2016年7月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            
無料ブログはココログ

カテゴリー「材料科学」の記事

2009年11月26日 (木)

「超伝導転移温度を40倍上昇」ってどういうこと?

 ここのところ超電導研究が活発になってきていますね。昨年の鉄系超電導の発見などを受けての活気なんでしょうが、新たに東北大学金属材料研究所の岩佐義弘義弘教授の研究グループが、電気制御で超伝導を起こすという手法での超伝導転移温度(Tc)を高めることに成功したと複数のメディアが紹介しています。

 電気制御で超伝導を起こすという手法自体は、昨年、岩佐教授と、東北大学原子分子材料科学高等研究機構の川崎雅司教授らのグループが開発したもので、その時は、チタン酸ストロンチウムの単結晶を、ポリエチレンオキシドというプラスチックに過塩素酸カリウムを溶かした電解質に接触させるという構造の回路だったのですが、これに電圧をかけ、-272.85℃(0.4K)まで下げると急激に電気抵抗が減少し、ゼロになる超電導状態になったというんですよ(この成果については、以下の※をご参照ください)。

 この時のTcは0.4Kなので、そのままでは実用化が期待できるものではありませんから、その後の研究はTcを上げることが重要になってきます。

 そこで、今回、チタン酸ストロンチウムの代わりに塩化窒素ジルコニウムを使い、電解質も変更することで、Tcを大幅に向上することができたというんですが、この研究成果に関する記事で最初に読んだ日刊工業新聞ものだと、実際、何度まで上がったのかがまったくわからない。

 見出しで「超伝導転移温度を40倍に上昇させることに成功」と紹介されているんだけど、何度だったTcを40倍上げることに成功したのかが書かれていないから、どの程度の向上なのかがまったくわかないんですよ。

 で、他の報道をチェックしてみたら、毎日新聞では「0・4ケルビンから15ケルビンに上昇させることに成功」と紹介してるし、河北新報も何度から何度に情報したのかをしっかり触れています。

 ご存じの方も多いかと思いますが、実用化を目指して超伝導を研究開発する場合、このTcを上げることが非常に重要で、銅酸化物系の超電導物質は、安価な液体窒素で冷やすことができる77KよりもTcを上げられるようになったことで、その実用化が期待されるまでになっているわけですよね。

 当然、今回、紹介されている電圧をかけることで超伝導状態に導く手法についても、どの程度、研究が進捗したのかを把握するためには、Tcがどこまで向上したのかは重要な指標の一つになるわけですよ。なのに、元のTcも、新たに達成されたTcも紹介せず、「超伝導転移温度を40倍に上昇させることに成功」と紹介するだけなのはまずいでしょう。技術系の情報に強い、日刊工業新聞なんですから、ここはちゃんと報じてもらいたかったですねぇ。

http://www.nikkan.co.jp/news/nkx0720091123eaac.html

http://mainichi.jp/area/miyagi/news/20091123ddlk04040030000c.html

http://www.kahoku.co.jp/news/2009/11/20091123t13016.htm

http://www.jst.go.jp/pr/announce/20081013/ (※)

 ではでは・・・。

2009年8月31日 (月)

NEDOが食料と競合しないバイオ燃料の開発研究への支援を発表

 ここ最近、原油価格が落ち着いているせいか、石油に代わる代替燃料への社会的関心が薄れているようだけど、将来的には石油の枯渇は確実にやってくるわけで、再生可能な石油代替燃料の開発は進めとかなくちゃいかないわけですよね。ただし、現在のバイオエタノールは、食料と競合しちゃうわけでいろいろと問題がある。そこで、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、食料と競合しないバイオ燃料を低コストで、効率よく製造できる技術の実用化研究を支援することを発表しました。

 詳しくは、以下のリリースをご覧いただきたいですが、北川鉄工所、三菱化学、住友林業、日東電工、三菱重工業の5社を選定し、今年度から3年間かけて6億円を投じるというんですよ。

 じゃ、どんな研究開発テーマになっているかというと、①稲わらなどの草本系バイオマス資源の輸送、貯蔵コストの低減を目指した乾燥技術、ペレット化装置の開発など(北川鉄工所、三菱化学、住友林業)、②膜技術を利用したバイオエタノール製造に関する要素技術の開発(日東電工)、③バイオ燃料合成のためのバイオマスガスの低コスト精製技術の開発(三菱重工業)となっています。以下のサイトから、さらに詳しい委託先一覧もダウンロードできますので、ご興味のある方は、ぜひチェックしてやってください。

 ただ、この研究開発テーマを見て、どれも重要なテーマだと感じつつも、なんか本質をずらしていないかなぁって思えるんですよ。

 結局、食料と競合しないバイオマス資源というと、木質系バイオマス、草本系バイオマスってことになるわけですよね。例えば、トウモロコシだって、実の部分ではなく、茎、葉、根(その筋では“コーン・ストーバ”と呼ぶそうですね)を原料に燃料にできればいいわけだし、材木を原料にできれば、間伐材の有効活用はもちろんのこと、建築廃材も燃料にできることになり、未利用資源の有効活用になる。

 ただし、木質系バイオマス、草本系バイオマスの主成分はセルロース、ヘミセルロース、リグニンでしょう。当然、セルロース、ヘミセルロース、リグニンをいかにして燃料として利用できるエタノールにするのかが、食料と競合しないバイオ燃料開発の本丸なんだと思うんだけど、今回、支援が決まった3テーマは、ちょっと違いますよね。

 貯蔵方法や集材技術の開発は重要だと思うけれど、セルロース、ヘミセルロース、リグニンを燃料化できないことには、あんまり意味はないんじゃないでしょうか。そのままもやしねサーマル・リサイクルするっていうのも“あり”かもしれないけれど、それは、食料と競合するバイオ燃料に代わる存在を目指すものじゃなくなっちゃいますよね。

 それに、膜技術を利用したバイオエタノール製造に関する要素技術なんて、別に食料と競合する、現在のバイオエタノールにも使える話で、今回の助成枠の理念に必ずしも合致するものじゃないように思うんだけど・・・。

 とはいえ、セルロース、ヘミセルロースの燃料化は難しいのはわかっていますよ。研究室レベルでは可能であっても、採算性を考えると、なかなか実用ラインには乗ってこないわけだから、数年以内の実用化を目指すNEDOの助成枠では、そのあたりの研究を支援することは難しかったのかなぁ。ましてやリグニンなんて使い物にはならないって判断が働いているのかもしれませんね。

 というわけで、個人的には「食料と競合しない」と銘打つのであれば、リグニンはともかく、セルロース、ヘミセルロースを原料とした、低コスト、低エネルギーで採算性のあるバイオエタノールの製造法の開発に取り組んでもらいたいと思ってしまいました。

http://app3.infoc.nedo.go.jp/informations/koubo/press/FF/nedopressplace.2009-06-08.5858382467/nedopress.2009-08-27.0692921450/

 ではでは・・・。