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2010年3月11日 (木)

iPS細胞から蠕動運動が可能な立体構造をもった腸が作られました

 以前にもこのブログで書いたと思いますが、病気や怪我によって機能を損なわれた臓器をよみがえらせる再生医療を実現しようとすると、患者の体外で一定の大きさの組織を培養できなければならないと考えています。

 もちろん、赤血球、白血球など単離した状態で働く細胞なら組織を作るひつようないでしょうし、未分化の細胞を播種した担体に患者に埋め込み、体内で組織を形成するっていうアプローチでの技術革新もありえるのかもしれませんが、臓器の機能が徐々に回復していくのを待つ時間的な余裕がない患者にとっては、臓器の機能を十分に発揮できるほどの大きさをもった臓器を体外で培養し、これを移植するという方法が求められるのでしょう。

 ならば、未分化の細胞から成熟した体細胞へ分化誘導させるだけでなく、立体構造をもった臓器を形成する技術も必要なわけですが、以下の毎日新聞の記事をはじめ、複数の報道機関が、奈良県立医科大学の中島祥介教授の研究グループが、マウスを用いてiPS細胞から腸を作り出すことに成功したと報じています。

 詳しくは以下の記事をご覧いただきたいのですが、大まかな内容を紹介しておきますと、これまでにも平面のシート状の組織は作られていたのですが、今回の成果では、管状の組織を作り出すことに世界で初めて成功したというんですよ。

 大きさは直径約2mm、長さ約5mmと小さなものですが、腸特有の蠕動運動もできるようになっていて、内容物を押し出す動きも観察できたというので、この点については腸の機能を持っていると言えるようですね。

 ただ、現在、書店に並んでいるMedical Bio誌(オーム社発行)にも書かせていただきましたが、腸管組織には数多くの免疫細胞が存在するなど、実に複雑な構造を持っています。その点で、今回、発表された腸が、iPS細胞からどのような細胞に分化させて、立体的な組織を作り出したのか気になるところです。

 腸管を形成する細胞の機能についてはあまり詳しくはないので、推測に頼らないといけないのですが、蠕動運動を再現するだけなら、筋層の細胞だけでも大丈夫なのかなぁ~って考えたりもしています。ならば、患者の体内に移植できるだけの腸を作ろうと思えば、筋層だけでなく、粘膜層や漿膜も形成できないといけないわけですから、腸の完全培養まではまだまだ多くの研究を積み重ねていかないといけないと言ったところでしょうか(う~ん、毎日新聞の記事だけでは情報が足らないなぁ)。

 ちなみに中島教授のお名前で、Pubmedを検索したところ、Biochemical and biophysical research communications20101月号に「Generation of functional gut-like organ from mouse induced pluripotent stem cells」という論文が掲載されているようです(※)。ご興味のある方はご参照ください。

 それから、Pubmedで読める、この論文のアブストラクトによると、今回、新たに作られた腸は“iGut”と名付けられたようです。先日、スタンフォードの研究グループが、マウスの尾の細胞から、iPS細胞を経ずに神経細胞を作った際、作られた細胞を、“iN細胞”と名付けていましたが、再生医療の研究で新たに作られた細胞、組織は「i●●」って名付けられるのが慣例になっているんでしょうか。

http://mainichi.jp/select/science/news/20100310k0000e040041000c.html

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19895786?itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_RVDocSum&ordinalpos=5 (※)

 ではでは・・・。

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