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カテゴリー「脳科学」の記事

2010年2月12日 (金)

脳科学で本当に集中力は高められるのか?

 112日に、このブログで、日本神経科学会が発表した『「ヒト脳機能の非侵襲的研究」の倫理問題に関する指針』を紹介し、脳科学とはいえないような事柄を、メディアがさも脳科学的に正しいとして紹介していることに問題意識をもっていることを示していました。

 このこと自体、肯定的に評価していますが、一方で、脳科学者自身の自助努力がない限り、メディアだけに責任転嫁されてもしかたがないと考えていたわけですが、この指針が出て、1カ月たった今日、Yahooニュースのトップ項目に気になるニュースが挙げられていたので、紹介しておきましょう。

 その記事というのは、ビジネス雑誌として知られる「プレジデント」の記事を引用、転載したもので、『勝負脳の鍛え方』などの著書で知られる林成之・日本大学総合科学研究科教授への取材をもとに構成した、タイトルは、そのものズバリ、『脳科学理論が解説。「集中力」が増す3つの仕かけ』という記事です。

 けっこう長い記事で、その内容は引用しないので、詳しくは、以下のサイトをご覧いただくとして、気になった表現を紹介しておくと、まず、記事の冒頭、競泳平泳ぎの金メダリストの北島康介選手がゴール直前で減速してしまうことに対して、「脳の機能は「ゴール間近だ」と思った瞬間に低下し、それに伴って運動機能も低下するのだ。脳の自己報酬神経群という部位の仕業である」と説明しているんですが、う~ん、どうなんでしょうか・・・。

 まぁ、過去に行われた何らかの脳科学の研究事例から、こうしたことも言えるのかもしれないし、実際、北島選手には当てはまったのかもしれないけれど、完全に定説として「脳の機能は「ゴール間近だ」と思った瞬間に低下」すると論じられているのには、ひっかかってしまうんですよ。

 現在の脳科学では、fMRIPETなどの脳の働きを画像化する技術を活用して、一定の条件下で脳がどのような働きを行っているかを調べるわけでしょう。だったら、当然のことながら、実際に競泳のレースに出ている選手の脳の活動を調べられているわけじゃないですよね。

 fMRIPETで脳の働きを調べる際、被験者は検査装置の中に横たわっているわけだから、「ゴール間近」という状況を設定することすら難しいはず。もちろん、横たわった状態でもできる何らかの作業、例えば、「できだけ早く100問の単純計算をする」なんてことをさせてみて、100問の計算を終える「ゴール間近」を作り出すことはできるだろうけど、この記事で紹介されているように、脳の働きって定型的に起こるものだと言えるものなのか・・・。

 せめて、過去にどういう研究が行われていて、その研究の結果から照らせば、ゴール直前で減速してしまった北島選手の脳の働きは、これこれこういうふうに解釈できますよ・・・っていう論調であれば気にならなかったのかもしれないけれど、そうした前提がないまま、断定的に言われると疑問が残ってしまうんです。

 まぁ、取材時に、林教授がそういう説明をしていたのかもしれませんし、ビジネス雑誌故に科学的な根拠はすべて割愛されたとも考えられますが、少なくともこの記事の断定的な論調って、冒頭で紹介した指針の精神には反するんじゃないのかなぁ。

 指針では、「一般社会に不正確あるいは拡大解釈的な情報が広」がることを問題視していたのですが、今回の記事などは、まさに「不正確あるいは拡大解釈的な情報」を拡大させる一助になっているとも思えます。

 ならば、脳科学者自身が、こうした記事に対してももっと積極的に批判していかないといけないんじゃないでしょうか。例えば、「●●先生が取材を受けている、あの記事は、科学的におかしいんじゃないか・・・」などという感じで、脳科学者が批判しあわないと、指針が指摘した問題は解決しないと思うのですが・・・。指針を発表した日本神経科学会自身は、どう考えているのか、聞いてみたいですね。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20100212-00000001-president-bus_all

 ではでは・・・。

2010年1月12日 (火)

日本神経科学学会が非侵襲的な脳機能研究の指針を改訂

 fMRIPETなど、被験者にほとんど負担を与えることのなく脳の活動を調べることができる技術が開発されたことで、近年、脳研究は進展しているわけですが、こうした非侵襲的な脳機能研究のあり方について、日本神経科学学会が指針を改訂したようです。

 詳しくは、改訂された指針を公表した、日本神経科学学会のウェブサイト(以下のURLをご参照ください)をご覧いただきたいのですが、一般の私たちが注目すべきなのは、以下の2点に集約されるのかって思います。

 まず、「非侵襲的脳機能研究の結果が、特定の人々の差別や排斥に使われ人権侵害を生じることがないように注意すべきである」としている点なのですが、これは遺伝子診断の是非が論じられた時にも俎上に上った問題と同様の問題を想定しての指針なんでしょうね。

 遺伝子診断が実用化される時点で危惧された問題は、個人の遺伝子を調べることで、例えば、生命保険の加入に不都合が生じるような結果が得られても、保険に加入できなくなるようなことはないようにしようということだったわけで、究極の個人データとも言える、遺伝子診断の検査結果の扱いには慎重になるようにと指摘されていたわけです。

 脳の活動にしても、万人に共通のものを調べている限りは問題ないのでしょうが、特定の人に特徴的な脳の活動が明らかになってくると、非侵襲的な脳機能研究により、例えば、「あの人は犯罪者傾向が強い人だ」なんてことも言われかねないだけに、脳機能研究の結果(個人の脳機能傾向の情報)は遺伝情報に匹敵する個人情報として厳重に管理するとともに、それが人権侵害に結びつかないようにしないといけないとするのは非常に重要なことだと言えますね。

 それから、もう一点、注目すべきだと思うのが、「研究成果が正しく伝わり上記のような擬似脳科学あるいはいわゆる「神経神話」が生じないよう、成果を社会がどのように受け取るのかを考慮し、メディアから最終的にどのような形で社会に出ていくのかを確認のうえ研究成果を発表することが必要である」としていることです。

 この引用だけでは、ちょっとわかりにいと思いますが、その前段で「心を操作されるのではないか心を読み取られるのではないかといった、科学的には根拠のない危惧を社会に引き起こすことのないよう特段の配慮が求められる」としており、脳研究に対する社会的な関心の高さから、不用意な形で研究成果が公表されると、曲解されてしまう可能性が高いので注意を促しているわけです。

 この点については、研究者に取材し、科学記事を書いている者としては、耳が痛いところなんですが、これってなかなか難しい問題提起だと思いますよ。最初に紹介した、プライバシーや人権の侵害については、研究過程で得られた個人情報の管理を徹底することで、概ね問題を回避できると思いますが、一般の受け取り方をコントロールするのって決して簡単な話じゃないですからねぇ。

 新聞の科学欄や科学雑誌は、けっこう誠実に記事を作成していると思うけれど、それを受けて制作された雑誌記事、テレビ番組となると、けっこう荒っぽい記事構成、番組構成になっていることが多いわけですよ。研究者がプレスリリースなどで、正確な情報を提供しようとしても、引用されていくうちに大げさになったり、曲解されたりっていうのは避けがたいのかもしれません。

 それに、「メディアから最終的にどのような形で社会に出ていくのかを確認のうえ」との一文を読む限り、「メディアがいい加減なことを書くから注意してくださいね」と言っているように受け止められますが(これって被害妄想ですかね?)、研究者自ら積極的に曲解されかねない、けっこう危なっかしい発言をしている人もいるようにいるんじゃないかなぁ。だからこそ、意図的に曲解されるような発言(得てして、それはメディアにとっては“おいしい”ネタであるわけです)をする研究者に対する牽制としても、こういう指針が挙げられているのかもしれないですね。

 だったら、脳科学の研究者コミュニティの中で、個々の研究者の発現をしっかり検証してもらいたいと思うんですが、皆さん、どう思われます?

http://www.jnss.org/japanese/info/secretariat/rinri/

 ではでは・・・。

2009年11月24日 (火)

ぐっすり眠っていても記憶を強化できる?

 いきなりですが、中学生の時、同級生が睡眠学習をやっていたんです。けっこう成績のいい同級生だったんで、仲間うちでは「本当に効果はあるんじゃないか?」っていう話にまでなったんですが、睡眠学習って、最近は見なくなりましたねぇ。

 というわけで、睡眠学習のことを若い人が知らないといけないので、私もそんなに詳しいわけじゃないんですが、睡眠学習について簡単に紹介いておきますと、オーディオテープに録音された英単語や歴史の年号などを睡眠時に聞くと、眠っている間に記憶できるというもので、以前は専用の装置(睡眠学習器)が販売されていたんですよ(通信販売だったかな?)。

 現在、睡眠学習器なんてものを見なくなったってことは、期待されるほど効果はなかったということなんでしょうけど、眠っている人の脳に刺激を与えることで、特定の記憶を強化できるっていう研究成果が発表されましたので紹介しておきましょう。

 この研究成果を発表したのはノースウェスタン大学、ベックマン最先端科学技術研究所(Beckman Institute for Advanced Science and Technology)の研究グループでして、19歳から24歳の男女12人に対して行った実験で、睡眠学習の可能性を見出したっていうんです。

 じゃ、どんな実験を行ったのかっていうと、まず、被験者が見ているコンピュータ・ディスプレイ上のいろんな場所にネコやヘリコプターなどの画像50種類を表示。それと同時に、それぞれに特徴的な音も聞かせて、覚えてもらいました。

 このテストを終えた後、被験者全員が1時間ほどの昼寝をし、眠りが深まったところで、先ほど見せた50種類の画像のうち25種類の画像の音を聞かせたところ、音を聞かせなかった画像25個よりも、音を聞かせた画像25個のほうが、画像を示した場所を覚えていたというんです。

 さらに、研究グループは、別の被験者12人に同様の方法で50種類の画像を記憶してもらい、今度は昼寝ではなく、別の作業をしてもらいながら、同様に25種類の画像の音を聞かせるという実験も実施したのですが、こちらでは音を聞かせた画像と音を聞かせなかった画像での差はなかったそうです。

 この研究成果から、睡眠時であっても記憶に関連した刺激を与えることで、覚醒時の記憶を強化できることが示唆されたわけだけど、この成果を受けて、実際に睡眠学習をするには、けっこう装置を工夫しないといけないんじゃないかなぁ。

 実験では、被験者が深い眠り(ノンレム睡眠)になった時を見計らって音を聞かせているわけだけど、それを自動で実施するような機能を付加した睡眠学習器となるとけっこう高額になってしまうだろうし・・・。

 まぁ、こうした研究は、脳の仕組みの解明のためにだけ実施してもらって、「睡眠学習に利用しよう」なんて色気を出さないほうがいいかもいれないですね。

http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/326/5956/1079

http://mainichi.jp/select/world/news/20091120dde007040016000c.html

 ではでは・・・。

2009年6月 3日 (水)

脳手術後に芸術的才能が開花した!?

 脳科学関連の取材をやっていると、基本的には同じ仕組み、構造である脳を持っているにもかかわらず、人それぞれで、脳が生み出すことがこうも違うのかって驚かされることがある。だから、才能ってどのように生まれてくるのかって興味があるのだが、この興味に関連した話題を時事通信が報じていたので紹介してみたい。

 一時期、Yahooのトップニュースにも扱われていたので、ご存知の方もいらっしゃるかと思うが、簡単に紹介しておくと、イギリスに住む男性が、6年前に脳の動脈瘤の発作位により倒れ、脳手術を受けた後、奇跡の回復を果たすと、それまでなかった天才的な画才を獲得していたというのだ。

 絵を描くきっかけは、集中治療室に入っていた2ヶ月間の間に、絵を描くことを勧められたことだったそうだが、それにしても2ヶ月間で絵を描く才能が急速に高まったとは考えられないわけで、脳手術がきっかけで脳の回路に変化が生じて、それまでなかった画才を発揮させたということなのだろう。脳手術ではなく、その前に起こった脳動脈瘤による発作が原因かもしれないが・・・。

 記事では、脳損傷者団体の関係者の「脳の損傷の後遺症の大半が機能性マヒ。まれに新たな技術や細胞が発見されることがある(後略)」とのコメントを紹介しているように、こうした例は、このイギリスの男性だけというわけではない。何らかの原因で脳に損傷を負った後、芸術など才能を開花させるという例はけっこう報告されている。

 脳機能によって芸術的な才能を開花させた例としてはサヴァン症候群を思い出す。日本の民放が作る脳科学番組はサバン症候群が好きなので(見た目にインパクトありますからね)、しばしば紹介されているため、ご存知の方もいらっしゃるかと思うが、サヴァン症候群は、自閉症の患者の一部に、記憶や芸術的な分野で、類稀な能力を発揮する症状で、多くは先天的なものだが、今回のイギリスの男性のように後天的な病気、事故をきっかけに、それまでなかった能力を発揮することがあるという。今回の例について、記事中でサヴァン症候群という言葉はなく、その関連を示唆する表現もないが、私はついサヴァン症候群と関連付けて考えてしまった。

 そこで、触れておきたい科学雑誌の記事があるので紹介しておこう。2002年9月号の日経サイエンスに掲載された「右脳の天才 サヴァン症候群の謎」と題された記事で、ここでも先天的なサヴァン症候群に加え、老人性痴呆の一種の前頭側頭型痴呆(FTD)が原因となって絵の才能を開花させた、後天的サヴァン症候群が紹介されている。

 しかも、芸術的才能を発揮させたFTD患者7人を調べたところ、左脳に損傷があったというのだ。

 ならば、左脳の損傷により、右脳の機能が亢進し、芸術的才能を開花させたなんてことも考えられると思うのだが、どうだろうか?

 実際、脳機能を研究しているオーストラリアの科学者、アラン・スナイダーは経頭蓋磁気刺激(TMS)により、一時的に左脳の機能を抑えて、右脳の働き亢進し、芸術的才能を発揮させることができるという“Thinkig Cap”というデバイスを開発したと報じられたことがあったが、こちらはどうなったんだろうか。一部に批判はあるようだけど・・・。

 いずれにしても、脳の損傷によって、芸術分野での才能を発揮するようになった人がいることは事実なので、今回の記事を含めて、詳しい研究が進められることを期待したい。

http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2009060200077

http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0209/savan.html

※日経サイエンス2002年9月号は、すでに入手は難しいと思われますが、該当記事はダウンロード購入できるようなので、ご興味のある方はご覧ください。

http://wiredvision.jp/archives/200204/2002042301.html

 ではでは・・・。

2009年4月28日 (火)

脳で考えたことを直接Twitterに書き込める?

 脳波などの脳が発する様々な信号を検知することによって、コンピュータなどの外部装置を操作するBMI(=Brain Machine Interface、※Brain Computer Interfaceということもある)の研究開発が進んでいる。

 このブログでも、3月31日にホンダなどが開発した考えるだけで、ロボットを操作できるBMIを紹介してきたが、CNNなどが興味深いBMIを報じているので紹介したい。

 開発したのはウィスコンシン大学で生物医工学を専攻するアダム・ウィルソンさんで、脳の中で考えたことを、一言メッセージを書き込めるブログサービスの「Twitter」に直接書き込めるというのだ。

 赤いヘッドギアを装着して脳波を検出することにより、神経活動をセンシングするようだ(ヘッドギアの写真は(※)のサイトにあります)。脳波の検出程度で、考えていることを直接、書き込めるなんてことがあるのかと不思議に思ったが、実際はもっと単純なことしかできないようだ。

 日本語のCNNのサイトでは、「脳から直接Twitterに投稿可能・・・」と紹介しているので、例えば、「カレーを食べたい」とか、「眠いなぁ」とか、「暇だなぁ」って考えたら、そのままか聞きおめるんだと思ったが、実際は、アルファベットや数字といった特定の文字をイメージして、一つずつ書き込んでいくようだ。

 まぁ、これでも脳が考えた“こと”を直接、Twitterに書き込んでいることになるのかもしれないが、正確に言うと「脳が選んだ文字を書き込める」ってことといったほうがいいだろう。実際、(※)のサイトで紹介されている動画を見ると「Spelling with My Braine」となっている。

 もちろん、文字を選べるだけでもなかなかすごいんだけど、同様の技術ならけっこう以前から開発されていたから、CNNのニュースタイトルに飛ぶついてしまって、少し損した気分になってしまった。皆さんはいかがだろうか。

http://www.cnn.co.jp/science/CNN200904240021.html

http://www.cnn.com/2009/HEALTH/04/22/twitter.locked.in/index.html

http://newsbizarre.com/2009/04/adam-wilson-twitter.html(※)

 ではでは・・・。

2009年4月 1日 (水)

アイシュタインの脳の標本を新潟大学が保管

 相対性理論を生み出したことで知られる、稀代の天才物理学者、アルバート・アインシュタインの脳の標本が、新潟大学で保存されていると、3月30日付の新潟日報が報じている(以下の記事をご参照ください)。

 http://www.niigata-nippo.co.jp/pref/index.asp?cateNo=1&newsNo=158098

 新潟日報の記事によると、この標本はアメリカのアインシュタイン医科大学(Albert Einstein College of Medicine)の故ハーリー・ジマーマン博士から、新潟大学の生田房弘名誉教授が譲り受けたものとのこと。

 脳の標本といっても、切片化されてスライドガラスに固定されているものようで、顕微鏡で観察するとニューロンやグリア細胞が詳しく関節できるという。「固められた・・・」という表現があるので、パラフィンに包埋するなどして個体しているんだろう(以下の写真は新潟日報のウェブサイトより引用)。

 天才物理学者のアインシュタインの脳切片の標本ということで、記事の冒頭には「天才の秘密が詰まっている?」という書き出しで始まっているが、この標本から天才ならではの脳機能の秘密が明らかになるものだろうか・・・。

 顕微鏡で観察している限り、形態的な特徴は捉えられるかもしれないが、分子生物学的な考察はできないだろうから、可能ならば、そこまで踏み込んで研究してもらいたいところだ。天才に特異的な分子が見つかったりしたら、面白いと思うのだが・・・。