に示してもらいたいんですよ。そうしないことには、採択のやりなしで選ばれなかった研究者たちは浮かばれませんからね。

http://mainichi.jp/select/science/news/20090919dde001040027000c.html

http://www8.cao.go.jp/cstp/sentan/about.html

 ではでは・・・。

2009年9月18日 (金)

21年度補正予算執行停止はiPS細胞研究に影響を与えるのか?

 一昨日、鳩山政権が誕生したわけですが、さっそく21年度補正予算の執行に手を突っ込んできましたねぇ。

 で、気になるのが内閣府が進めていた最先端研究開発支援プログラムの行方なんですが、各種報道を見る限り、もう一つ、気になることがあります。政府が発表した方針通りに、補正予算の執行が停止あえると、iPS細胞の研究にも影響が及ぶんじゃないかって思えてきたんです。

 というのも、21年度補正予算では、文部科学省が「iPS細胞等を用いた再生医療の実現」として100億円を確保。この予算を活用いて、京都大学のiPS細胞研究センターの施設や、研究用のES細胞、iPS細胞の提供拠点となる理化学研究所バイオリソースセンターの施設(細胞研究リソース棟)が建設されることになっています(以下、参照)。

 京都大学の施設については、すでに建設が着工していると京都大学のウェブサイトでも紹介しておりましたので、今後、執行停止になってしまうってことは思いますが、理研のほうがどうなるのか気になります。7月に取材に行った際は、建設しているような感じはなかっただけに、未執行分として停止されてしまうと・・・。どうなんだろうなぁ。

 税金の使用に関いて徹底的に無駄を無くしていこうとする現政権の意向は大いに評価していますが、理研の細胞研究リソース棟は、幹細胞研究を進める上で必要不可欠な施設だけに、緊急性がないといってやめてしまっていいものじゃないでしょう。

 なんだか理研の施設建設の停止が決まったような書き方になってしまいましたが、あくまでも推測の上で書いていますのでお間違えなく。新聞やテレビのニュースを見ているかぎり、個別の案件が執行停止になるかどうかまでは細かく紹介いないので(マンガの美術館の停止は大きく報道していますが・・・)、どうなっているのかよくわからないんですよぉ。

 でもなぁ、補正予算のうち、執行停止するものを選ぶ方針に関する、政府の発表を見ていると、「地域経済、国民生活に大きな混乱を及ぼすと判断する場合を除き」、「独立行政法人、国立大学法人の施設整備費は基金と同様の基準で見直し」するっていうんでしょう。この文言からすれば、理研の施設は停止されそうな気配なんですが・・・。

 まぁ、推測を膨らませるだけでは意味がありません。今後、個別の事業について継続なのか、停止されるかどうかも発表されるでしょう。今後の報道を注視していくとしますか。連休中に報道されなかったら、文科省化財務省に問い合わせてみようかな。

http://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/h21/yosanan/002.pdf

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu4/016/siryo/__icsFiles/afieldfile/2009/07/03/1280049_1_2.pdf

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2009091800391

 ではでは・・・。

2009年9月17日 (木)

新型インフルエンザ用の輸入ワクチン、国内で治験始まる

 新型インフルエンザのワクチンについては、国内メーカーによる製造分だけでは不足するため、海外のメーカーが製造したものを輸入しようとしていることは、すでに多くの報道によって皆さんもご存じかと思いますが、その輸入ワクチンの国内での臨床試験が始まったと複数の新聞が報じています。

 以下に、私が確認した記事が読めるウェブサイトのアドレスを列記しますが、内容はほとんど同じです。スイスの製薬大手のノバルティスが、健康な成人ボランティアを対象に治験を実施し、今後、体内で抗体が作られるかどうかを調べて、ワクチンの有効性と安全性を確かめていくことになると報じているわけですが、一般市民にとって気になるのが、国産ワクチンとの違いですよ。でも、これがほとんど紹介されていないんですよねぇ。

 先週、国立感染症研究所で実施された記者レクでは、あくまでも輸入ワクチンの“候補”の一つとして紹介されたものが、ウイルスの培養法や免疫補助剤(アジュバント)の添加の有無などの違いが紹介されていました。この記者レクにも多くのメディアが参加しておったのですが、このことに触れているのは、私が読んだ記事の中では、共同通信の記事(※)ぐらいです。

 まぁ、ウイルスの培養にイヌの腎臓の細胞(MDCK)を使っていることや、アジュバントを加えていることなどを、一般の方々に紹介しても、安全性、有効性の面で国産ワクチンとどう違うのかは理解できないんじゃないかっていう判断が働いたのかもしれないけれど、国産ワクチンと輸入ワクチンの違いが取りざたされている以上、最低限の情報として共同通信の記事ぐらいの話題の提供はあってしかるべきだったんじゃないかなぁ。

http://mainichi.jp/select/science/news/20090917ddm012040045000c.html

http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20090916AT1D1607816092009.html

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20090916-OYT1T01093.htm

http://www.asahi.com/national/update/0916/TKY200909160404.html

http://www.47news.jp/CN/200909/CN2009091601000686.html(※)

 ではでは・・・

2009年9月16日 (水)

中枢神経の再生医療への途を拓くか? 神経が再生されない仕組みを解明

 胎児の頃に脳の神経細胞が作られると、その後は分裂することがないのは広く知られています。例えば、脳梗塞などで神経が損傷を受けて、重篤な後遺症が残ってしまうのも、神経が再生しないからなのですが、もし脳の神経細胞が再生しない仕組みが明らかになれば、神経を再生させる新しい医療技術の開発が期待できるわけですが、その期待を膨らませてしまう研究成果が発表されました。

 研究成果を発表したのは、東京大学分子生物学研究所の後藤由季子教授、平林祐介助教らの研究グループで、論文はアメリカの科学雑誌ニューロンに掲載されました。

 詳しくはニューロンの論文や、それを元に書かれた新聞記事などをご覧いただきたいのですが、大まかな内容を紹介しておきますと、研究グループはマウスの神経幹細胞を調べ、神経細胞ができるのに必要不可欠な遺伝子が、出生後に機能してないことを解明。さらに、「ポリコーム群」と呼ばれる複数のタンパク質が、この遺伝子を働かせないように阻害していることを明らかにしたというのです。

 ということは、このポリコーム群タンパク質の働きを抑えれば、これまで再生することはないと考えられていた中枢神経を再生できて、脳梗塞による後遺症や、脊髄損傷による麻痺などの治療が期待できますね。

 といっても、ポリコーム群を標的として医薬品を開発するとなると、まだまだ明らかにしないといけないことはたくさんあるんでしょうね。

 例えば、脳梗塞で脳の一部の神経が損傷してしまった場合、そこで働くポリコーム群タンパク質の働きを阻害して、神経の再生を促すというのが、今回の研究成果を活用した神経の再生医療のイメージになるかと思いますが、どのようにしてポリコーム群タンパク質阻害剤を脳梗塞部分だけで限定的に働かせるのかといったことは重要な課題になるでしょうね。

 そのためには、現在、活発に研究されているDDSを活用することになると思いますが、脳梗塞の場合、血液脳関門を通って薬剤を届けなければならないだけに、その開発には様々な課題があると思われます。

 また、神経を再生する必要のない部位で、ポリコーム群タンパク質の働きを阻害してしまった場合の副作用も心配されます。必要ないのに神経細胞の分裂が進んでしまって・・・・なぁ~んてことが起こるのかどうかわかりませんが、このあたりもきちっと明らかにしていかないといけないんでしょうね。

 まぁ、今回の研究成果は、神経細胞が再生されない仕組みが明らかになったというわけで、これを活用した新しい医療技術の実用化は、まだまだ先の話になると思われますが、そのまだまだ先の話を期待したくなてしまうだけの研究成果であるといっても過言ではないと思いますよ。

http://www.cell.com/neuron/abstract/S0896-6273(09)00633-3

http://www.47news.jp/CN/200909/CN2009091001000820.html

 ではでは・・・。

2009年9月13日 (日)

藻類から炭化水素を簡単に回収する技術を開発

 地球温暖化の対策に関しては、CO2の排出量を減らすことばかりに注目が集まってますよね。まぁ、京都議定書があるからしかたがないんだろうけど、大気中のCO2を減らす技術の研究開発をもっと積極的に進めてもいいと思うんです。

 で、そんな研究成果を、少し前に日刊工業新聞が報じていましたので、このブログでも紹介したいと思います。

 石油や天然ガスの主成分は炭化水素なのですが、これを藻類から簡単に取り出す方法を、東京大学の横山伸也教授の研究グループが確立するのに成功したっていうんでしょ。

 炭化水素を取り出すのに利用されたのは、ボツリオコッカスという淡水性の藻類で、集めたボツリオコッカスを密閉容器に入れて、90℃で10分間加熱し、有機溶媒で処理すると、藻類が持つ炭化水素を98%回収できたとのこと。藻類を大量培養すれば、有機溶媒を入れる必要もなくなるようですが、その理由は示されていません。

 藻類は大気中のCO2を吸収して、これを材料に光合成を行い、炭化水素を作り出すわけですから、藻類から回収した炭化水素を化石燃料に代わる燃料として利用できれば、大気中のCO2の削減に貢献できるでしょうね。

 ただし、気になるのが藻類から炭化水素を回収するのに消費されるエネルギーです。

 いちおう記事では、簡単に回収でき、精製も不要とされているんですが、藻類を集め、90℃で10分間加熱することによって消費されるエネルギーについては触れられていません。燃料を作るのに、得られる燃料以上のエネルギーを使うようでは意味がありませんから、この点はちょっと気になります。

 そのあたりは研究者も十分わかって研究を進めているでしょうが、報じる新聞が、コストについてもしっかりフォローした記事を書いてもらいたいもんですよ。

http://www.nikkan.co.jp/news/nkx0620090819eaac.html

 ではでは・・・。

2009年9月12日 (土)

最先端研究開発支援プログラムの影響で民間企業の株価がストップ高

 内閣府が進める最先端研究開発支援プログラムですが、先週の金曜日(9月4日)に採択課題が決定しました。これからは支援を受ける研究者の皆さんにがんばっていただくほかないと言いたいところなんですが、民主党政権に移行してから「採択結果は凍結!」ってことにもなりかねないとの報道もありますから気がかりですね。

 まぁ、民主党が採択結果を凍結しても、新たに審議がなされ、妥当な研究課題に支援が実施されれば、それでいいとは思うんですが(となると4日に開催された総合科学技術会議は無駄骨だったことになりますね)、4日の発表以降、注目すべき動きを毎日新聞が報じていましたので、このブログでも触れておきましょう。

 今回の研究課題の一つに、東京大学の片岡一則教授を中心研究者に据えた「ナノバイオテクノロジーが先導する診断・治療イノベーション」が採択されているのですが、研究グループには民間企業の研究者が数人名を連ねています。

 その中で、ナノキャリアは、片岡教授が開発したDDS(=Drug Delivery System)技術の導出を受けて、抗ガン剤のDDS化製剤の実用化に向けた研究を進めています。すでに臨床試験を実施いているDDS化製剤もあり、かなり実用化に近い研究開発をやっているわけですが、片岡教授、ナノキャリアが参加する研究グループが採択されたことで、週が明けた7日以降、ナノキャリアの株価が高騰。2日連続のストップ高となりました。

 う~ん、これってどうなんだろうなぁ。

 まぁ、公的資金を民間企業の研究支援に拠出してはならんと言うわけじゃないけれど、臨床試験のように、後は効果と安全性を確かめるだけっていう段階に入っている研究に、今回のプログラムのような資金を拠出するっていうのには、ちょっと疑問を感じてしまいました。それが実用化されたって、このプログラムが目標としている、「世界のトップを目指した先端的研究を推進」したことにはならないんじゃないかなぁって思うんですよ。

 このあたりは、今後、民主党政権がこのプログラムの採択結果を検証することになれば、注目されることになるかもしれませんねぇ。

http://mainichi.jp/life/money/kabu/nsj/news/20090908175941.html

http://stocks.finance.yahoo.co.jp/stocks/detail/?code=4571.T&d=1m

 ではでは・・・

2009年9月11日 (金)

世界初! イヌのiPS細胞の作製に成功

 再生医療へのiPS細胞の実用化を目指す以上、腫瘍化を回避するなど安全性の向上が必要不可欠ですが、これを確認するには動物実験を行う必要があります。

 当然、マウスを用いた実験が実施されることになるんでしょうが、マウスは扱いやすいというメリットがあるものの、寿命が短いため、長期間に渡って安全性を確認しようとすると物足らないっていう難点があるんでしょうね。腫瘍化のように、ある程度の時間を要するもんだとなれば、より長寿お実験堂つのiPS細胞の作製が求められます。

 そこで、注目すべき研究成果が発表されました。京都大学再生医科学研究所の中村達雄准教授の研究グループが、世界で初めてイヌのiPS細胞の作製に成功したというんですよ。

 以下の新聞記事によると、ビーグル犬の胎児の皮膚細胞に、4つの遺伝子と4種類の化合物を加えてiPS細胞を作り出したようです。どの新聞も、作製方法に関してあまり詳しくは報じていないのですが、朝日新聞によると、イヌ(ビーグル犬)の寿命は10~15年ということなので、2年程度の寿命のマウスよりはずっと長寿だと紹介しています。これなら、このイヌiPS細胞を用いれば、長期間の安全性試験の実施も期待できますね。

 ただ、どの新聞を確認しても、iPS細胞の作製に使われた遺伝子、化合物が紹介されていません。「4つの遺伝子」ということなので、用いられた遺伝子はOct3/4、Sox2、Klf4、c-Myc、いわゆる「山中4ファクター」だと思いますが、化合物は何なのか・・・。気になるところです。

 近々、専門誌に論文を発表するようですから、それをチェックするといたしましょうか。

http://osaka.yomiuri.co.jp/university/research/20090909-OYO8T00641.htm?from=ichioshi

http://www.asahi.com/science/update/0909/OSK200909080119.html

http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20090909AT1G0901209092009.html

 ではでは・・・。

2009年9月10日 (木)

「子供の科学」2009年10月号に記事を書きました

 本日(9月10日)発売の「子供の科学」2009年10月号に記事を書きました。

 テーマは「汗」です。決して最先端の研究成果の紹介ってわけではありませんが、身近な汗についてわかりやすく、その役割を紹介しています。

 機会がございましたら、ご一読いただければと思います。

 この他、短いニュース記事もいくつか書いております。

http://kodomonokagaku.com/

 ではでは・・・。

2009年9月 9日 (水)

糖尿病患者由来のiPS細胞からすい臓細胞を作った

 ここのところiPS細胞関連の研究では、安全性を向上させるための研究や、作製効率を高めるための研究の成果を紹介することが多かったように思いますが、iPS細胞を用いた再生医療を実現させるためには、体細胞を脱分化させて作製したiPS細胞を、必要な細胞に分化誘導する技術の開発も必要不可欠です。当然、iPS細胞を分化誘導する研究も進められているわけですが、そうした研究の成果の一つが、アメリカ科学アカデミー紀要(PNAS)で紹介されています。

 研究を行ったのは、ハーバード大学、コロンビア大学などの研究グループで、1型糖尿病の患者から採取した細胞をiPS細胞にして、それをすい臓の細胞に分化誘導して、それがインスリンを分泌するのを確かめたというんですよ。

 ご存じかと思いますが、1型糖尿病はすい臓にある血糖値の上昇を抑えるインスリンを分泌する細胞が破壊された結果発症する病気です。インスリンを投与する対症療法以外の治療法はなく、根治が期待できないのが現状です。

 ですから、今回の研究成果で、糖尿病患者由来の細胞から、インスリン分泌能がある健全なすい臓の細胞を作ることができたというのは、1型糖尿病の根治療法の実現に向けて大きな一歩と言えるでしょうね。

 以前、ある取材では、すい臓の場合、インスリンを分泌できさえすれば、臓器の構造の再現にこだわらなくてもいいというような話も伺ったことがあります。さらに、その研究者は、インスリン分泌能のある細胞を皮下に埋め込むだけでも糖尿病の治療には有効ではないかとの見解も示されていたので、今回の研究成果が得られたことは、臨床応用を期待させるものと言えるのかもしれません。

 とはいえ、このブログでも何度となく紹介させてもらったように、現在のiPS細胞にはがん化のリスクが付きまといますから、すぐに臨床応用ってわけにはいかないとは思いますが、ついつい期待していまいますね。

http://www.pnas.org/content/early/2009/08/25/0906894106.abstract

http://www.pnas.org/content/early/2009/08/25/0906894106.full.pdf+html

 上記の論文を元にした新聞記事です。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20090905-OYT1T00353.htm

 ではでは・・・。

2009年9月 8日 (火)

人間ドックで「健康」と診断されたのは1割未満!

 フリーランスのライターの立場だと、宮仕えの皆さんのように、定期的に健康診断を受ける機会を勤め先が用意してくれるわけではないので、自らの意志で健康診断や人間ドックを受けないといけません。年齢的には、“がん年齢”とされる年齢に突入しましたし、若い頃に比べて無理が利かなくなっているのを自覚しているので、たまに人間ドックの案内を見かけると、「ちゃんと人間ドックを受けないと・・・」と気になりつつも、日々の忙しさにかまけれいるんですが、人間ドックに関連してちょっと気になるニュースを毎日新聞が報じています。

 詳しくは以下のサイトをご覧いただきたいのですが、簡単に記事内容をご紹介しておきますと、2008年の人間ドック受診者のうち、健康だと診断された人は1割未満だったことが、人間ドック学会の調査で明らかになったというんですよ。

 この結果に対して、人間ドック学会は、高コレステロール、肝機能異常、肥満などの生活習慣と関連の深い項目での悪化が顕著であることから、生活環境の悪化が影響している一方、健康度の低い60代以上の受信者が増えていることも関わっていると指摘しています。

 ただ、ちょっと気になるのは、人間ドックの受信者って、何らかの症状があらわれて診断を受けようとした人じゃないわけですよね。それで健康な人が1割未満っていうのは、ちょっといきすぎなんじゃないかって思うんですよ。

 人間ドックで得られた数値が異常かどうかっていうのは、あくまでも便宜的に決められたものなわけでしょう。それで、不健康な人が9割以上っていう状況は、ちょっと行き過ぎのような気もしてしまいます。もちろん、中には症状があらわれる以前の初期の病変が見つかっている人もいるんでしょうが・・・。

 結局、人間ドックの機能って、自分が健康かどうかを確かめ、日々の生活を見直す機会にするっていうことだと思うので、「あなたは健康です」と言われるより、「ちょっとまずい数値ですね。日々の生活を見直してください」と言われたほうが、人間ドックの機能を果たせるんでしょうね。この点では、今回の調査結果は、人間ドックの機能がうまく果たされているともいえるのかもしれないけれど、人間ドック受診者の9割以上が不健康だってことを額面通りに受け取っていいものかどうか・・・。日本ってそんなに不健康な国なのかなぁ。

 それとも、「あなたは健康です」と診断された人が、時間を経ずに死んでしまった場合でも、「人間ドックで健康と診断されたのは誤診じゃないか!」と訴えられないために、不健康割増で診断しているんでしょうか・・・。

http://mainichi.jp/select/science/news/20090904k0000m040044000c.html

 ではでは・・・。

2009年9月 7日 (月)

最先端研究開発支援プログラムの採択研究課題発表!

 先週の金曜日(9月4日)に発表された最先端研究開発支援プログラムですが、内閣府のウェブサイトでも、採択された研究課題30件が発表になりましたね(以下のPDFをご参照ください)。

 で、その感想ですが、30人の中心研究者には、世界的に著名な大御所がずらりと並んでいて、無難な採択結果だなぁって・・・、ちょっと上から目線にあてしまいますが、率直にそう感じてしまいました。

 一部には、経団連の提案も丸呑みで実施されたプログラムだということえ数年以内に実用化できる研究課題に終始するのではないかとの批判もありましたが、全体的には実用化目前といったものに終始したわけではなく、基礎科学の研究課題が多く採択されているように感じられました。

 とはいえ、中心研究者が大学などの公的研究機関に所属している研究者でありながら、研究グループに民間企業が名を連ねている課題も多いのも注目すべきでしょうね。

 例えば、東京大学大学院工学系研究科の片岡一則教授を中心研究者となっている研究課題「ナノバイオテクノロジーが先導する診断・治療イノベーション」では、日本化薬、ナノキャリア、帝人、武田薬品工業、富士フィルム、テルモといった医薬品、医療機器メーカーが名を連ねています。片岡教授自身、DDSに関する研究成果をナノキャリアに技術導出しており、抗がん剤のDDS化製剤の開発が進められています。ですから、研究課題によっては、かなり実用化に近いものが採択されたということも言えそうですね。

 で、気になるのが民主党の動きですが、岡田幹事長は、この時期に決まることに違和感を覚える。駆け込み的なものは精査して、場合によっては凍結もありうる」と語ったようですから、今後の動向にも注目ですね。

 ちなみに、読売新聞は社説(※)で、このプログラムの話題を取り上げ、現政権(自民党政権)への支持からか、この採択結果のままで進めよと論じています。

http://www8.cao.go.jp/cstp/sentan/senteikekka.pdf

 最先端研究開発支援プログラムの採択結果発表に関する新聞報道

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090905-OYT1T01062.htm?from=y10(※)

http://osaka.yomiuri.co.jp/science/news/20090905-OYO8T00291.htm

http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090906AT1C0400904092009.html

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090905ddm002040050000c.html

http://www.asahi.com/politics/update/0904/TKY200909040395.html

 ではでは・・・。

低酸素でiPS細胞の製作効率を向上!

 このブログでも何度か紹介してきたように、iPS細胞を用いた再生医療を実用化させようとすれば、体細胞をリプログラミング(脱分化)してiPS細胞を作製する効率を大幅に上げなければなりません。そのため、iPS細胞の作製効率を高めるための手法の開発が多くの研究グループによって進められています。

 つい最近も、iPS細胞の作製時に、がん抑制遺伝子として知られるp53遺伝子の働きを抑制して、作製効率を向上させることに複数の研究グループが成功したということが報じられていましたが(8月10日のNatureの論文)、8月27日には京都大学の山中伸弥教授の研究グループが、iPS細胞の作製効率を高める新たな方法を開発したと発表しました。

 この成果の論文はセル・ステム・セルに掲載されたもので(※)、京都大学物質-細胞統合システム拠点iPS細胞研究センター(CiRA)もプレスリリース(※※)を発表しているので、詳しくはそちらをご覧いただきたいのですが、簡単にこの研究成果を紹介しておきますと、ポイントは通常よりも酸素濃度が低い環境で培養したことにより、作製効率を高めることに成功したということです。

 iPS細胞の作製するんい用いられたのは、山中4因子(Oct3/4、Klf4、Sox2、c-Myc)をレトロウイルスベクターを用いて、マウスとヒトの線維芽細胞に導入する方法なんですが、低酸素濃度で培養すると、最大で20倍も作製効率が改善したというんですよ。酸素濃度は5%が最適条件だったとのこと。低ければいいってわけじゃないようで、1%の場合、数日以内に細胞が死んでしまうようです。

 しかも、c-Mycを用いない作製方法の場合でも、また、レトロウイルスを用いないプラスミドなどでの遺伝子導入でも同様の成績を得られたというんですから、ガン化のリスクが少ないタンパク質を導入する方法でも作製効率を高められるんじゃないでしょうか。

 なにより、特殊な培地を用いるわけでもなく、ただ酸素濃度を低くするだけでiPS細胞の作製効率を高められるっていうのは、今後、作製法を標準化を進めていく上で、今回の研究成果は重要なものになるといえるでしょうね。

 ただ、気になるのが低酸素という環境で培養してみようと思ったかですよ。細胞を培養する上で十分な栄養と酸素を供給するのが常道だと思うんですが、逆に低酸素濃度で培養してみようとしたのはどういった戦略があってのことだったのか・・・。これ気になりますねぇ。数多くの素晴らしい研究成果を得ている山中研究室の成果だけに、どういう目論見から、低酸素濃度の培地で培養しようとしたのか知りたいところです。

http://www.cell.com/cell-stem-cell/fulltext/S1934-5909(09)00385-3(※)

http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/pdf/090827_hypoxia_J.pdf(※※)

 上記の論文、リリースを元にした新聞記事です。

http://www.47news.jp/CN/200908/CN2009082701001054.html

http://sankei.jp.msn.com/life/body/090828/bdy0908280102001-n1.htm

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20090828-OYT1T00182.htm

http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2009082800025&genre=G1&area=K00

 ではでは・・・。

2009年9月 6日 (日)

JSTニュース2009年9月号に記事を書きました

 表題通り、科学技術振興機構(JST)が発行しているJSTニュースの2009年9月号に記事を書きました。

 テーマは鉄系超電導の研究でして、物質・材料研究機構の高野義彦博士を取材させていただき、研究者の目からみて、鉄系超電導物質の発見とはどういったものなのかを紹介しております

 JSTニュースは全国の科学館、博物館で無料配布されておりますが、以下のサイトからもご覧いただけます。機会がございましたら、ご一読いただければ幸甚です。

http://www.jst.go.jp/pr/jst-news/2009/2009-09/page07.html

 ではでは・・・。

2009年9月 4日 (金)

続続・政権交代で最先端研究開発支援プログラムの行方は・・・?

 昨夜にアップした「続・政権交代で最先端研究開発支援プログラムの行方は・・・?」では、Biotechnology Journalの記事を引用して、「早ければ同日の午後7時に結果が発表されるかもしれない」と書きました。ところが、さっき(午後6時ころ)、取材から戻ってきて、Biotechnology Journalのサイトを覗いてみたら、もう発表されたというじゃないですか!

 記事のタイトルは「速報、最先端研究開発支援プログラム、バイオ分野は慶応大学・岡野教授、京大・山中教授など11人を選定」。で、その詳しい記事内容はというと・・・。サブスクライブしていない私が読めるのは、

内閣府の総合科学技術会議は2009年9月4日、「最先端研究開発支援プログラム」の中心研究者30人を選定した。

 だけでした。

 すみません。

 まぁ、一般メディアがあまり報道していない話題ではありますが、さすがに明日の新聞には掲載されるでしょう。新聞でチェックしてください。私も新聞でチェックします。

 で、このBiotechnology Journalの無料で読める範囲では、山中伸弥・京都大学教授、岡野栄之・慶応義塾大学教授への助成が決まったことだけは報じていますが、他の採択研究が気になりますねぇ。

 元々、経団連が経済対策の一環として研究開発の支援を提言したものを、内閣府が丸呑みしたプログラムであるだけに、実用化に近い研究への助成が大半を占めるのかなって思っていたんですが、少なくとも山中教授、岡野教授の研究に関して、基礎医学といえるものだけに、研究プランの採択まで経団連の丸のみだったというわけではなさそうですね。

 とはいえ、私が知りえたのは2件だけ。残りの28件の研究プランがどういったものか確認しないことには何とも言えないのも事実です。明日以降の新聞でチェックすることにいたしましょう。

 でも、政権交代が目前の民主党は、この動きにどう反応するのでしょうかねぇ? こうなると、科学記者ではなく政治記者のマターなんだろうけど、気になりますねぇ。

http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?id=20065145&newsid=SPC2009090467537&pg_nm=1&sai1=0&new1=1&news1=1&icate=0&yunw=1

 ではでは・・・。

続・政権交代で最先端研究開発支援プログラムの行方は・・・?

 日曜日の選挙を受けて、本格的に民主党政権への移行が進んでいるようですが、先日、このブログでも紹介した、「最先端研究開発支援プログラム」については、現在の内閣が断行するんじゃないか、と日経BPのウェブマガジンBiotechnology Journalが伝えています。

 元々、先月末に予定されていた採択プランの発表が、政権交代の影響から、新政権が発足する9月16日以降にずれ込むと見られていたのですが、この記事(※)によると、本日(9月4日)に開催あれる総合科学技術会議で検討され、早ければ同日の午後7時に結果が発表されるかもしれないっていうんですよ。

 これだけでも「強硬策に出ているなぁ~」って思えるんだけど、同じくBiotechnology Journalによる続報(※※)では、研究プランを提出した研究者から、「ヒアリングにも呼ばれなかった」「質疑応答がたったの10分間」といった不満が噴出しているようです。

 ちなみい、このBiotechnology Journalは、有料のウェブマガジンで、記事の冒頭だけ無料で読めるのですが、生憎、私は購読していないので、記事の全文を読めないまま書いています。そのことを明記した上での推測なんですが、民主党政権への移行の前に、どたばたで採択プランを発表して、既成事実としてしまおうという動きなのかなぁって思えてしまいます。十分に状況を把握しているわけではにので、邪推と批判されるかもしれませんが、民主党が、未執行分に関して補正予算は原則全面停止との方針を固めているようだけに(※※※)、駆け込みで決めてしまおうっていう魂胆なんでしょうか・・・。

 何らかのアナウンスはないかと思い、最先端研究開発支援プログラムのウェブサイトを覗いてみましたが、特に新しい動きの発表はないままです。

 このブログでも何度か書かせてもらったように、研究予算が増えるという意味では、おおむね支持していますが、政権交代の間際に駆け込みで採択プランを決め、発表してしまおうという、現内閣の動きはちょっといただけないですねぇ。

 このプログラムについては、一部に場当たり的に策定されたものだという批判もあるようですから、一旦、棚上げして、じっくりとプログラムの枠組みを検討しなおしてから、採択プランを決めてもいいんじゃないかなって思うんですが・・・。

 まっ、今日1日の動きで、このプログラムの行く末が決まると思います。2700億円もの税金が投入されようとしているのに、残念ながら一般的なマスメディア(新聞、テレビ)はあまり報じないので、Biotechnology Journalの速報を待つと致しましょうか。

http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2009090267469(※)

http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2009090367485(※※)

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090903-OYT1T00522.htm(※※※)

 ではでは・・・。

2009年9月 3日 (木)

吐いた息で診断 肺がんセンサーが開発される

 吐く息に含まれている成分で病気を診断しようとするアイデアはけっこう古くからあるように、時々、そうした研究報告を目にすることがありますね。

 日本では、嗅覚が優れたイヌを利用してがんを発見する、「がん探知犬」の研究が進められていたりしますが、これを実用化するっていうのは難しいでしょうねぇ。診断がイヌ次第ということであれば、厚労省も認可しないでしょう。やはり、診断技術として認可を受けて、実用化するとすれば、やはり工業的に作られたセンサーを利用しなければならないでしょうね。そこで、注目すべき研究成果をAFPが伝えています。

 詳しくは、以下のウェブサイトをご覧いただきちのですが、このセンサーはイスラエル工科大学の研究グループが開発しtもので、吐いた息に含まれる成分を分析することにより、肺がんかどうかを診断できるっていうんですよ。

 これだけなら過去にも報告されてきた吐息を材料に病気を診断するセンサーと大きく違いはないように思われますが、このセンサーについては、記事中で「レントゲンで確認できる腫瘍に発達する前の早い段階で肺ガンを発見できる」と紹介されているんですよ。

 ご存知の通り、がんは、その発見が早期であればあるほど、完治できる確率は高まりますし、5年生存率も高い数値になりますよね。ですから、画像診断が発見されるよりもずt早期に発見できるっていうのなら、今回のセンサーって「なかなかのものなんじゃないの?」って期待してしまいます。しかも、論文はNatureの姉妹誌、Nature Nanotechnologyに掲載されているというので、信用していいんでしょうねぇ(AFPがオーバーランしていたら、なんともいえませんが・・・)。

 まぁ、実用化できるかどうかは今後の研究開発次第でしょうが、息を吐くだけで診断できるなら、受診者に侵襲的な負担を強いることがない診断技術だけに、実用化すれば一気に普及するんじゃないでしょうか。

http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2636168/4517089

http://www.nature.com/nnano/journal/vaop/ncurrent/abs/nnano.2009.235.html

 ではでは・・・。

2009年9月 2日 (水)

日本人研究者のチャレンジ・スピリットも捨てたもんじゃないぞ!

 以前、このブログで、成果が得られるどうかわからない、ハイリスクな研究に対しても支援していこうという、科学技術振興機構(JST)の「さきがけ」の新しい助成枠「大挑戦型」を紹介しましたが、その大挑戦型を含む、今年度の新規採択研究者が発表されました。

 以前、「大挑戦型」のことを紹介した際、私は、こうした制度ができた以上、研究者のチャレンジ・スピリットが問われることになるんじゃないかっていうようなことを書かせてもらったんですが、これはまったくの杞憂だったようですね。

 応募総数1680件中、大挑戦型としての応募数は明記されていないものの、研究領域「iPS細胞と生命機能」を統括する西川 伸一・理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター副センター長は、総評(※)で

「今年は、大挑戦型という「可能性は低くても野心的な計画」を公募するという初めての試みも行いました。ふたを開けてみると応募者の半数近くが大挑戦型を望むという予想外の好評さで、さきがけに応募する諸君が新しいことにチャレンジしようという意気込みを持っていることがよく理解できました。」

 と評価しています。この傾向が他の研究領域にも当てはまるのかどうかはわかりませんが、ほとんどの領域で大兆戦型が1、2件採択されていうことを見ると、多くの研究者がチャレンジ・スピリットにあふれる研究プランの応募していたと推察されます。

 いやぁ~、日本の研究者のチャレンジ・スピリットは捨てたもんじゃないですね。

 採択件数は、全174件中、大挑戦型は11件と、決して多くはないので、採択するかどうかを決定する研究統括、領域アドバイザーが保守的だったのかなっていう邪推も働いてしまいますが、こうして11件の大挑戦型が採択されたわけですから、今後の研究の推移を見守ることにいたしましょうか。

http://www.jst.go.jp/pr/info/info666/index.html

http://www.jst.go.jp/pr/info/info666/shiryou2-14.html

http://www.jst.go.jp/pr/info/info666/shiryou2-06.html(※)

 ではでは・・・。

テレビゲーム愛好者は太りやすいのか?

 日本では、一時期、“ゲーム脳”が話題になったように、どうもテレビゲームをし続けるのは体に良くないんじゃないかって思われているようですね。といっても、私自身、体に良いとも、悪いとも判断はつかないので、この話題については、完全に傍観者を決め込んでいるんですが、アメリカの疾病対策センター(CDC)が、ちょっと興味深い研究成果を発表しました。

 詳しくは、以下のロイターの記事をご覧いただきたいのですが、CDCの研究グループは、ワシントン州のシアトルとタコマに住む、19歳から90歳までの552人を対象とした調査を実施。全体の約45%にあたる249人がテレビゲームをすると答え、平均年齢は35歳だったというんですが、まぁ、これは基礎的な情報ですね。

 じゃ、体への影響についてなんですが、テレビゲームをする男性は、しない男性に比べ体重が重いっていうんですよ。

 あくまでも統計的な分析で、「ゲーマー=体重が重い」という結論が導きだされたんだろうけど、なぁ~んか釈然としないんだけど・・・。

 だってね、ゲーマーだから体重が重いっていうよりは、単にゲーマーになるような人は、どちらかというとインドア派で、体を動かさない傾向があるってことなだけでしょう。逆にゲーマーにならない人はどちらかというとアウトドア派で、体を動かす傾向にあるから体重が増えなかっただけなんじゃないのかなぁ。

 それから、女性の場合、落ち込みやすい人が多いんだって・・・。理由について、ロイターの記事を引用すると、「ゲームに没頭することが「治療薬」のような作用をもたらすため」ってことらしいんだけど、女性だけにそういう作用があるとする根拠は示されていない。

 それでいて、「ビデオゲームをすることと健康上のリスクには「無視できないほどの」関連性があると結論付けている」との文章で、記事は締めくくられているんですが、無視できないほどの関連があるのなら、テレビゲームが人体に悪影響を及ぼすメカニズムまでしっかり解明してくださいよ・・・と突っ込みを入れたくなってしまいますねぇ。

 とはいえ、ロイターの記事を読んだだけで、原著論文は読んでいないので、時間があったらチェックしてみようかな。

http://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPJAPAN-11128520090821

 ではでは・・・。

2009年9月 1日 (火)

政権交代で最先端研究開発支援プログラムの行方は・・・?

 ご存知通り、民主党の大躍進で政権交代が実現し、日本の政治も大きく方向転換されることが予測されるわけですが、そこで俎上に上りそうなのが、このブログでも何度か紹介してきた内閣府が進める「最先端研究開発支援プログラム」です。そうそう、30チームに5年間で総額2700億円を投じようとする、例の研究支援策です。

 予算の多寡については論議はあるとは思いますし、私自身、1チームに平均90億円を投じるようでは、リスクの高い、チャレンジングな研究は選ばれないのでゃないかと、予算の配分方法にはいささか疑問を感じていました。とはいいものの、研究費が増額されることはいいことだと思うので、概ね最先端研究開発支援プログラムは支持したいと考えておりました。

 しかし、予算編成については抜本的な見直しをしようとしているだけに、最先端研究開発支援プログラムに対して、民主党がそのまま認めるかどうか・・・。総選挙前に民主党の鈴木寛参議院議員が、「国会で審議していない」と批判しているため、大幅に見直されることがよそうされます。

 といっても、鳩山代表は、総選挙当日深夜の記者会見で「我が国の得意なバイオやナノテクノロジー、ITなどの先端技術を支援する」との姿勢を示しているようなので、最先端研究開発支援プログラムが、そのまま進められることはないにしても、形を変えて科学研究を支援してもらえるんでしょう・・・と期待しておきましょうか。

 ではでは・・・。

わずか1遺伝子でiPS細胞の樹立に成功

 分化した体細胞を初期化(リプログラミング)して、iPS細胞を樹立するには、京都大学の山中研究室が開発してきた方法であれば、Oct3/4、Sox2、Klf4を導入することが必要なわけですが(C-Mycを使わない方法のことを書いています)、導入する遺伝子が少ないほうがガン化のリスクは低くなることが期待できるため、より少ない遺伝子の導入でiPS細胞を樹立する方法の開発が進められています。

 といっても、分化しきった成人の体細胞を、少ない遺伝子の導入だけで初期化するのは難しいのか、導入遺伝子を減らす一つの方策として採用されていうのが、分化が進んだ体細胞ではなく、比較的、未分化の組織幹細胞を用いる方法です。より未分化の組織幹細胞を用いれば、多分化能を獲得させるのに必要な遺伝子は少なくなるだろうという戦略なわけですが、神経幹細胞を材料に、たった1つの遺伝子の導入だけで、iPS細胞を樹立したという研究成果が、Natureに紹介されております。

 研究成果を発表したのはマックスプランク分子医薬研究所などの研究グループでして、神経幹細胞にOct4を導入したところ、10~11週間後にiPS細胞になったというんですよ。Oct4ならガン化のリスクはほとんどないと言っていいだろうから、作製効率などの問題はあるんだろうけれど、安全性の高いiPS細胞の樹立法を開発していく上で、重要な研究成果と言えるでしょうね。

 ただし、どうせなら神経幹細胞じゃなくて、間葉系幹細胞などの比較的採取が簡単な組織幹細胞を使ったほうがよかったんじゃないかなぁ。今回の研究では、中絶胎児から採取した神経幹細胞を使ったということなんだけど、患者自身の細胞を用いた再生医療の実用化を想定すると、間葉系幹細胞や脂肪由来幹細胞などの成人の体からでも比較的採取が簡単なものを使ったほうがいいと思うわけで、今後、こうした細胞からiPS細胞を樹立する追随研究が報告されるんじゃないかなって期待してしまうんですが・・・。

 でもまぁ、神経幹細胞からのリプログラミングとはいえ、1遺伝子でiPS細胞を樹立できるようになったんですなぁ。いつものことながら、この研究分野の長足の進歩には驚かされるばかりです。

http://www.nature.com/nature/journal/vnfv/ncurrent/abs/nature08436.html

 ではでは・・・。

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