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2010年2月10日 (水)

オオカミ再導入を推奨する論文が発表されたようですが・・・

 今年は10月に名古屋で生物多様性条約の第10回締約国会議(COP10)が開催されるのをご存知でしょうか。

 この条約自体、あまり知られていないから、今のところ新聞なんかの扱いも地味ですが、いちおう国際条約の締約国会議ですからね。1997年に京都で開催された気候変動枠組条約の第3回締約国会議(COP10 通称“京都会議”)ぐらいに盛り上がってくれてもいいんですが、今のところ私の仕事にはほとんど影響ないままです。

 生物多様性とか、生態系関連の原稿執筆の仕事がくるんじゃないかなぁ~って期待したいたんだけど・・・。と、愚痴ばかりいってもしかたがありません。CNN.co.jpに生物多様性というか、生態系に関わる話題が紹介されていたので、ここでも触れておきましょう。

 詳しくは以下のサイトをご覧いただきたいんですが、ここで紹介しているのはオオカミの再導入ですよ。日本でも東京農工大学の丸山直樹名誉教授がオオカミの再導入を提唱されていますが、この記事では生物多様化と生態系の維持にオオカミを再導入しましょうって言っているんですが、なんかちょっとひっかかるんですよね。

 といっても、オオカミの再導入自体に引っかかっているんじゃなくて、この記事の内容にですよ。

 全体的な記事の論調は、「食物連鎖の頂点であるオオカミがいないため、エルクやシカといった草食動物が増加する一方だと指摘」として、オオカミの再導入を好意的に紹介しているんです。細かいことを言えば、エルクもシカの一種だから、「エルクやシカといった・・・」という表現もおかしいんだけど、これはさておき、最も気になったのが、その後に紹介されている、1960年代に行われたアラスカでの再導入の評価ですよ(※エルク、シカ問題についてですが、英語版のサイト(※)でも、“elks and deer”ってなっていますから、日本語版の誤訳ではないようです)。

 記事では、1960年にアラスカ州コロネーション島で、シカの個体数を管理するためにオオカミを導入したことを例に挙げ、オオカミの個体数が増加し管理できなくなったと、この取り組み自体を否定的に紹介しているんです。だけどね、本来、生態系を維持するためのオオカミの再導入だったら、管理なんてしなくていいんじゃないのかなぁ。

 コロネーション島での再導入計画自体、あまり詳しくは知らないんだけど、島という限りは、他の地域から閉鎖された環境だってことなんでしょう。そこでシカが増加しすぎているっていうので、オオカミが導入すれば、最初こそ豊富なエサ(シカ)資源を背景にオオカミは増えていくわけですよね。でも、オオカミが増えて、捕食圧が高まれば、シカの個体数が減り、さらにはオオカミもエサ不足に陥っても、島という閉鎖環境であるために他の地域には行けないのだから、オオカミの個体数も減少しますよね。つまり、ほっておけばシカ、オオカミともに適正な数に落ち着くはずなんですよ(シカが増えて、オオカミが増えて、シカが減って、オオカミが減る・・・という経年変化は続くんでしょうが・・・)。

 だから、管理なんて必要はないはずなんだけど、どうもこの記事の前提は人間の管理が前提になっているんですよ。もちろん、再導入したオオカミが家畜を襲った場合の補償や、それをさせないための事前の対策(再導入地域と牧場を隔てる柵の設置など)は必要かもしれないけれど、再導入したオオカミが増えたら間引きしましょうっていう発想はいらないんじゃあいかなって・・・。

 まぁ、記事ではアメリカ国立公園局(National Park Serviceのことでしょうね)の職員が、バイオサイエンス誌に発表した論文を元にしているので、CNNの誤報というより、元々、この論文自体が個体数管理を徹底するという論調だったのかもしれないけれど、なんかひっかかっちゃうんですよねぇ。

 ちなみに閉鎖環境における捕食・被捕食の関係の研究では、アメリカのロイヤル島国立公園の研究事例が有名です。この件についてご興味の方は、以下の(※※)をぜひご覧ください。

http://www.cnn.co.jp/science/CNN201002040023.html

http://www.cnn.com/2010/WORLD/americas/02/02/wolves.ecosystem.control.climate/index.html (※)

http://www.wolfmoose.mtu.edu/ (※※)

 ではでは・・・

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